「STAP細胞『大変革』世界が興奮、米指導教官も賞賛」(朝日新聞)という大きな見出しが新聞各紙の一面に躍り、多くの日本人が「やったー!」と大喜びしたのが1月30日だった。(30日付英科学誌ネイチャーに発表)
翔年もiPS細胞の山中教授に続く若い研究者の大発見を喜ぶとともに、あまりにも簡単な方法{マウスの細胞に弱酸性の刺激を与えるだけ}で、どんな組織にもなれる細胞(STAP細胞)が出来るとはまさに自然界の不思議を見たと思うとともに、世界中の研究者の盲点をついた素晴らしい発見だと本当に嬉しかった。
ところが、時間が経つにつれて、この研究成果に色々な角度から疑問が呈されたり、論文の画像に別の画像が紛れ込んでいるのを指摘されたり、他人の論文の文章丸写し箇所が発見されたりして、今では何がなんだか分らない状態になってきた。
幸いなことに、翔年はSTAP細胞に多大の関心を抱いていたため、メディアが報じた記事を手元に残していた。素人が複雑な事項や事象(大事故や大詐欺事件や大錯誤の積み重なり)に切り込み読み解くには、「時系列的に事実を並べて、自分の頭で考えるしかない」ので、今回の「STAP細胞狂想曲」にも当てはめて見たいと思います。このBlogの読者はまた「時系列」かと笑われることを承知の上です。(笑) でも、お付き合い下されば、何かが見えてくることは請け負います。
STAP細胞の時系列的狂想曲(1/30〜3/11)
1月30日
STAP細胞「大変革」世界が興奮、米指導教官も賞賛(朝日新聞)。
「iPS細胞とは違う方法で、万能細胞の作成に成功した理化学研究所発生・再生科学総合研究センター(神戸市)の小保方晴子ユニットリーダーらの研究論文が英科学誌ネイチャーに発表されたことを報道各社は伝えた。」
→ このときから、日本のメディアは「STAP細胞」を「万能細胞」という簡略な表現にしたが、翔年は本来のSTAP(Stimulus Triggered Acquisition of Pluripotency)を正しく「刺激惹起性多能性獲得」と日本語表記すべきだったと思う。なぜなら、万能細胞ではないのだから、厳密な科学用語を分りやすくしすぎて、全然別の概念を与えてしまってはならない。(後の混乱でこの意味するところはあきらかになります)
2月06日
論文の共同執筆者(14人)の一人、ハーバード大のチャールズ・バカンティ教授が5日、万能細胞(STAP細胞)の可能性がある細胞の顕微鏡写真を公表した。
→ 翔年は「可能性がある細胞」という表現にあれっと思った。何故理研の小保方さんから自らのチームが作製したあたらしいSTAP細胞の写真の提供がないのだろうとも。
2月10日
共同研究者の東京女子医大・大和雅之教授「未解明の生命現象が解決する可能性がある。例えば、がん細胞の根源とされるガン幹細胞は突然変異とストレス(刺激)の組み合わせでできるのかもしれない。」
→ 翔年はこの説に膝を打って納得しましたよ。この時は。
慶応大・岡野栄之教授のコメント
(1) 「核移植・遺伝子導入に続く第三の多能性技術として発展する期待を示したのは大きな成果だ。(以下略)「同じ条件で刺激を与えれば、だれでもSTAP細胞を作ることができるかどうか、再実験で確かめる必要がある。」
→ あれっ、ネイチャー誌の論文はまだ再現実験の必要があるの? と翔年は驚きました。14人の共同執筆者がいて、それはないだろうと。なぜなら、理化学研究所が世界に向かって研究成果を発表したのだから、当然再現実験は終わっているのは自明のことと信じていたから。もう一つ、ネイチャー誌は論文を掲載するにあたって「査読」という作業を行ったはず(科学技術誌では当然のこと)だから、岡野先生は変なことをおっしゃってるなぁとこの時は思った。
(2) 「複数の細胞の塊として胎盤を含む多能性が示されたが、単一の細胞で多能性を持つかどうかも検証すべきだ。(移植せずに体内で再生医療の実現を記者にきかれて)理論的にはあるかもしれないが、生物の体はさまざまな刺激を受けているにもかかわらず、なぜ恒常性がたもたれているのかという疑問も湧く。」
→ この二つのことは、今思えば小保方論文の弱点をついていたのだと思い当たる。岡野先生は研究者として至極当然のことをきちんとおっしゃっていたのです。
iPS細胞の山中教授の声明
(1)「STAP細胞については最大限協力したい。」
(2)「iPS細胞はSTAP細胞よりがんリスクが高いなどとする3つの誤解がある。」
→ 山中先生は理研チームの成果があまりにも過大に評価されていることにブレーキをかけておられるように見えるが、先生の目から見たら、小保方チームの細胞に対する理解や知見、科学的事実確認の幼稚さに一抹の不安を感じられていたのではないでしょうか? (特に多能細胞であるiPS細胞の最新の研究成果を知らなすぎる)
2月17日
共同執筆者の山梨大、若山照彦教授が記者に研究の役割について語った。
(1)「小保方さんはハーバー大学留学中の平成20年にSTAP細胞の研究に着手。22年7月、作った細胞の多能性を判定してほしいと、当時理研発生・再生科学総合研究センターにいた私を訪ねてきた。」
(2)「人工多能性細胞(iPS細胞)は遺伝子操作で初期化を行うが、小保方さんは外的な刺激で実現しようとしていた。これは当時の常識に反しており、誰も信用せず引き受けなかった。それで私に直談判してきた。」
(3)「出来るはずがないと思ったが、常識を超えたい気持ちがなければ新しい偉大な成果は絶対にうまれない。成功すればハーバード大に勝つと思った。」
(4)「小保方さんは、毒素を与えたり栄養を不足させたり、さまざまな刺激でSTAP細胞を作った。私はそれをマウスの受精卵に注入して胎児に育てた。(細胞は紫外線を当てると緑に光るように加工してあるので、多能性があればマウスの体が光るはず)
(5)「23年11月、マウスの胎児に紫外線をあてると全身が緑色に光った。ありえないことが目の前でおき、小保方さんと二人で口もきけないほど驚いた」
→ 研究の経緯からSTAP細胞の成功確認まで、全て正直に真実を語っておられると思います。
2月25日
ネット上の「Open ブログ」の記事
(1) 「STAP細胞は、真実でもなく、捏造でもなく、ただの誤認だった」
→ あるブロッガーの卓抜な推測記事です。興味のある方は読んでみてください。翔年は科学技術は事実を論理で追認する(裏付ける)ことだと思っているので、この時はもう少し事実を確かめてから、推理したいと思いました。(このOpenブログは今もドンドン追加記事がアップされています)
3月2日
STAP細胞論文に他論文と酷似箇所 -実験手順-が2005年に発表された論文とほぼおなじであることが報じられた。
→ なんというのでしょうか、論文の不備があれこれ指摘されており、なんか嫌な予感がしてきました。
3月3日
日本分子生物学会の大隈典子理事長(東北大教授)は上のような問題について「本学会としては大変憂慮している」、「可能な限り迅速に状況の正確な報告を公表するとともに、今後の規範となるような適切な対応を取ることを期待する」との声明を出した。
→ 至極当然な声明と思います。
3月5日
理化学研究所はSTAP細胞の作製手順を記載した英文の資料を研究所のHP等で公開した。それによると「STAP細胞の作製には特別な操作が必要」だという。それによれば
(1)マウスのリンパ球は新鮮なほどよく
(2)雌より雄の方が成功率が高い
(3)リンパ球に赤血球が混ざると成功率が落ちる
加えて
(4)論文発表後、STAP細胞の再現実験に成功したと発表した。
→ これらは素人が聞いても、論文発表以前か発表と同時にすべき事項に思えます。理研はその他の指摘されている疑問点には答えていないのは何故なのでしょうか?
3月10日
別研究の画像と酷似した画像が見つかったと報じられる。また、科学誌ネイチャーの広報担当者は取材に対して「当該論文に関して現在調査を行っている」と答えている。
→ ネイチャー誌の査読が甘かったことは明らかです。
3月11日
大手新聞各社の報道
(1)ハーバード大医学部は事実関係を独自に検証する方針を明らかにした。
(2)共同執筆者の山梨大若山教授が所属する共同執筆者に「STAP論文の撤回」を提案した。理由は「STAP細胞の根幹にかかわる大事なところで疑問が出てきた」からという。
(3)理研の広報室長は「論文の取り下げを視野に検討している」とし、「14日に外部の有識者を交えた調査委員会が途中経過を報告する方針」と発表した。
→ どうやら、論文は取り下げる方向にあるようです。時系列の記事を読んでいただいた読者もおおよその落としどころは感じられたのではないでしょうか。
翔年はこんなこと(国際的な大騒ぎ)になった責任は理化学研究所の幹部の杜撰な研究管理、研究論文の取り扱いと英科学誌ネイチャーの査読不十分にあると思います。
科学技術の研究において失敗はつき物でしょう。関係する分野の研究者は再現実験を通じて、
(1)何が問題であったのか
(2)誤認や過誤はなかったのか、あったとしたらそこを正したらどうなるのか
(3)刺激の条件について更に条件を変えながら、STAP細胞が作製できる道筋をなんとしても見出していただきたいと切に願っています。
(4)もし、今回の論文において失敗が明らかになったとしても、くれぐれも小保方ユニットリーダーに責任の大半を押し付けるような愚は犯さないようによろしくお願いします。
このBlogでは常に、科学者であれ、政治家であれ、一見不利に見えようとも、「正直」をよりよい戦術として採用して欲しいと思っています。
いつも『もの言う翔年』を読んでくださりありがとうございます。
お陰さまで「囲碁」も「政治評論」のジャンルもランキング上位に入っております。
コメントをいただいたり、ランキングがそこそこにとどまっているのを励みにBlogを書いております。
お暇なときに見てくだされば嬉しいです。
にほんブログ村
にほんブログ村