July 29, 2012

福島第一原発事故調査から学ぶべきこと(その1) -三つの報告書-

福島第一原発事故の各種資料ファイル
原発事故
 政府事故調の「中間報告」(平成23年12月26日)と「最終報告」(平成24年7月23日)国会事故調の「報告書」(日付の記載がどこにもない)、大前研一氏を中心とするチームのH2Oプロジェクトのレポート「福島第一原子力発電所事故から何を学ぶか」-(中間報告、2011/10/28)の三つを読んだ。  政府、国会、民間と立場の異なる組織からの原発事故原因の解明と今後にたいする提言の数々です。いずれの報告書も原発事故の原因追究にとどまらず、国の非常時体制や放出された放射性物質の処理など非常に多義にわたっており、たいへん参考になりました。
 このエントリーでは福島原発の事故原因の究明に絞り、三つの報告書がどのように評価しているか、出来るだけ偏りのない態度で見ることにします。



 その前に翔年は三つの報告書を読んだ感想を述べておきたいと思います。
H2Oproject
○ 政府事故調:(畑村洋太郎委員長、最終報告は平成24年7月23日、中間報告は平成23年12月26日)
 事故の原因及びこの事故による被害の原因を調査・検証し、事故による被害の拡大防止及び同種事故の再発防止に関する政策提言を目的に平成23年5月24日に調査委員会は発足した。
 残念なことに「最終報告」は「中間報告」と合わせて読まないと全体が理解できない。何故なら、「最終報告」が「中間報告」後の調査・検証の結果を記述したものだから。一例をあげれば、福島第一原発のことは「中間報告」にあり福島第二原発のことは「最終報告」に記述されているわけです。半年前に出した報告書はそのままに、追加調査・検証等を書き加えた結果、読者は全体を見通した図や表を得られません。ために「中間報告」と「最終報告」の二つを読みつなぎながら、理解することを読者は強いられます。いわばレポートの手抜きですね。どうしてこのような形式の報告書にするのか理解できません。この姿勢はいただけません。
 また、「(前略)現地調査における困難性や時間的制約のため、(中略)いまだに解明できていない点も存在する。」のような言い訳は、誰もが知っている原発事故の特有のものだから必要ないと思える。時間的制約のない仕事なんてこの世に存在しないのだから。



国会事故調
○ 国会事故調:(黒田 清委員長、平成24年7月6日に衆参議長に提出)
 大事故から9ヶ月後に「事故調査委員会」が組織されたのはあまりにも遅いと思う。しかし、政府からも事業者からも独立し、法律に基づく強い調査権限をもった組織なので、脱原発か原発推進かという結論の前に冷静、客観的かつ科学的な検証をしてくれることを国民は勿論、世界中が期待しました。この報告書は「国会による原子力に関する立法および行政び監視に関する機能の充実強化するため」のものだそうです。
 翔年はこの調査報告書に大きな瑕疵(たった一つ)を見つけました。報告書のどこにも報告日の記載がないのです。これまた信じられないことです。


政府事故調
 H2Oプロジェクトのレポート:(大前研一氏を中心とする民間グループ、2011年10月28日)
 レポートのタイトル「福島第一原子力発電所事故から何を学ぶか」に示されているように目的は明確、資料の提示の仕方、図表の出来具合、いずれをとっても上の二者とは段違いのできばえです。翔年は特に福島第一原発だけでなく、他の原発(福島第二、東通、女川、東海第二)まで目配りを忘れず、事実をキッチリ押さえ、福島第一と他原発とのクロノジー(発生した事実)の違いとその理由を分析したことは素晴らしい視点で賞賛に値します。更に今後の確認事項として、システムの異なるPWR型原発についても言及しているのはわが意を得た思いです。最終報告が待たれます。




真の事故原因は何か

機\府事故調: 細部に至るまで、事実を拾い上げている点は評価できる。その代わり一読して一体何が問題であったのか非常に分かりにくい。技術的に問題点の総括はなく、報告では次の三点が問題と指摘している。
(1)津波によるシビアアクシデント対策の欠如
(2)複合災害と言う視点の欠如
(3)全体像を見る視点の欠如

妥当と言うべきなんでしょうが、あまりにも漠然としており、具体性がありませんね。ただし、この報告書は責任を追及する目的ではないという姿勢は好ましい。(勿論、一つ一つの事象に詳細に評価が下されています
 それと、翔年は報告書の「福島第二原発では、津波到達後も外部電源からの給電が継続していたことによる余裕があったのに対し、福島第一原発2号機では全電源喪失の状況下で事故対処に当たらなければならなかったという違いは大きかったにせよ、福島第一2号機における事故対処は、福島第二原発におけるそれと比べて、具体的なプラントの状況を踏まえた上で、事態の進展を的確に予測し、事前に必要な対応を取るというものになっておらず、間断なく原子炉への注水を実施するための必要な処置が取られていたとは認められない。」という記述には納得できません。監視装置の電源もない全くのブラックアウト状態におかれた制御室の運転員に事故原因を押し付けるのは、例えそれが事実としてもいかがなものか思います。「全電源喪失が原因」がシステムとしての瑕疵としてあげられてしかるべきと考えます。


供々餡饂故調: 基本的な考え方の中に「原子炉の構造上の安全ではなく人間の安全保障を重視した調査を行う」としているので、ことシステムの安全に関しては、技術的な立脚点がキチンとしていなくては議論にならないと考えている翔年にとって、やや物足らないところがあった。 
 この報告書では事故原因は明確に「人災」としている。
(1) 地震・津波による被災の可能性、自然現象を起因とするシビアアクシデントへの対策、大量の放射能の放出が考えられる場合の保護など、事業者である東京電力、及び規制当局である内閣府原子力安全委員会、経済産業省原子力安全・保安院、また原子力推進行政当局である経済産業省が、それまでに当然備えておくべきこと、実施すべきことをしていなかった。
 今回の事故は「自然災害」ではなくあきらかに「人災」である。 


掘 H2Oプロジェクト:翔年はこのレポートの次の2点が重要と読み取りました。ちょっと長くなりますが我慢してお付き合いください。
(1)電源と海水冷却機能の喪失が1〜3号機の原子炉の事態を悪化させた。
 どういうことかを、ごく簡単に時間を追ってフロー図で示します。全ての電源を失ったため、現場で取りうる対策はあまりなかったというのは本当です。

↓時間の推移(☆:外部事象○:取られた対策、×:発生、進展した困った問題)
 ☆ 地震の発生       
 ○ 原子炉自動停止  × 全外部電源の喪失
 ○ 非常用発電機の自動起動
 ○ 非常用復水器による原子炉の冷却  
 ☆ 津波の襲来
 × 全電源(交流・直流)の喪失
 × 注水機能の喪失 × ベント機能の喪失(1号機)
 × 原子炉格納容器の圧力上昇  × 原子炉水位の低下(燃料の露出始まる)
 ○ 手動ベント         ○ 原子炉減圧操作(1号機以外)
 × 水素の格納容器からの漏洩  × 燃料の損傷と水素、核分裂生成物の大量発生
 × 建屋上層階に滞留      ○ 消防車による注水と冷却
 × 原子炉建屋内で水素爆発
 × 核分裂生成物のサイト外放出
                     
(2)安全指針は間違っていた。
原子力安全委員会の指針集にこう明記されていました。
安全審査指針27には
○ 原子炉施設は、短時間の全交流電源喪失に対して、原子炉を安全に停止し、かつ、停止後の冷却を確保できる設計であること。
同じく、その解説にはこうあった。
● 長期間にわたる全交流動力電源喪失は、送電線の復旧又は非常用交流電源設備の復旧が期待できるので考慮する必要はない。
● 非常用交流電源設備の信頼度が、系統構成又は運用(常に稼動状態にしておくことなど)により、十分に高い場合にうおいては、全交流動力電源喪失を想定しなくてもよい。
 現実には、外部の送電線は復旧せず、交流のみならず直流を含む全電源の長期喪失によって、中央制御室の機能、冷却・注水機能がほば全面的に不全となってしまった。



 以上見てきたように三つの報告書とも、「人災」であるとしている。「人災」であるなら、事故からさまざまなことを学んで対策を講じれば、今回のような重大な事故は防げると翔年は思う。

 事故の分析も事故から学ぶ知恵もなく、早々と「脱原発」を口にし、事故の最中だけでなく、事故後にもわが国に大きな混乱の種を蒔いた管直人前総理はリーダーとしての資質に問題があったといわざるをえません。このことについては、また稿を改めて論じたいと思います。



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