September 15, 2004

マメゾウムシの棘

9月3日に蜘蛛の生態、9月5日に鈴虫について書いた。そしてこの虫たちのオスは交尾がおわるとメスに喰われてしまうという虫のあわれについて書いた。いや、もっとハッキリ言うとオスが生殖にふりむけるエネルギーの大部分は、メスを惹きつけ交尾をすることに費やされ、メスが生殖に注ぐエネルギーのほとんどは、子供を養い育てることに費やされるという自然界の真理を書きたかったのだ。
このことを書いてから、メスに対して何かたくらむおもろいオスがいないか気にかけていた所、変な虫を見つけた。

その名はヨツモンマメゾウムシ(callosobrucbus maculatus)という。まずマメゾウムシを簡単にご紹介してから、本題のオスの戦略行動についてお話しましよう。
マメゾウムシは小さな黒い甲虫で、貯蔵庫の穀物や豆類を食べて生きています。メスは豆に卵を産みつけ、孵化した幼虫は豆の内部に食い進む。肥え太った幼虫はサナギとなり、成虫となって豆からでてくるという訳。

さて、この成虫オスのマメゾウ君、目的はできるだけ多くのメスと交尾すること、その結果として自分の遺伝子をできるだけ多く残すことである。大体この辺の戦略はどんな動物も大なり小なり同じであります。

ところがこのマメゾウ君、驚くべきことに、なんと交尾中のペニスにトゲが出現するのです。勿論この棘はメスの生殖器官を傷つけ、観察によると一回交尾したメスより二回交尾したメスの方があきらかに短命だという。恐ろしいことだ。翔年でなくとも「何故だ?」と声を発したくなります。

ここからは推論になりますが、メスを傷つけることで、オスはメスが次に交尾するまでの期間を長引かせているのではないか、これによって自分の精子で受精する卵子の数が増えることを狙っているのではないかとマイク・シヴァ・ジョシー研究員は考えているそうだ。

人類の歴史の中にも貞操帯という道具で他の男の遺伝子の侵入を防いだ男の事実があるが、このマメゾウムシと同レベルの考えだ。いずれにしても、このようなまじめであるけれども姑息な手段で貞操帯をさせる男もマメゾウのようなサディスティックなオスも翔年は好きになれない。

出典はローワン・フーパー著 調所あきら訳 「脳とセックスの生物学」 新潮社刊です。
脳とセックスの生物学

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