February 09, 2013

核廃棄物の無毒化を短縮する -わが国の最先端重要技術-

 福島原子力発電所の残念な事故が発生して以来、民主党政権の誤った誘導と迷走があって、わが国のエネルギー政策が、大きくゆがめられてしまった。その結果が少しずつ国民の目に見える形で現れてきている。
 貿易収支の大赤字(国富の海外流出)、電気をはじめとするエネルギー価格の上昇、国内での企業立地の困難性増大、核廃棄物処理技術の停滞、中国からの汚染物質の飛来(大量の化石燃料の使用が原因)など、原子力エネルギーの利用をやめればこれらのマイナス現象が必然的に増大するのは当然のことだと思う。


岸田一隆著 「ボクらのエネルギーってどうなるの!?」 X-Knowledge刊
エネルギーって
 このエントリーでは原発反対派は勿論、賛成派にも十分議論を尽くして欲しい核廃棄物の無害化技術について書きます。簡単に言うとたいへん長寿命(十万年)の放射性廃棄物を短寿命(数百年)なものに変えてしまうという「核変換技術」です。

「廃棄物処理問題」
 そもそも、原発をやめたら廃棄物の問題はなくなると考えている人が多い。日本がやめたらそれでハッピーと言う人はもっと多い。蛸壺に住んではるみたい。(笑) 岸田一隆著「ぼくらのエネルギーってどうなるの!?」に非常に分りやすく廃棄物処理のことが書いてあるので、この本を参考にしながら数字を上げて考えてみます。

1 わが国では1万3000トンの使用済み燃料が各原子力発電所に貯蔵されている。
2 六ヶ所村の再処理工場には約3000トンが再処理されるのを待っている。
3 その上、わが国の原発54基全部稼動すると毎年1000トンずつ増えていく。


 この事実は「これをどうするか?」と問えば、反対派も賛成派も関係ありません。事実を直視すれば、いやもおうもないのです。特に反対派の方々は、キャッチフレーズの「地球を汚すな」、「子孫に害を与えるな」を頻繁に使われていますから、この技術について一緒に真剣に考えてくださることを期待します。

 その前に、話をスムーズに前に進めるために、今までのわが国の核燃料サイクルについておさらいをしておきます。

「核燃料サイクル」
 できるだけわかりやすく簡単に書きます。
1 日本の原発はほとんど全部が軽水炉です。軽水炉の燃料は濃縮ウラン。これを1トン燃焼(原子炉の中で核分裂反応)させた場合、核分裂生成物が46kg,他のTRU核種が1kg,合計で47kgが生成されます。(でも、重量比で燃料の4.7%ですから石炭に比べたら極端に少ない)

2 わが国の政策は原発で使った使用済燃料からウランとプルトニウムを回収してもう一度使おうというものです。燃やした燃料からまた燃料が生まれて来るのですから、エネルギー資源の乏しいわが国にとっては、夢のような、魔法のような話です。

3 ひとつは使用済み燃料の再処理技術(六ヶ所村)ですが、わが国ではまだ技術的に確率していませんが、いずれ技術的突破ができると思います。

4 もう一つの方法は高速増殖炉(FRB)で燃料を燃やして発電しながら、次の核燃料を生成していく技術です。「もんじゅ」がその研究炉です。実はこの炉に廃棄物を混ぜて無害化することも可能なのですが、今研究は止められています。

5 だったら、「廃棄物としての残った47Kgをどうしよう?」というのが、残された問題になります。


「核廃棄物を無毒化する技術(ADS)
1 加速器駆動核変換システム(ADS)は十万年かかる核廃棄物の無毒化を数百年〜数十年に短縮する技術です。

2 一番有力視されているのは、核変換したい物質の原子核に中性子を当てて核分裂させ、短寿命の核分裂生成物に変えてしまうという方法です。これは原理的に可能です。(他の方法もあります)

3 わが国では原研と高エネルギー加速器研究機構とがジェーパーク(J-PARK)というプロジェクトを始めている。

4 外国ではベルギー、フランスなどがこの技術で進んでいるが、日本のレベルも高いらしい。ベルギーのプロジェクトがうまくいくと、2022年から運転できるそうです。

 
 翔年は無資源国の日本は原子力発電技術、高速増殖炉の研究、それから加速器駆動核変換システム(ADS)等の研究は絶対に継続するべき重要な技術だと思っています。後に続く世代のためにも、科学技術に蓋をするようなことはしてはならないと考えます。「どうして一番でなければいけないのか?」、「無駄使いである」、「原子力村」などの言葉を投げつけて、「もんじゅ」や「六ヶ所村再処理システム」やその他の重要な研究開発を閉ざしてしまう意見は死んでも言いたくありません。
 ADSのことについては、上掲の書籍の他に、「文芸春秋二月特大号」に評論家の立花隆氏が「最先端技術と10年後の日本」に於いて触れて書いておられます。大局を俯瞰し、技術を十分理解できる方々の見識ある意見がもっとメディアに取り上げられることを念願しています。


※TRU=超ウラン(Trans-uranic)。ネプツニウム、プルトニウム、アメリシウム、キュリウム等の総称。天然には存在しない。
 


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この記事へのコメント
>軽水炉の燃料は濃縮ウラン。これを1トン燃焼(原子炉の中で核分裂反応)させた場合、核分裂生成物が46kg,他のTRU核種が1kg,合計で47kgが生成されます。(でも、重量比で燃料の4.7%ですから石炭に比べたら極端に少ない)

これは確かに事実なのでしょうが、現実には結構大変な状態です。まず、濃縮ウランの大部分は重金属なのです。核反応性がないウランも重金属であり、鉛と同じように環境からは隔離する必要があります。

次に、

>核分裂生成物が46kg,他のTRU核種が1kg,合計で47kgが生成

ですが、分離が困難なものが多いのです。つまり、もともとの核燃料と混ざって存在しているので、1トンそのものがかなりの放射性物質になっているのです。つまり、飲料水が欲しいのに、海水しかないのと同じです。

>更に言わせてもらえば、あなたも私も、人間なら誰でも、1Kgあたり120ベクレル弱の放射能を持った放射性物質

についても誤解があり、もともと地球上の生物はカリウム40の分散的な放射線に対してはそれに対する防御システムを進化と共に獲得してきています。正確な計算はできていませんが、カリウム40を6000ベクレル体内に持っていたとしても60兆個の細胞の一つ一つを見るとせいぜい1時間に一回程度しか放射線を受けないのです。このため、カリウム40の放射線に対しては十分に普通は耐性があります。

しかし、セシウムにしてもストロンチウムにしても、またはプルトニウムにしてもまずその元素自体が生体にとっては異物であり、化学毒性があることが多い。次に、こういった放射性物質は微粒子として数百ベクレルの塊になっていることが多く、その周りの細胞が集中して放射線を浴びることになり、免疫機能が追い付かないのです。

被曝影響はミクロな現象のため、注意して考えないと誤解をしてしまいます。

Posted by 武田信弘 at June 05, 2014 21:22
高木 順さま

おっしゃるように、わが国が世界になくてはならない技術で人類に貢献できるようになれば、素晴らしいです。
相手を威嚇するような強大な武力を持たなくても、世界の世論が守ってくれるかも知れません。甘いですか?(笑)
植物や微生物が微小な放射能を低減してくれる事実はあるようです。なぜなら、地球上に生存する動植物は自然放射能にさらされつつ何万年も生き延びてきた歴史を持っているのですから。
更に言わせてもらえば、あなたも私も、人間なら誰でも、1Kgあたり120ベクレル弱の放射能を持った放射性物質なのです。(笑)
太古に地球上に自然の原子炉があった痕跡すらありますから、放射能潔癖主義はいかがなものかと思っています。
Posted by ユリウス at February 10, 2013 00:50
原爆や原発事故を経験したからこそ、人類に貢献するADSのような技術を開発する姿勢が、世界からみて、品格ある日本たらしめる。 真偽のほどはいざ知らず、微生物が放射能を低減する話しもちらほら巷に流れています。
Posted by 高木 順 at February 09, 2013 22:49