April 23, 2016

古い友達への手紙  -原子力問題の見解の相違-

 古い友達から、久しぶりに手紙をもらった。彼はメールを使わない。なので、主に彼からは手紙、当方は電話という、ちょっと変わった情報伝達方式の友達です。

 彼は生物学者でかつハンターでもあるので、イノシシ肉や鹿肉をいただくこともよくある。最近の山の動植物の状態や毒キノコの判定法を教わったりもする。

 今回は電話では情報交換が不十分だった。メールと添付資料で片づけたかったが、相手はパソコンの画面は見たくないという我が儘者。やむを得ず手紙と資料とを追加送付した。




*************************************

H 様

 いつもラブレター、ありがとうございます。

 この間のレターは原子力発電所の問題でした。特に「政府がメルトダウンを隠している」という世の中の意見とあなたが同意見で大層ご不満だということが分かりましたので、これを書いてます。

 僕が手元に持っている資料にもとずき、事実を書きます。ご自分でご判断願います。

1 2011年3月12日20;50 緊急災害対策本部発表
11日14:47(事実)  原子炉スクラム ←{緊急停止したということです}
20:30(事実)  RCIC停止 ←{原子炉への注水機能喪失、危機が予測さる}
21:50(水位計復活) 燃料上部より3mの水位
22:50(予測)  炉心露出 ←{空焚きのはじまり}
23:50(予測)  燃料被覆管破損 ←{メルトダウン初期}
24:50(予測)  燃料溶融 ←{英語ではメルトダウン}

2 この事実と予測に基づいて(原子炉水位が確認できない。原子炉水位低下により放射性物質が放出される恐れがある)政府は「発電所から半径3Km以内の住民に避難命令、3Km〜10Kmの住民に自宅待機の指示。
※{ }内は小生が追加しました。


 上記はだれでも閲覧できるように、当時、Web上においてありましたよ。僕は毎日対策本部から発表される情報をプリントアウトして、発電所で何が起こっており、何が問題なのか、科学的知見と専門家の意見をもとに自分の頭で考えるように努めていました。その時も今も、一番頼りがいのある方は大前研一氏でした。


※ 「メルトダウン」という表現はいたずらに市民の不安を煽るということで、この後は「炉心損傷」という表現が用いられるようになりました。(笑)
こういう言葉の言い替えは、困難な事実に直面すると不安にかられてパニックに陥る国民を慮ってよく行われていますね。ナンセンスもいいとこですけど…。

(例)
1 「ガン、癌」 → 腫瘍(悪性もあれば良性もある。最近、癌も治癒する病気だと思われてきたので、ガンも使われるようになった)

2 「放射線医用画像診断装置」 → 画像診断装置(患者は磁気共鳴による診断か、ガンマ線放射線診断かわからん)



The most courageous act is still to think for yourself. Aloud.
-Coco Chanel(1883-1971)-
(意訳)今もなお最も勇気のいる行動とは、自分の頭で考え続けることであう。そしてそれを声に出すことだ。



 同封の資料-1&2は、ネットにアップしている僕のBlog「もの言う翔年」(閲覧者累計、現在397,909人)のごく一部です。何かの参考になれば幸いです。

 釈迦に説法になっていたらゴメンナサイ。

                             2016/04/23
     署名

****************************************

 来週あたり、また長い手紙がくるかも知れません。(苦笑)




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August 22, 2013

原発再稼動の条件  -大前研一VS東電廣瀬社長-

 今、わが国のエネルギー政策の最も重要なターニングポイントとなる「原子力発電所の再稼動」の判断が下されようとしています。
 新聞、TVを初めとするメディアに、政治家や評論家や学者や技術者のみなさんが、さまざまな立場から意見を発表されていますが、翔年はどれもポイントがボケて不十分だと感じています。(特に科学的知見に基づいた冷静な判断材料が少ないのが不満です)

 下のYoutubeは大前研一氏と東京電力の廣瀬社長の対談です。1時間以上かかりますが、原子力発電所の再稼動に反対であれ、賛成であれ、心ある読者は是非ご覧いただきたいと思います。

 大前氏は問題解決策を提言できる数少ないアドヴァイザーの一人と思います。大前氏の「福島の惨事から学んだ貴重な課題をいかさないまま終わっていいのか」と言う問いかけは貴重だと信じます。謙虚に耳を傾ける広くて大きい心を持ちたいと思います。

 
大前研一氏と東電廣瀬社長の対談(1時間7分5秒)
※対談の途中から始まる場合は、画像の下にあるバーを左へまき戻せば最初からご覧いただけます。



 みなさんのご意見をお聞かせ下さい。待っています。


(参考資料)
〇 政府事故調の「中間報告」(2011/12/26)と「最終報告」(2012/7/23)
〇 国会事故調の「報告書」(日付の記載がどこにもない)
〇 大前研一氏を中心とするチームの「福島第一原子力発電所事故から何を学ぶか」(2011/10/28)と「原発再稼動 最後の条件」(最終報告書、2012/7/30)
〇 舟橋洋一著「カウントダウン・メルトダウン(上)(下)」

以下は、これまでに翔年が書いてきた原発関連エントリーのリストです。

2007年7月20日 『新潟中越沖地震と柏崎刈羽原発の安全性について−問題は耐震設計』
(翔年は原発の耐震設計について不安を書いています。が、すみません。これは古い記事なので、7月分が一つになっています。7月20日の記事をお読み下さい)

2011年11月6日 『福島第一原発で今一番知りたいこと、肝心なこと −事実と原因分析』

2012年7月29日 『福島第一原発事故調査から学ぶべきこと(その1) -三つの報告書-』

2012年8月24日 『原発依存度? -10年後には貢献度と言われているかも-』

2013年7月10日 『東電福島第一原発元所長吉田昌郎所長死去  -所長の証言を中心に-』





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July 10, 2013

東電福島第一原発元所長吉田昌郎所長死去  -所長の証言を中心に-

報道によると
 「東京電力福島第1原発事故の収束作業を現場で陣頭指揮した元所長で、東電執行役員の吉田昌郎(よしだ・まさお)氏が9日午前11時32分、食道がんのため都内の病院で死去」

された。大阪府出身で58歳だったという。

 人物評は「本店に盾突く困ったやつ」、「気骨ある」だったらしい。これは勲章でしょう。

 翔年は「国家の存亡を賭けた危機のとき、最後は軍隊がやるべき」と思っていますが、軍隊でもない民間企業の発電所長とその部下が、日本の半分を救うという大事を今回は成し遂げたのです。忘れないために、故吉田所長が発言した証言をここに記して、ご冥福をお祈り致します。

TV会議の故吉田所長
吉田昌朗所長

撤退について
(1)現場で原子炉を冷やしたり、そういう作業をしている人間は撤退できないと思っていたし、本店にも撤退ということは一言も言っていないし、私は思ってもいなかった。本店には一言も撤退と言っていないということは間違いない。
→ 翔年はこの言葉を信じます。信じるにたる事実はあります。後日編纂された事故調等数多くの資料にも記載がある。

撤退の意味するところ
(2)結局、我々が離れてしまって注水ができなくなってしまうということは、もっとひどく放射能漏れになる。そうすると5、6号機はプラントはなんとか安定しているが、人もいなくなると結局あそこもメルトダウンする。そのまま放っておくと、もっと放射能も出る。福島第2原発も一生懸命、プラントを安定化させたが、あそこにも人が近づけなくなるかもしれない。そうなると大惨事になる。そこまで考えれば、当然のことながら逃げられない。
→ 撤退がどんな大きな被害をもたらすか、所長は誰よりも分っていたと思います。

現場の長と部下
(3)大変な放射能、放射線がある中で、現場に何回も行ってくれた同僚たちがいるが、私が何をしたというよりも彼らが一生懸命やってくれて、私はただ見てただけの話だ。実際ああやって現場に行ってくれた同僚一人一人は、本当にありがたい。私自身、免震重要棟にずっと座っているのが仕事で、現場に行けていない。いろいろな指示の中でそこに飛び込んでいってくれた連中がたくさんいる。
 法華経の中に地面から菩薩がわいてくるというところがあるが、そんなイメージがすさまじい地獄のような状態で感じた。現場に行って、免震重要棟に上がってきてヘロヘロになって、寝ていない、食事も十分ではない、体力的に限界という中で、現場に行って上がって、また現場に行こうとしている連中がたくさんいた。
→ デンと動かない所長と指示に身を呈して行動する部下。人間的結びつきがあったからこそ、このような過酷な状況で大事がなし遂げられたのだと思います。


破滅を覚悟した人の言葉
(4)一番インパクトがあったのは1号機もそうだが、3号機の爆発というのがあった。これは今まで経験した中で、(あとから考えれば水素爆発だったが)その時点では何が起こったかわからないという状態なので、もう破滅的に何か起こってるんじゃないかと思った。一つは自分が死ぬということ、メンバーも含めて、免震重要棟の人間は死んでたっておかしくない状態だった。
 3号機なんかは特にそうだった。あれだけのがれきが飛んできて。私は、最初は行方不明者が何人ということを聞いた時に、確か数十人レベルでまだ安否が確認できていないというのが最初の状況だった。ああこれは10人ぐらい死んだかもしれないというふうに思った。それから自衛隊の方には本当に申し訳なかった。水を補給しにきてくれた自衛隊の部隊がけがをされて…。
→ これは死を覚悟した人間の証言だと思います。


 「原発に残ったメンバーの名前をホワイトボードに書くように指示したとのことだが、どのような思いだったか?」という報道陣の質問に答えて
(5)ほとんどその時のことを思い出せないが、たぶん、要するに最後まで残って戦ったのはこんな人間だぞということを残しておこうということだ。今から思えば。」
→ せめて墓標を残そうとした行動なのでしょうか。

もっとも求められていること
(6)事故当時も言っていたが、世界の知恵を集めて、第1原発をより安定化させることが一番求められている。いろいろなだれの責任うんぬんということもきちっとやるべきだが、やはり発電所を少しでも安定させる。それには人も必要だし、技術もいろいろな知恵が必要だ。そこに傾注するということが重要なことだと思う。そのうえで、地元の方々に通常の生活に戻っていただけるか考えることができる。いずれにしても現場を落ち着かせる、安定化させることが一番重要な責務だ。
→ 大局判断が常にキチンと頭の中にある。最も求められていることは今も変りません。元所長は必要なのは人と技術と知恵だと言っていますが、実は金(資金)がいるのです。東電に金が枯渇しているのをどうするかという議論を最近あまり見かけません。国が正面に出るべきでしょう。未来に禍根を残してはなりません。


その時、もう一人の長(日本国総理大臣菅直人)はどんな言動をしていたか?
舟橋洋一著「カウントダウン・メルトダウン」にこんな記述があります。(ノンフィクションです)
菅(総理大臣)は寺坂原子力安全保安院長、安井副院長、斑目原子力安全委員長、久木田委員長代理を一人ずつ指差し、
「どうなんだ?」
「撤退はありえないだろう」
と確認して回った。

→ 「撤退する。しない。」の最終的な政治判断は総理=原子力災害対策本部長が決めることである。なのに菅総理は技術判断を聞かなければならない助言者達(寺坂、安井、斑目、久木田)に政治判断を聞いて回っている。答えを強要している。カン違いは困りますな。(笑)
 管総理と斑目委員長の間で、また管総理と東京電力の清水社長の間でも「言った、言わない論争」が未だにある。非常時、しかも事故の最終的な判断をする責任あるトップ達の器量不足だと考えます。現場指揮官はさぞやりにくかったことでしょう。
 このような大事に際しては、どんな政治的決定も科学的基準に基づくことが必要と翔年は信じます。そして重要な決断には、しっかりとした判断の意志決定過程を残しておいて欲しいと思います。民主党の菅政権はこういう重要なポイントが全てないがしろにされているのが残念でなりません。


その頃、アメリカは日本をどうみていたか?
スタインバーグ国務副長官は日本政府の対応を
「ぞっとする」と感じていた。「準備も何もまったくできていないし、危機管理もなっていない。」と。
「日本という国は、同盟国に値する国なのかどうなのか、それが問われていると自覚して欲しい。」と藤崎駐米大使に迫ったという。
→ こんな政府では、簡単に外国の侵略を許してしまうだろうと思えるので、それこそ「ぞっと」します。もしそんな事態になっていれば同盟国の米国はどうしたでしょうか。外国から国を守るとはどういうことか、根本的な国家観について国民的議論が必要だと思います。




(参考)
1 主に、ネット上発表された記録及びノンフィクションの「カウントダウン・メルトダウン(上)(下)」を参考にしました。
2 自衛隊法施行規則第39条 一般の服務宣言
「事に臨んでは危険を顧みず、身をもって責務の完遂に務め、もって国民の負託にこたえることを誓います」



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April 26, 2013

確率を使わない損失余命について -放射線リスクを寿命で表す

 今朝の新聞広告にひときわ翔年の目をひいた広告がありました。雑誌「Will 6月特大号」の広告です。
「愚かなり除染1ミリシーベルト」
福島在住の芥川賞作家、禅僧玄侑宗久
『痛憤の手記』
被災地の「危険」を売りにするメディアと科学を無視した厚労省の無責任な基準値。素人が専門家を糾弾し、マスコミもそれに追従する異常さ。被災地復興を妨げる「除染」問題に、地元・福島から怒りを込めて疑問を呈する。


 本日今現在、翔年はこの雑誌の記事は読んでいません。(街にでかけた際、雑誌を手にとって立ち読みした上で、気に入れば買うかもしれませんが)読んでいませんが、この広告で玄侑さんが言いたいことは凡そ分かります。翔年は同趣旨のことを2012/4/20、「根本から考える(7) -放射能とリスク」 というエントリーで控えめに(笑)書いているからです。その3ヶ月前の2012/1/14にも「瓦礫処理を邪魔しているのは誰か? -瓦礫処理法を早く改正せよ」もアップしています。(興味のある方は二つとも読んで下されば嬉しい)

 また、同じ主張をくり返しても能がないので、このエントリーではちょっと別の角度から考えた事を書きます。「低線量被爆による人体への影響はよく分かっていない」ことは事実ですけれど、議論の前提として人間はごく普通に生活していても、身体のなかに放射性物質を抱えている事実は認めましょう。体重60kgの人間は7000ベクレルの放射能を持っています。人間自体が放射性物質と言ったら言いすぎ? (120ベクレル/kg程度ですけど…)

 健康への影響を考えたら、人体に取り込む放射能は少ないほうが良いでしょう。ですが、飲み物や食べ物に含まれるセシウムがどの程度危険かを判断するとき、「1kgあたり120ベクレルという値は、人体の放射性物質の濃度とほぼ同じである」というのは一つの判断基準になると考えます。
 翔年は昆布が好きです。干し昆布には1kgあたり2000ベクレルのカリウム40が含まれています。だとしたら、翔年は他の人より強い放射能を放って、周囲に迷惑をおかけしているやも知れません。
 
 与太はやめて、本題に入ります。このエントリーはそのような低線量の微妙な話です。岸田一隆著「ボクらのエネルギーってどうなるの!?」等を参考にしながら書いています。
エネルギーって
 人間は確率についての感性が生まれつき鈍いようにできているそうです。たとえば、大きな事故や悲惨な事件の様子を報道で知ったとしましょう。それは自分の身の回りで起きたことではないにも拘わらず、あたかもその出来事の当事者であるかのように、多くの人は感情移入してしまいます。その結果、身の回りでめったに起きない出来事であるのに、身の回りで起きる確率の高い出来事と同じように感じてしまう。冷静に確率で考えるには、理性的な科学的センスが必要という訳です。

 そこで確率を使わない「損失余命」で表す方法を考えた人がいます。「損失余命」とはそのリスクによって自分の余命が短くなってしまう日数のことを言います。
 最近の知見では、10ミリシーベルトの低線量被爆では癌によって死亡する確率が0.05%増えるといわれます。これではピンとこないので、これを平均余命にして年齢別に詳しく表すと下のようになります。



10ミリシーベルトの損失余命(日数)
年齢      男性     女性
00-04歳     16日     18日
10-14      14       16
20-24      5.7      6.4
30-34      4.8      5.4
40-44      1.7      2.1
50-54      1.3      1.6
60-64      0.46      0.57
70-74      0.28      0.37
80-84      0.027     0.036
(飯沼武、放射線医学総合研究所名誉研究員による)


 年齢によって損失余命が大きく違うのは、以前から言われていることですが、要因は二つあると思われます。
 一つは、年齢が若いということは、そもそも余命が長いため、放射線による影響で癌を発症する可能性が高まること。
 もう一つは、若い方が細胞分裂が活発なため、放射線による遺伝子の損傷で癌細胞が生まれる頻度が高まることでしょう。
 大まかな癌発症の確率は20代〜30代の成人のリスクが基準に取られています。この表では、幼児は成人の約3倍のリスクがあることがハッキリ示されています。


 放射線によるリスクは上のとおりですが、人間は当然その他のリスクにも晒されているわけですから、その他のリスクの平均余命とも比較考量しておきましょう。

さまざまなリスクによる損失余命(日数)
貧困      3500日
独身(男性)  3000日
喫煙      2500日
自動車事故    207日
大気汚染     77日
室内ラドン    29日
火事・火傷    20日
飛行機事故    1日
(バーナード・コーエン教授の研究より)
 
 意外なことですが、平和な国家では「貧困」が最大のリスクのようですね。もっとびっくりさせられたのは、男が独身でいることが非常に大きなリスクとしてカウントされていることです。また、私達の身の回りに自然に存在する「ラドン」という元素の放射性同位体による被爆で1ヶ月弱の余命損失です。先に掲げた10ミリシーベルトの損失とは雲泥の差があります。実に520倍のリスクです。

(参考)WHOの資料より(世界平均、北米、EU、日本など地域ごとに数値が示されている)
日本人の日常的なリスクによる損失比較 
体重オーバー       1.92年(700日)
運動不足          1.78(650日)
たばこ            6.15(2250日)
大気汚染          0.54(200日)
発ガン物質         0.23(84日)


 安全とかリスクとか確率的な事象に対して、我々はいろんな指標を駆使しながら、恐いとか嫌だという感情ではなく、理性的な判断をしたいと思っています。
 左欄に掲げているウェード・アリソン著「放射能と理性」(なぜ100ミリシーベルトなのか)は放射能の影響を理性的に判断したいと願っている人には助けになると思います。


※1 シーベルト=シーベルト(sievert)は生体の被曝による生物学的影響の大きさ(線量当量)の単位。記号はSv。ある物質が放射線に照射されたとき、その物質の吸収線量を示す単位がグレイ(記号 Gy、定義 J/kg)。生体(人体)が受けた放射線の影響は、受けた放射線の種類と対象組織によって異なるため、吸収線量値(グレイ)に、放射線の種類ないし対象組織ごとに定められた修正係数を乗じて線量当量(シーベルト)を算出する。
Sv = 修正係数 × Gy

※2 ベクレル=ベクレル(becquerel、Bq)は放射能の量を表す単位である。1秒間に放射性核種が1個崩壊すると1 Bqである。
 

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February 09, 2013

核廃棄物の無毒化を短縮する -わが国の最先端重要技術-

 福島原子力発電所の残念な事故が発生して以来、民主党政権の誤った誘導と迷走があって、わが国のエネルギー政策が、大きくゆがめられてしまった。その結果が少しずつ国民の目に見える形で現れてきている。
 貿易収支の大赤字(国富の海外流出)、電気をはじめとするエネルギー価格の上昇、国内での企業立地の困難性増大、核廃棄物処理技術の停滞、中国からの汚染物質の飛来(大量の化石燃料の使用が原因)など、原子力エネルギーの利用をやめればこれらのマイナス現象が必然的に増大するのは当然のことだと思う。


岸田一隆著 「ボクらのエネルギーってどうなるの!?」 X-Knowledge刊
エネルギーって
 このエントリーでは原発反対派は勿論、賛成派にも十分議論を尽くして欲しい核廃棄物の無害化技術について書きます。簡単に言うとたいへん長寿命(十万年)の放射性廃棄物を短寿命(数百年)なものに変えてしまうという「核変換技術」です。

「廃棄物処理問題」
 そもそも、原発をやめたら廃棄物の問題はなくなると考えている人が多い。日本がやめたらそれでハッピーと言う人はもっと多い。蛸壺に住んではるみたい。(笑) 岸田一隆著「ぼくらのエネルギーってどうなるの!?」に非常に分りやすく廃棄物処理のことが書いてあるので、この本を参考にしながら数字を上げて考えてみます。

1 わが国では1万3000トンの使用済み燃料が各原子力発電所に貯蔵されている。
2 六ヶ所村の再処理工場には約3000トンが再処理されるのを待っている。
3 その上、わが国の原発54基全部稼動すると毎年1000トンずつ増えていく。


 この事実は「これをどうするか?」と問えば、反対派も賛成派も関係ありません。事実を直視すれば、いやもおうもないのです。特に反対派の方々は、キャッチフレーズの「地球を汚すな」、「子孫に害を与えるな」を頻繁に使われていますから、この技術について一緒に真剣に考えてくださることを期待します。

 その前に、話をスムーズに前に進めるために、今までのわが国の核燃料サイクルについておさらいをしておきます。

「核燃料サイクル」
 できるだけわかりやすく簡単に書きます。
1 日本の原発はほとんど全部が軽水炉です。軽水炉の燃料は濃縮ウラン。これを1トン燃焼(原子炉の中で核分裂反応)させた場合、核分裂生成物が46kg,他のTRU核種が1kg,合計で47kgが生成されます。(でも、重量比で燃料の4.7%ですから石炭に比べたら極端に少ない)

2 わが国の政策は原発で使った使用済燃料からウランとプルトニウムを回収してもう一度使おうというものです。燃やした燃料からまた燃料が生まれて来るのですから、エネルギー資源の乏しいわが国にとっては、夢のような、魔法のような話です。

3 ひとつは使用済み燃料の再処理技術(六ヶ所村)ですが、わが国ではまだ技術的に確率していませんが、いずれ技術的突破ができると思います。

4 もう一つの方法は高速増殖炉(FRB)で燃料を燃やして発電しながら、次の核燃料を生成していく技術です。「もんじゅ」がその研究炉です。実はこの炉に廃棄物を混ぜて無害化することも可能なのですが、今研究は止められています。

5 だったら、「廃棄物としての残った47Kgをどうしよう?」というのが、残された問題になります。


「核廃棄物を無毒化する技術(ADS)
1 加速器駆動核変換システム(ADS)は十万年かかる核廃棄物の無毒化を数百年〜数十年に短縮する技術です。

2 一番有力視されているのは、核変換したい物質の原子核に中性子を当てて核分裂させ、短寿命の核分裂生成物に変えてしまうという方法です。これは原理的に可能です。(他の方法もあります)

3 わが国では原研と高エネルギー加速器研究機構とがジェーパーク(J-PARK)というプロジェクトを始めている。

4 外国ではベルギー、フランスなどがこの技術で進んでいるが、日本のレベルも高いらしい。ベルギーのプロジェクトがうまくいくと、2022年から運転できるそうです。

 
 翔年は無資源国の日本は原子力発電技術、高速増殖炉の研究、それから加速器駆動核変換システム(ADS)等の研究は絶対に継続するべき重要な技術だと思っています。後に続く世代のためにも、科学技術に蓋をするようなことはしてはならないと考えます。「どうして一番でなければいけないのか?」、「無駄使いである」、「原子力村」などの言葉を投げつけて、「もんじゅ」や「六ヶ所村再処理システム」やその他の重要な研究開発を閉ざしてしまう意見は死んでも言いたくありません。
 ADSのことについては、上掲の書籍の他に、「文芸春秋二月特大号」に評論家の立花隆氏が「最先端技術と10年後の日本」に於いて触れて書いておられます。大局を俯瞰し、技術を十分理解できる方々の見識ある意見がもっとメディアに取り上げられることを念願しています。


※TRU=超ウラン(Trans-uranic)。ネプツニウム、プルトニウム、アメリシウム、キュリウム等の総称。天然には存在しない。
 


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August 24, 2012

原発依存度? -10年後には貢献度と言われているかも-

「直感によって判断する習慣のついている人々は、推理にかんすることがらについては何もわからない。なぜなら彼らはまずひと目で見抜こうとし、原理を求める習慣がついていないからである。」  -パスカル著「パンセ」より-

 福島原発は東北地方太平洋沖地震とこれに伴う津波によって国際原子力・放射線事象評価尺度(INES)レベル7の極めて深刻なシビアアクシデントが発生した。
 この国難ともいうべき未曾有の災厄に対して、時の総理大臣管直人は事故の究明に手をつける前に早々と「脱原発」発言をし、後で個人的見解と見苦しい釈明をした。

 後を継いだ野田政権は「討論型世論調査」なるものをはじめて、22日にその結果がでた。(結果は予想されたとおり)
朝日新聞の記事による。
 政府がエネルギー政策の意見を聞いた討論型世論調査の結果が22日、まとまった。2030年の電力に占める原発割合を「0%」「15%」「20〜25%」とする三つの選択肢のうち、0%支持が討論や学習を経て32.6%から46.7%に増え、最も多かった。エネルギーには「安全の確保」を重視する人が増えたためだ。
 15%支持は16.8%から15.4%に減り、20〜25%は13.0%のまま横ばいだった。政府は「国民的議論」を経てエネルギー政策を決めるとして討論型世論調査をとり入れており、0%支持の増加は政策決定に大きな影響を与える。


 翔年は思う。政府はまたもや手順の誤りを犯している。まずやるべきは福島原発の事故原因の究明、そこから得た教訓の検証である。政府事故調は福島原発以外の女川原発や東海第二原発が地震と津波に襲われた時、どのような状況下におかれ、どのようにして安全に停止状態にまで持ち込めたのか、検証して国民に知らせるべきなのに、それをしていない。(故意にしていないのなら許せません)
 政府がやるべき第一は原発が許容できる安全なシステムであるのかどうか、自らがが判断し、国民に説明することです。そのためには、独立した原子力安全庁の設置や独立した原子力規制委員会の人事をキチンとやって一日も早く発足させることであるはずです。極論すれば、原発依存率は0%か、15%か、25%がいいか? というようなアンケートは民間の調査会社に委託すればいいことなのです。例えば、消費税率は0%、5%、10%、15%、20%のどれを望みますかという調査をしたら、どのような結果が得られるか? (賢明な読者のみなさんなら調査しなくてもお分かりとおもいます)


 さて、囲碁友達のY.T.氏から大前研一著「原発再稼動 最後の条件」を借してもらった。翔年はこれまで原発について、素人が原子力の安全について議論を尽くすには限界があるのは承知の上で、さんざん物を言ってきました。この本の難問題に取り組む姿勢には全面的に賛成です。写真、図表も多く挿入されており、技術的な事項を避けることなく、分かりやすく読者に訴えているたいへん良い本と思います。

原発再稼働最後の条件

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原子力発電所のシステムはどうなっているのか?
安全はどのようにして担保されるのか? 
福島第一原発は電源と冷却源さえあればメルトダウンしなかった? 
事故から学ぶべきことは何か?
福島原発より地震による衝撃が大きかった(想定以上)女川原発は何故大丈夫だったのか? 
だれでも問題の本質を見ることの大切さが分かる本です。お勧めします。



 結論の「電源」と「冷却源」の喪失が福島第一原発の致命傷となったという説明は、福島第一原発、同第二原発、女川原発、東海第二原発を比較した表(一覧性がすばらしい)とあいまって説得性が高いです。また、東電の採用しているBWR型と関電の採用しているPWR型システムの違いもキチンと説明されている。(大事なことなのに、今までこのことに触れたメディアは皆無でした)
 さらに、「原子力発電所の複数プラントを稼動するリスクを忘れるな」など、政府事故調や国会事故調に無い、示唆にとんだ指摘もあり、今後原発問題を考える時の議論の出発点になると思います。是非、手にとって読んでいただきたいと思います。
(この本はB5二冊を横に並べた大きさです。横長の比較表で各サイトの状況などを一覧して理解できるように工夫されているからと思います)



(参考)
1 原子力の依存率の高い国ベスト20
(2008年に国際エネルギー機関(IEA)が公開したもので、各国の消費電力量と総発電量、そして原子力による発電量から原子力発電への依存度を算出、ちょっと古いデータですがご容赦ください)
1位.フランス(76.4%)
2位.リトアニア(71.1%)
3位.スロバキア(57.6%)
4位.ベルギー(53.6%)
5位.ウクライナ(46.6%)
6位.アルメニア(42.6%)
7位.スウェーデン(42.5%)
8位.スイス(40.1%)
9位.スロベニア(38.2%)
10位.ハンガリー(37.0%)
11位.ブルガリア(35.0%)
12位.韓国(33.8%)
13位.チェコ(32.1%)
14位.フィンランド(29.6%)
15位.日本(23.8%)
16位.ドイツ(23.3%)
17位.アメリカ(19.1%) → 発電電力量は8091億kwhは世界一の記録。
18位.スペイン(18.7%)
19位.ルーマニア(17.2%)
20位.台湾(17.1%)


2 原発に積極的な国、消極的な国はどこか?
推進国:  フランス、ロシア、中東、中国
→ フランスは独立国として他国に依存しない政策(エネルギー、食料)を取っている。中東、中国、ロシアは今後のエネルギー需要の増大と化石燃料(石炭、石油、LNG等)の枯渇後の世界を見ていると思われる。

脱原発国: ドイツ、スイス、イタリア
→ ドイツは徹底して脱原発という人もいるけれど、実はフランスから電力を輸入しているし、今後も期待できる地理的文化的位置にある。また、核エネルギーの技術温存を図って、核融合の研究予算はちゃんとつけている賢明さも持ち合わせている。

慎重国: 日本、東南アジア
→ わが国は水力をはじめとする自然エネルギーしかない。自然エネルギーだけではやっていけない。東南アジア諸国はわが国の原発の事故原因やそこから学ぶべきことは何なのか、わが国の動向を注視しているはず。地震国のわが国が原発システムの安全技術を確立し、それを国際社会に発信すれば、これらの国々に大きく技術貢献できる。

3 原発依存率? 
 原発依存率という言葉は、そもそも脱原発を前提にした言葉ではないのか? (笑)
 我が国は国際社会に対して3年前、鳩山首相が、国連気候変動サミットで「2020年までに温室効果ガスを1990年比25%削減する」という中期目標を表明したのは記憶にあたらしい。合わせて、途上国の温暖化防止対策を支援する「鳩山イニシアチブ」も提唱したはずなんだけど、日本は国際公約を言いっぱなしでいいのだろうか? 翔年は民主党の腰のさだまらない迷走政治がたいへん恥ずかしい。(国際的信頼の失墜)
 原発の安全性を徹底的に議論し、安全が担保されることができるという結論に達したら、それを支える技術を支援し、安全組織を作り直し、改めてエネルギー政策の中で政府が原発の貢献率を決めればいい。東南アジア諸国もその検討結果を待っていると思う。
 ともかく、原発貢献率が正しい用語ではないかと思う。




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July 29, 2012

福島第一原発事故調査から学ぶべきこと(その1) -三つの報告書-

福島第一原発事故の各種資料ファイル
原発事故
 政府事故調の「中間報告」(平成23年12月26日)と「最終報告」(平成24年7月23日)国会事故調の「報告書」(日付の記載がどこにもない)、大前研一氏を中心とするチームのH2Oプロジェクトのレポート「福島第一原子力発電所事故から何を学ぶか」-(中間報告、2011/10/28)の三つを読んだ。  政府、国会、民間と立場の異なる組織からの原発事故原因の解明と今後にたいする提言の数々です。いずれの報告書も原発事故の原因追究にとどまらず、国の非常時体制や放出された放射性物質の処理など非常に多義にわたっており、たいへん参考になりました。
 このエントリーでは福島原発の事故原因の究明に絞り、三つの報告書がどのように評価しているか、出来るだけ偏りのない態度で見ることにします。



 その前に翔年は三つの報告書を読んだ感想を述べておきたいと思います。
H2Oproject
○ 政府事故調:(畑村洋太郎委員長、最終報告は平成24年7月23日、中間報告は平成23年12月26日)
 事故の原因及びこの事故による被害の原因を調査・検証し、事故による被害の拡大防止及び同種事故の再発防止に関する政策提言を目的に平成23年5月24日に調査委員会は発足した。
 残念なことに「最終報告」は「中間報告」と合わせて読まないと全体が理解できない。何故なら、「最終報告」が「中間報告」後の調査・検証の結果を記述したものだから。一例をあげれば、福島第一原発のことは「中間報告」にあり福島第二原発のことは「最終報告」に記述されているわけです。半年前に出した報告書はそのままに、追加調査・検証等を書き加えた結果、読者は全体を見通した図や表を得られません。ために「中間報告」と「最終報告」の二つを読みつなぎながら、理解することを読者は強いられます。いわばレポートの手抜きですね。どうしてこのような形式の報告書にするのか理解できません。この姿勢はいただけません。
 また、「(前略)現地調査における困難性や時間的制約のため、(中略)いまだに解明できていない点も存在する。」のような言い訳は、誰もが知っている原発事故の特有のものだから必要ないと思える。時間的制約のない仕事なんてこの世に存在しないのだから。



国会事故調
○ 国会事故調:(黒田 清委員長、平成24年7月6日に衆参議長に提出)
 大事故から9ヶ月後に「事故調査委員会」が組織されたのはあまりにも遅いと思う。しかし、政府からも事業者からも独立し、法律に基づく強い調査権限をもった組織なので、脱原発か原発推進かという結論の前に冷静、客観的かつ科学的な検証をしてくれることを国民は勿論、世界中が期待しました。この報告書は「国会による原子力に関する立法および行政び監視に関する機能の充実強化するため」のものだそうです。
 翔年はこの調査報告書に大きな瑕疵(たった一つ)を見つけました。報告書のどこにも報告日の記載がないのです。これまた信じられないことです。


政府事故調
 H2Oプロジェクトのレポート:(大前研一氏を中心とする民間グループ、2011年10月28日)
 レポートのタイトル「福島第一原子力発電所事故から何を学ぶか」に示されているように目的は明確、資料の提示の仕方、図表の出来具合、いずれをとっても上の二者とは段違いのできばえです。翔年は特に福島第一原発だけでなく、他の原発(福島第二、東通、女川、東海第二)まで目配りを忘れず、事実をキッチリ押さえ、福島第一と他原発とのクロノジー(発生した事実)の違いとその理由を分析したことは素晴らしい視点で賞賛に値します。更に今後の確認事項として、システムの異なるPWR型原発についても言及しているのはわが意を得た思いです。最終報告が待たれます。




真の事故原因は何か

機\府事故調: 細部に至るまで、事実を拾い上げている点は評価できる。その代わり一読して一体何が問題であったのか非常に分かりにくい。技術的に問題点の総括はなく、報告では次の三点が問題と指摘している。
(1)津波によるシビアアクシデント対策の欠如
(2)複合災害と言う視点の欠如
(3)全体像を見る視点の欠如

妥当と言うべきなんでしょうが、あまりにも漠然としており、具体性がありませんね。ただし、この報告書は責任を追及する目的ではないという姿勢は好ましい。(勿論、一つ一つの事象に詳細に評価が下されています
 それと、翔年は報告書の「福島第二原発では、津波到達後も外部電源からの給電が継続していたことによる余裕があったのに対し、福島第一原発2号機では全電源喪失の状況下で事故対処に当たらなければならなかったという違いは大きかったにせよ、福島第一2号機における事故対処は、福島第二原発におけるそれと比べて、具体的なプラントの状況を踏まえた上で、事態の進展を的確に予測し、事前に必要な対応を取るというものになっておらず、間断なく原子炉への注水を実施するための必要な処置が取られていたとは認められない。」という記述には納得できません。監視装置の電源もない全くのブラックアウト状態におかれた制御室の運転員に事故原因を押し付けるのは、例えそれが事実としてもいかがなものか思います。「全電源喪失が原因」がシステムとしての瑕疵としてあげられてしかるべきと考えます。


供々餡饂故調: 基本的な考え方の中に「原子炉の構造上の安全ではなく人間の安全保障を重視した調査を行う」としているので、ことシステムの安全に関しては、技術的な立脚点がキチンとしていなくては議論にならないと考えている翔年にとって、やや物足らないところがあった。 
 この報告書では事故原因は明確に「人災」としている。
(1) 地震・津波による被災の可能性、自然現象を起因とするシビアアクシデントへの対策、大量の放射能の放出が考えられる場合の保護など、事業者である東京電力、及び規制当局である内閣府原子力安全委員会、経済産業省原子力安全・保安院、また原子力推進行政当局である経済産業省が、それまでに当然備えておくべきこと、実施すべきことをしていなかった。
 今回の事故は「自然災害」ではなくあきらかに「人災」である。 


掘 H2Oプロジェクト:翔年はこのレポートの次の2点が重要と読み取りました。ちょっと長くなりますが我慢してお付き合いください。
(1)電源と海水冷却機能の喪失が1〜3号機の原子炉の事態を悪化させた。
 どういうことかを、ごく簡単に時間を追ってフロー図で示します。全ての電源を失ったため、現場で取りうる対策はあまりなかったというのは本当です。

↓時間の推移(☆:外部事象○:取られた対策、×:発生、進展した困った問題)
 ☆ 地震の発生       
 ○ 原子炉自動停止  × 全外部電源の喪失
 ○ 非常用発電機の自動起動
 ○ 非常用復水器による原子炉の冷却  
 ☆ 津波の襲来
 × 全電源(交流・直流)の喪失
 × 注水機能の喪失 × ベント機能の喪失(1号機)
 × 原子炉格納容器の圧力上昇  × 原子炉水位の低下(燃料の露出始まる)
 ○ 手動ベント         ○ 原子炉減圧操作(1号機以外)
 × 水素の格納容器からの漏洩  × 燃料の損傷と水素、核分裂生成物の大量発生
 × 建屋上層階に滞留      ○ 消防車による注水と冷却
 × 原子炉建屋内で水素爆発
 × 核分裂生成物のサイト外放出
                     
(2)安全指針は間違っていた。
原子力安全委員会の指針集にこう明記されていました。
安全審査指針27には
○ 原子炉施設は、短時間の全交流電源喪失に対して、原子炉を安全に停止し、かつ、停止後の冷却を確保できる設計であること。
同じく、その解説にはこうあった。
● 長期間にわたる全交流動力電源喪失は、送電線の復旧又は非常用交流電源設備の復旧が期待できるので考慮する必要はない。
● 非常用交流電源設備の信頼度が、系統構成又は運用(常に稼動状態にしておくことなど)により、十分に高い場合にうおいては、全交流動力電源喪失を想定しなくてもよい。
 現実には、外部の送電線は復旧せず、交流のみならず直流を含む全電源の長期喪失によって、中央制御室の機能、冷却・注水機能がほば全面的に不全となってしまった。



 以上見てきたように三つの報告書とも、「人災」であるとしている。「人災」であるなら、事故からさまざまなことを学んで対策を講じれば、今回のような重大な事故は防げると翔年は思う。

 事故の分析も事故から学ぶ知恵もなく、早々と「脱原発」を口にし、事故の最中だけでなく、事故後にもわが国に大きな混乱の種を蒔いた管直人前総理はリーダーとしての資質に問題があったといわざるをえません。このことについては、また稿を改めて論じたいと思います。



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July 03, 2012

今夏の節電はなん%できるか? - 計画停電の可能性は高い!

 今夏の関電管内の電力需給状況は非常に厳しいという。

需要(節電、随時調整契約を折込済み)    2、987万Kw 
供給力(8月の最大値)              2,542万Kw
予備力                          -445万Kw
予備力率(%)                      -14.9%


 この数字を軽く見てはなりません。まともな需給計画にはなっていません。節電だけで乗り切れるとはとても思えない数字です。 脱原発を声高に叫んでいる人は大勢いますが、脱原発団体が節電で大きな成果をあげたというニュースは聞いたことがありません。それに、関西地方の昨年の節電率は東電管内より大分少なかったですしね。

 原発分の穴埋めを期待される火力発電には心もとないのもある。例えば海南火力発電所の2号機は先月30日、休止から約11年ぶりに運転を再開した。いわば、退職していた老人に急にフルで働けと命令しているようなものです。機械は正直、老朽化した設備ほど故障確率は高い。ボイラーチューブからの蒸気漏れやポンプやファンや複雑な計測器等のトラブルも発生することは十分ありうることです。クラゲが大発生して取水口に押し寄せてきて、出力低下に追い込まれることもある。
 三菱UFJ銀行の試算では昨夏、わが国の火力発電所のトラブルは1530万Kwに達したそうです。トラブルは同時に起こるとは限りませんが、均等に発生する確率はもっと低いから心配です。
 
 翔年は関電管内の計画停電は必至と見ていますが、停電ともなれば長時間連続して電気の必要な産業界では大損害も発生するでしょうし、病院では不測の事態が発生するかも知れません。ビルだって、家庭だって、暑いさなかに冷房が止まったら病弱な方や高齢者は命にかかわる事態の発生です。

 目前に明らかに発生するこんな事態を予想して、あらかじめなんら手を打たなかったのは民主党の失政と言わなければなりません。大地震発生後の原子力発電所のトラブルの原因が何と何によるものなのか、原因をキチンと究明、検証し、対策を立て、安全のための法律と組織(原子力安全庁)を創って国民を安心させることが何よりも急務の政府の仕事だった筈です。(1年半経過して、安全のための原因究明も法律も組織も何もかも出来ていません)

 こうなってしまった以上、少しでも事態の悪化をくいとめるために、市民として節電に協力できるところは協力しなければなりません。そんな思いから、このエントリーでは関電の提供している節電メニューを紹介します。(全て関電のHPに書いてあります)

(1)季時別電灯PS: 従量電灯契約者が希望すれば適用される。夏のピーク時に対応するピ−ク時間と、それ以外のオフピーク時間、夜間時間に時間帯を区分し、ピーク時間からオフピーク時間および夜間時間へ負荷移行することで、電気料金を削減できる料金メニューがあります。
※1 ピーク時間(7/1〜9/30の平日) 13時〜16時 (料金 52円82銭/Kwh)
※2 オフピーク時間(ピーク時間を除く) 7時〜23時 (料金 20円62銭/Kwh)
※3 夜間時間 23時〜翌7時 (料金 8円19銭/Kwh) 
※4 上は一例です。詳しくはここhttp://www1.kepco.co.jp/ryoukin/kijibetsu-ps.htmlを見てください。

(2)節電トライアル: 節電&「はぴeみる電」新規登録で最大2,000円分のQUOカードがもらえる。
 翔年はインターネットから申し込みをしましたら、早速、右下のような「マイページ」が自動的に用意されました。7月〜9月までの使用電力量が昨年と正確に比較できます。(画像をクリックして拡大し、再度クリックして最大にすれば字も読めます)
マイページトップ [関西電力 -155049

 楽しく家族で相談しながら節電ができ、電気料金が安くなり、その上QUOカードがもらえるのです。さらに、計画停電の範囲(翔年の自宅は3-C)や時間(曜日と時間帯)についても、ネット上で分かりやすく表示してくれますし、最悪事態になった時はメールで知らせてくれるそうです。
まだ申し込みしていない方は節電トライアルに是非参加して欲しいと願っています。

(3)facebookにも: 関電公式HPが用意されています。 この夏は市民はネットで電気の情報をできるだけ得て、自分に出来る節電に努めたいものです。
 



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May 04, 2012

リーダーシップ不在の政府 -原発再稼動の判断基準がない?

 今日の読売朝刊は北海道電力泊原子力発電所3号機が5日夜、定期検査入りし、国内から原子力発電の電気がゼロになると報じている。定期検査入りは法律に基づいて実施することであり何の問題もない。問題は定期検査が終わって、原子力発電所を再稼動させる法的手続きが全て終了しても、民主党政権が後で付け加えた政治手続きが迷走に迷走を重ねており、議論が何時収束するのか、何をもって再稼動の条件とするのか、何もかもわけの分からない混乱の極にあることです。政治家が安全のための検討を命じたり、あらゆる角度からエネルギー問題に議論を重ねることは悪いことではない。ただし、決断には判断基準と時期が重要である。政治家は何もかも先送りして、国民生活を混乱させる愚を犯してはならない。

電力維新-読売

 この事態に対する政府の対応と政治家の記者会見のコメントを読売から拾い出して並べて見よう。恐ろしく低レベルの政治家が国会にいることに改めて気づかれるでしょう。

1 野田首相は訪問先の」ワシントンで 1日(日本時間)、関西電力の大飯原発3,4号機の再稼動について「全く地元の理解がいただけないなら、(原発ゼロの状態で節電で夏を乗り切る)選択肢は勿論ある」と同行の記者団に語った。
 → 原発の安全性を判断して政治決断すべき最高責任者が他人事のようなコメントをしているのには驚きました。これでは政治家のリーダーシップは無いに等しいと言わざるを得ません。

2 ここに至る前、4月9日の関係閣僚会合はこんな調子でした。頼りない政治家集団をようくみてください。この閣僚会合で「過去5年間の平均需要で試算すると、関電管内は今夏には520万キロワット(17.2%)不足する」という説明を聞いた出席者に緊張が走ったそうな。
 → 今頃緊張してどうするのか。このような事態を招いたのは管前総理の不用意な「脱原発」発言、急に言い出した「ストレステスト」の追加、法律に基づかない浜岡原発停止要請等に起因する。政治が指導原理を持たずに口をはさみすぎた結果、収拾がつかなくなっている。エネルギー問題について見識ある政治家の意見を一度でも聞いたことがある人はいるのでしょうか?

3 細野原発相の発言。「停電もありうる。この事実をどう国民に理解してもらうかだ。」「需給面で改善の余地はないのか」
 → うろたえ発言である。脱原発を叫んだ時に先を見通した覚悟がなされていないから、こういう見苦しいことになる。

4 閣僚のひとり。「数字を見て愕然とした」
 → こんな発言をする閣僚がいると知って国民は愕然となる。

5 福井県に隣接する滋賀県、京都府と関電の筆頭株主の大阪市から安全性や需給見通しの説明を求められて、政府は何度も説明はしているがちっとも理解が得られない。聞いた方は「説明が不十分」と繰り返すだけ。
 → 説明をする方も受ける方も、技術や法に基づく判断ではなくて、政治判断なので、不毛の議論を延々とつづけることになる。

6 原子力規制庁の発足は棚上げ? 藤村官房長官らは「再稼動を判断する基準は将来的に見て全て法律に基ずくものにするべきだ」と唱えた。
 → 当たり前のことを今更官房長官から聞きたくない。民主党政権はそのために独立した組織、「原子力規制庁」をつくると言っていたではないか。法律をつくり、組織を作って、技術力アップを図り、万全の安全体制を築いて、国民を安心させるのが政府の役割ではないのか。

 
 立法府がやるべき「原子力規制庁」、安全規制の関連法の整備などはどれ一つやらずに、目の前の需給バランス表を見て愕然とするような見識のない政治家達のやる政治では、夏の関西電力館内の停電は避けられないでしょう。普通の国民には節電以外の選択肢はありません。相当の節電をしても、停電はありうると考えておくべきでしょう。暑い日本の夏がきます。ことは社会の根幹に関わるエネルギーの供給不安なのですから、今後さまざまな分野にさまざまな悪影響が当然噴出します。その覚悟をするべき時期にきました。
 エネルギー政策を持たず、こういう自体を引き起こした政治家は次の選挙で消えていただくことを願っています。


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April 20, 2012

根本から考える(7) - 放射能とリスク

 久しぶりに良い書物を読んだ。ウェード・アリソン著、峰村俊哉訳、徳間書店刊、「放射能と理性」は類まれな科学啓蒙書であり、放射能を恐れて限りなく安全基準を下げないと安心できないという人々の声が日本中に満ち満ちている今、まことに時宜を得た本であると思う。今の日本人はこの本の受け入れる準備ができていると思う。日本人が原発事故で蒙ったダメージ(心理的なものと環境汚染と技術への一時的な不信感)から目を覚まし、立ち上がるために、この本はその道案内をしてくれると信じます。
 ただし、一般向けに書かれた本ではあるけれど、読者に相当の科学知識と冷静で正しい判断とを要求する。ハッキリ言って理解するには相当骨が折れる。翔年は2回通読しましたが、著者の意図するところを大雑把に理解するのがやっとで、細部を完全に理解することは困難だったことを、最初に白状しておきます。

ウェード・アリソン著「放射能と理性」
放射能と理性

 著者のメッセージは
「月100ミリシーベルトまで安全基準を引き上げても大丈夫」
というものです。
 その根拠と証拠がデータに裏打ちされた広範な最新の科学的知見で正確に記述されている。そして事故のリスクを低減させるための意思決定は、社会の成員すべてに影響をもたらす。言うまでもないことだが、リスク水準をどう考えるか、どれだけのリスクを許容するべきかが縷々論じられている。著者は
「私たちはリスク・ゼロを求めるべきでない。(中略)人間一人ひとりが感じる恐怖は、絶対的で定量化はできないかもしれないが、どうにかしてコントロールする必要がある。
と述べている。これは「理性で判断しなさい」ということでしょう。

 「放射能と理性」の目次をピックアップして、何が論じられているかをキーワードで紹介します。

プロローグ
第一章 人々の受け止め方
 錯誤、個人のリスクと知識、個と集団の意見、自信と意思決定、科学と安全

第二章 地球の大気環境
大気の規模と組成、大気の変化、エネルギーと農業
→ 地球規模の視点を離れて、もしくは無視して、原発や放射能のことのみを論じて結論を下してはならないということでしょう。広い視点を持つ著者に敬意を表します。

第三章 原子核の話
 人体から原子核まで、原子と電子、有核原子、原子核が不活発な理由、太陽という核融合炉
→ 放射線とは一体なんなのか? 「移動中のエネルギー」だそうです。その詳細な答えはこの章と次の章にあります。

第四章 電離放射能とは何か
 放射線のスペクトル、放射線によるダメージ、放射線の測定、自然環境での放射線

第五章 安全と損傷のバランス
効果は比例するか、リスクのバランスをとる、人間の防御機能、損傷とストレスの関係、修復のスケジュール、集団線量の意味、安全率を考える、複合的な要因、有益な適応効果、チェルノブイリでの驚き
(チェルノブイリからの報告)
「チェルノブイリ周辺は予想されたような不毛の地ではなかった。高い放射能レベルにもかかわらず、野生の動植物が生き残っており、かえって繁栄している例さえあった。(翔年:人間がいなければ野性の天下だもの、人間の居住は大規模な放射能汚染と同じかそれ以上の悪影響を環境に及ぼしているのかも知れません))
ウクライナ出身で米国で活動するメアリー・マイシオは、チェルノブイリ周辺で長期の取材を行い、現地で見つけた豊かな植物相と動物相について本を執筆した。チェルノブイリを題材にしたBBCのドキュメンタリー番組も、2006年7月にマイシオと同じ結論に達している。」
→ 上は104ページの抜粋です。われわれは、放射線の生命への影響を分析する際に、昔から用いられている前提の多くを、改めて検証し直さなければいけないと確信します。

実験用ラットとチェルノブイリ原発作業員の死亡率(興味のある方は是非拡大してご覧ください)
実験用ラットとチェルノブイリ原発作業員の死亡率1
→ 左の大量被爆時の人間の線量-死亡率曲線は、LNTモデルの直線ではなく、非線形のS字型で示されると読み取るべきだろう。人間を使った厳密な実験を何度も繰り返すことは難しいにしても、原爆実験、不幸な事故、医療による治療のための被曝事例等あらゆるデータを集めて、学者の見解が早く集約されることが望まれる。そして今わが国にも求められているのはこの本の著者のような科学分野で深くてかつ広い知見を持ち勇気ある発言ができるゼネラリストだと思う。

第六章 放射線による急性被曝
 分子にたいする影響、細胞に対する影響、大量被爆時における証拠、生体の修復メカニズム、少量から中程度の被爆、ヒロシマ・ナガサキの生存者、放射線で引き起こされる癌、医療診断用スキャン、核医学、チェルノブイリの被爆者たち、子供の甲状腺癌、チェルノブイリにおけるその他の癌

第七章 放射線による慢性被曝
 線量の分散化、癌治療にみる放射線被爆、分割化による利益、自然環境からの被爆、ラドンと肺癌の関係、放射線作業員と文字盤塗装職人の場合、生物の防護機能の詳細
→  低線量の被爆を生物がこうむった場合、生体がどのようにして防護するのか、その防護システムをかなり突っ込んで論じている。

第八章 原子力を利用する
 原子力エネルギーの解放、爆弾としての原子力、核分裂による発電、軍事利用と平和利用、廃棄物をめぐる問題
→ 例えば1ギガワット級の火力発電所は毎年650万トンの二酸化炭素を排出する。いったん排出されてしまった二酸化炭素は地球規模でやっかいな問題を起こし始めている。危険な毒性の重金属を含む大量の灰は、浅い処分場に埋め立てられ、永久的にその場に残留する。原発からの核廃棄物は量が少ないこと、環境内へ放出されないことが特徴だ。同じエネルギーを生産するとして比較すると、原発が使う燃料は火力発電所の約100万分の一。廃棄物は二酸化炭素と違って、貯蔵することも出来るし、処理して安全に埋めることも出来る。半減期が30年と長いストロンチウム90とセシウム137にしても、100年後には十分の一に、300年後には1000分の一になる。一方、石炭火力の廃棄物に含まれる砒素やカドミウムなどの重金属は、永遠に消えることはない。このようなところにも及ぶ科学の目は信頼するに値しますね。

第九章 放射線と社会
 放射線にたいする理解、多くの人々の懸念、核実験と死の灰、抑止と安全のコスト、放射線の安全を評価する

第十章 持続可能性に向けて
 規制緩和の対象、進化する原子力発電、ウラン資源と政治、廃棄物への戦略、廃炉の工程表、核融合発電の可能性、コストと経済性の両立を目指す、飲料水と食料への寄与、再び教育と理解という原点について

第十一章 総括と結論

エピローグ フクシマ2011


 原子力の平和利用に賛成の方も反対の方も、是非読んでいただきたいと思います。好著であることは間違いありません。


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February 16, 2012

福島原発の事故責任は原子力安全委員会にあり

 NHKのWebニュース(1/15)は
 15日に開かれた国会の原発事故調査委員会には、国の原子力安全委員会の班目春樹委員長と、原子力安全・保安院の寺坂信昭前院長の2人が参考人として出席しました。
 この中で班目委員長は、原発の安全対策を示した国の指針について「いろんな意味で瑕疵があったことは、はっきり認めざるをえない。津波に対する十分な記載がなかったり、すべての電源の喪失も『長時間考えなくてもいい』とされていた。原子力安全委員会を代表しておわびする」と述べたうえで、見直しを進める考えを示しました。

と報じています。

本日の読売新聞朝刊(クリック2回の拡大で記事が読めます)
安全指針に誤り
 あまりに遅すぎるとはいえ、これで今回の事故責任問題の本質がハッキリ見えたので、翔年はかなり物がスッキリ言えるようになりました。(笑)
 ここのところをハッキリさせないまま、これまで政治家もマスコミも世論も多くの評論家も、こぞって「東電憎し」というスタンスで議論を展開していたので、賠償責任問題も東京電力の今後の姿も冷静な議論の対象になり得ませんでした。本来、この議論は法治国家として統治方法の議論(安全を守る制度)と経済原則に則って東電のあり方(私企業)を議論すべきものだと思います。


 原子力発電所の本質的な安全の枠組みを決めているのは内閣府にある原子力委員会であり、ここで決められた原理原則が原子力基本法をはじめとする法律や政令や施行令でキチンと(別の言葉でいえばがんじがらめに)決められているのです。それを私企業の東京電力が遵守し、発電所を建設し、運転し、電力の供給責任を果たしながら利益をあげていたというのが現実です。勿論、原子力発電所を安全に建設し運転するためには、法律だけでは不十分なので、企業は安全確保ために絶えざる設備の改善、技術の向上、人材の育成をはかりながら、地元との協調等をとって、自主保安体制をとる責任を負っています。



1 今回の事故の補償の主体は? − 国+東電 −
 今回斑目委員長が認めたように、今回の津波に起因する原発事故は
(1)津波に対する十分な記載がなかった ← なかったのですよ。
(2)すべての電源の喪失も「長時間考えなくてもいい」 ← 明記されています。
とされていたことにありました。規制する側に大きな問題があったのですね。
 そうだとすれば、今回の事故の当事者は東京電力ですが、一番大きな責は原子力委員会(=政府)が負うべきことは当然と思います。
 原子力災害から国民の生命、身体及び財産を保護することを目的とする「原子力災害特別措置法」にもとづいて、国が責任をもってことにあたってほしい。未だに、東電に責任を押し付けようとする政府の態度が時々顔を出すのはいかがなものかと思います。

2 東京電力の今後? − 会社更生法適用→ 一時国有 → 新東電 −
 建前とはいえ、自主保安ということがうたわれている以上、東電の責任はある。地震発生直後から、発電所の運転にミスはなかったのか? 事故拡大を防ぐための備えは十分なされていたのか? 政府は事故原因分析をシッカリやって欲しい。これをハッキリさせなければ東電の補償範囲が決められません。補償は待ったなしで必要なため、一旦は政治的判断に委ねるとしても、原因分析によっては国と東電の分担比率は変わることもあり得ると国民は許容しなければなりません。

 東電は現在、補償をする十分な資金がない、会社運営をする資金も欠くような事態に陥っていますから、国の資金投入は避けられません。
(1)公的資金が投入されたら、東電は国の管理下(経営権は国)に置かれて当然です。期間は5年とか10年とか期限を切るべきでしょう。
(2)バランスシートを見極めて、市場のルールによって会社更生法が適用されてしかるべきです。
(3)すると、株式は0円となり、出資者は株主責任をとることになります。
(4)公益企業といえども、JALと同様の手順を踏むのが公平ではないでしょうか。JALの飛行機は飛びつづけたように、電力供給は今までと同様に続けられます。
(5)バランスシートの債務超過分は最終的には国民負担となるのはやむをえません。
(6)この手順を踏んで再手続きがうまくいけば、新東電ができるでしょう。
 このようなスキームを早くつくって実行に移さないと補償が進みません。補償が進まないと復興が滞ります。

 発送電分離論とか電力の独占体制をなくし競争原理を導入するとかの案は国民の前でジックリ議論を尽くすべきだと思います。わが国のエネルギー政策全般を見据えた本格的な議論を望みます。翔年はその場合、とにかく原子力が怖い、嫌いという人や東電憎しのスタンスを持つ人の意見はあまり重視したくありません。これからは冷静に公正に、国家の政策として正論を堂々と戦わせる必要を強く感じています。

 最後に、事故以来今日まで原発敷地内にとどまり、身を危険にさらしながら涙ぐましい努力を続けらている発電所員、協力会社員、さらに事故当初に支援の危険な作業をされた自衛隊員や消防署員の方々に感謝の気持ちをささげたいと思います。

(参考)
原子力安全委員会:(Wqipediaより)
1978年(昭和53年)に原子力の安全確保の充実強化を図るため、原子力基本法の一部を改正し、原子力委員会から分離、発足。Nuclear Safety Commissionと訳し略称はNSC。国家行政組織法上の第8条審議会と同等の機能を有する(ただし、国家行政組織法第1条の規定に基づき、内閣府は国家行政組織法の適用から除外されているため、中央省庁再編以降は内閣府設置法第37条に審議会等としての根拠を有する)。
原子力安全委員会の職務は原子力の研究、開発および利用に関する事項のうち、安全の確保に関する事項について企画し、審議し、および決定することである。
具体的な役割については下記の通り。
以下の事項について企画し、審議し、及び決定する。
1 原子力利用に関する政策のうち、安全の確保のための規制に関する政策に関すること
2 核燃料物質及び原子炉に関する規制のうち、安全の確保のための規制に関すること
3 原子力利用に伴う障害防止の基本に関すること
4 放射性降下物による障害の防止に関する対策の基本に関すること
5 第一号から第三号までに掲げるもののほか、原子力利用に関する重要事項のうち、安全の確保のための規制に係るものに関すること。
「特定放射性廃棄物の最終処分に関する基本方針」について経済産業大臣に意見を述べること
核燃料物質の関連事業を行おうとする者の指定や許可について担当大臣に意見を述べること
原子力緊急事態宣言の解除について内閣総理大臣に意見を述べること
原子力緊急事態宣言の技術的事項について原子力災害対策本部長に助言すること
原子力防災管理者通報義務や原子力緊急事態宣言の政令の制定や改廃について主務大臣に意見を述べること
定期報告を受け、災害防止のために必要な措置を講ずるために担当大臣に意見を述べること
定期報告に関して原子力事業者等の調査をすること
しかし、業者を直接規制することはできない。


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Posted by mtmt0414 at 13:39Comments(7)TrackBack(0)