July 10, 2013

東電福島第一原発元所長吉田昌郎所長死去  -所長の証言を中心に-

報道によると
 「東京電力福島第1原発事故の収束作業を現場で陣頭指揮した元所長で、東電執行役員の吉田昌郎(よしだ・まさお)氏が9日午前11時32分、食道がんのため都内の病院で死去」

された。大阪府出身で58歳だったという。

 人物評は「本店に盾突く困ったやつ」、「気骨ある」だったらしい。これは勲章でしょう。

 翔年は「国家の存亡を賭けた危機のとき、最後は軍隊がやるべき」と思っていますが、軍隊でもない民間企業の発電所長とその部下が、日本の半分を救うという大事を今回は成し遂げたのです。忘れないために、故吉田所長が発言した証言をここに記して、ご冥福をお祈り致します。

TV会議の故吉田所長
吉田昌朗所長

撤退について
(1)現場で原子炉を冷やしたり、そういう作業をしている人間は撤退できないと思っていたし、本店にも撤退ということは一言も言っていないし、私は思ってもいなかった。本店には一言も撤退と言っていないということは間違いない。
→ 翔年はこの言葉を信じます。信じるにたる事実はあります。後日編纂された事故調等数多くの資料にも記載がある。

撤退の意味するところ
(2)結局、我々が離れてしまって注水ができなくなってしまうということは、もっとひどく放射能漏れになる。そうすると5、6号機はプラントはなんとか安定しているが、人もいなくなると結局あそこもメルトダウンする。そのまま放っておくと、もっと放射能も出る。福島第2原発も一生懸命、プラントを安定化させたが、あそこにも人が近づけなくなるかもしれない。そうなると大惨事になる。そこまで考えれば、当然のことながら逃げられない。
→ 撤退がどんな大きな被害をもたらすか、所長は誰よりも分っていたと思います。

現場の長と部下
(3)大変な放射能、放射線がある中で、現場に何回も行ってくれた同僚たちがいるが、私が何をしたというよりも彼らが一生懸命やってくれて、私はただ見てただけの話だ。実際ああやって現場に行ってくれた同僚一人一人は、本当にありがたい。私自身、免震重要棟にずっと座っているのが仕事で、現場に行けていない。いろいろな指示の中でそこに飛び込んでいってくれた連中がたくさんいる。
 法華経の中に地面から菩薩がわいてくるというところがあるが、そんなイメージがすさまじい地獄のような状態で感じた。現場に行って、免震重要棟に上がってきてヘロヘロになって、寝ていない、食事も十分ではない、体力的に限界という中で、現場に行って上がって、また現場に行こうとしている連中がたくさんいた。
→ デンと動かない所長と指示に身を呈して行動する部下。人間的結びつきがあったからこそ、このような過酷な状況で大事がなし遂げられたのだと思います。


破滅を覚悟した人の言葉
(4)一番インパクトがあったのは1号機もそうだが、3号機の爆発というのがあった。これは今まで経験した中で、(あとから考えれば水素爆発だったが)その時点では何が起こったかわからないという状態なので、もう破滅的に何か起こってるんじゃないかと思った。一つは自分が死ぬということ、メンバーも含めて、免震重要棟の人間は死んでたっておかしくない状態だった。
 3号機なんかは特にそうだった。あれだけのがれきが飛んできて。私は、最初は行方不明者が何人ということを聞いた時に、確か数十人レベルでまだ安否が確認できていないというのが最初の状況だった。ああこれは10人ぐらい死んだかもしれないというふうに思った。それから自衛隊の方には本当に申し訳なかった。水を補給しにきてくれた自衛隊の部隊がけがをされて…。
→ これは死を覚悟した人間の証言だと思います。


 「原発に残ったメンバーの名前をホワイトボードに書くように指示したとのことだが、どのような思いだったか?」という報道陣の質問に答えて
(5)ほとんどその時のことを思い出せないが、たぶん、要するに最後まで残って戦ったのはこんな人間だぞということを残しておこうということだ。今から思えば。」
→ せめて墓標を残そうとした行動なのでしょうか。

もっとも求められていること
(6)事故当時も言っていたが、世界の知恵を集めて、第1原発をより安定化させることが一番求められている。いろいろなだれの責任うんぬんということもきちっとやるべきだが、やはり発電所を少しでも安定させる。それには人も必要だし、技術もいろいろな知恵が必要だ。そこに傾注するということが重要なことだと思う。そのうえで、地元の方々に通常の生活に戻っていただけるか考えることができる。いずれにしても現場を落ち着かせる、安定化させることが一番重要な責務だ。
→ 大局判断が常にキチンと頭の中にある。最も求められていることは今も変りません。元所長は必要なのは人と技術と知恵だと言っていますが、実は金(資金)がいるのです。東電に金が枯渇しているのをどうするかという議論を最近あまり見かけません。国が正面に出るべきでしょう。未来に禍根を残してはなりません。


その時、もう一人の長(日本国総理大臣菅直人)はどんな言動をしていたか?
舟橋洋一著「カウントダウン・メルトダウン」にこんな記述があります。(ノンフィクションです)
菅(総理大臣)は寺坂原子力安全保安院長、安井副院長、斑目原子力安全委員長、久木田委員長代理を一人ずつ指差し、
「どうなんだ?」
「撤退はありえないだろう」
と確認して回った。

→ 「撤退する。しない。」の最終的な政治判断は総理=原子力災害対策本部長が決めることである。なのに菅総理は技術判断を聞かなければならない助言者達(寺坂、安井、斑目、久木田)に政治判断を聞いて回っている。答えを強要している。カン違いは困りますな。(笑)
 管総理と斑目委員長の間で、また管総理と東京電力の清水社長の間でも「言った、言わない論争」が未だにある。非常時、しかも事故の最終的な判断をする責任あるトップ達の器量不足だと考えます。現場指揮官はさぞやりにくかったことでしょう。
 このような大事に際しては、どんな政治的決定も科学的基準に基づくことが必要と翔年は信じます。そして重要な決断には、しっかりとした判断の意志決定過程を残しておいて欲しいと思います。民主党の菅政権はこういう重要なポイントが全てないがしろにされているのが残念でなりません。


その頃、アメリカは日本をどうみていたか?
スタインバーグ国務副長官は日本政府の対応を
「ぞっとする」と感じていた。「準備も何もまったくできていないし、危機管理もなっていない。」と。
「日本という国は、同盟国に値する国なのかどうなのか、それが問われていると自覚して欲しい。」と藤崎駐米大使に迫ったという。
→ こんな政府では、簡単に外国の侵略を許してしまうだろうと思えるので、それこそ「ぞっと」します。もしそんな事態になっていれば同盟国の米国はどうしたでしょうか。外国から国を守るとはどういうことか、根本的な国家観について国民的議論が必要だと思います。




(参考)
1 主に、ネット上発表された記録及びノンフィクションの「カウントダウン・メルトダウン(上)(下)」を参考にしました。
2 自衛隊法施行規則第39条 一般の服務宣言
「事に臨んでは危険を顧みず、身をもって責務の完遂に務め、もって国民の負託にこたえることを誓います」



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この記事へのコメント
坂口浩之さま

これに懲りず、どんどんコメントを書いてください。
今後ともどうかよろしくお願いします。

Posted by ユリウス at July 17, 2013 22:06
即刻の対応有難うございました。
もの言う翔年さんと、会話できるようになって、とても安心しました。
もの言えない寂しさは、唇寒しどころではありませんでした。
コメントが激減したと思いながら、つい遠慮致しておりました、別ルートが
繋がっていてよかったです。
もの言う翔年さんに、コメントするのは少し閾が高いと思いますが、今後ともよろしく宜しくお願い致します。  
Posted by 坂口 浩之 at July 15, 2013 18:41
坂口 浩之様
コメント、ありがとうございます。
コメントの再開第一号です。仕様どおり、正常にアップできたのではないかと思っています。(ご意見があれば教えて下さい。使いやすいように修正します)
おっしゃるとおり、職場の上司と部下がこれだけ強い絆で結ばれているのは稀有のこと、今後感動的な物語が生み出されるかもしれませんね。かつて「黒部の太陽」があったように。


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Posted by ユリウス at July 15, 2013 12:46
早速の対応有難うございます。試験送信のつもりで書いてみます。
まず、吉田元発電所長は大阪府出身と言うことと、この人親分肌の御仁で
所員の皆に命を惜しまぬ程の信頼があったとの事で、この事だけで感動です。憧れの人です。折りがあったら、自叙伝とか技術的、学術的でない
本を読んでみたいと思っています。
ログ インを記入欄がないので、一寸不安ですが、送信してみます。
Posted by 坂口 浩之 at July 15, 2013 10:43