February 16, 2012

福島原発の事故責任は原子力安全委員会にあり

 NHKのWebニュース(1/15)は
 15日に開かれた国会の原発事故調査委員会には、国の原子力安全委員会の班目春樹委員長と、原子力安全・保安院の寺坂信昭前院長の2人が参考人として出席しました。
 この中で班目委員長は、原発の安全対策を示した国の指針について「いろんな意味で瑕疵があったことは、はっきり認めざるをえない。津波に対する十分な記載がなかったり、すべての電源の喪失も『長時間考えなくてもいい』とされていた。原子力安全委員会を代表しておわびする」と述べたうえで、見直しを進める考えを示しました。

と報じています。

本日の読売新聞朝刊(クリック2回の拡大で記事が読めます)
安全指針に誤り
 あまりに遅すぎるとはいえ、これで今回の事故責任問題の本質がハッキリ見えたので、翔年はかなり物がスッキリ言えるようになりました。(笑)
 ここのところをハッキリさせないまま、これまで政治家もマスコミも世論も多くの評論家も、こぞって「東電憎し」というスタンスで議論を展開していたので、賠償責任問題も東京電力の今後の姿も冷静な議論の対象になり得ませんでした。本来、この議論は法治国家として統治方法の議論(安全を守る制度)と経済原則に則って東電のあり方(私企業)を議論すべきものだと思います。


 原子力発電所の本質的な安全の枠組みを決めているのは内閣府にある原子力委員会であり、ここで決められた原理原則が原子力基本法をはじめとする法律や政令や施行令でキチンと(別の言葉でいえばがんじがらめに)決められているのです。それを私企業の東京電力が遵守し、発電所を建設し、運転し、電力の供給責任を果たしながら利益をあげていたというのが現実です。勿論、原子力発電所を安全に建設し運転するためには、法律だけでは不十分なので、企業は安全確保ために絶えざる設備の改善、技術の向上、人材の育成をはかりながら、地元との協調等をとって、自主保安体制をとる責任を負っています。



1 今回の事故の補償の主体は? − 国+東電 −
 今回斑目委員長が認めたように、今回の津波に起因する原発事故は
(1)津波に対する十分な記載がなかった ← なかったのですよ。
(2)すべての電源の喪失も「長時間考えなくてもいい」 ← 明記されています。
とされていたことにありました。規制する側に大きな問題があったのですね。
 そうだとすれば、今回の事故の当事者は東京電力ですが、一番大きな責は原子力委員会(=政府)が負うべきことは当然と思います。
 原子力災害から国民の生命、身体及び財産を保護することを目的とする「原子力災害特別措置法」にもとづいて、国が責任をもってことにあたってほしい。未だに、東電に責任を押し付けようとする政府の態度が時々顔を出すのはいかがなものかと思います。

2 東京電力の今後? − 会社更生法適用→ 一時国有 → 新東電 −
 建前とはいえ、自主保安ということがうたわれている以上、東電の責任はある。地震発生直後から、発電所の運転にミスはなかったのか? 事故拡大を防ぐための備えは十分なされていたのか? 政府は事故原因分析をシッカリやって欲しい。これをハッキリさせなければ東電の補償範囲が決められません。補償は待ったなしで必要なため、一旦は政治的判断に委ねるとしても、原因分析によっては国と東電の分担比率は変わることもあり得ると国民は許容しなければなりません。

 東電は現在、補償をする十分な資金がない、会社運営をする資金も欠くような事態に陥っていますから、国の資金投入は避けられません。
(1)公的資金が投入されたら、東電は国の管理下(経営権は国)に置かれて当然です。期間は5年とか10年とか期限を切るべきでしょう。
(2)バランスシートを見極めて、市場のルールによって会社更生法が適用されてしかるべきです。
(3)すると、株式は0円となり、出資者は株主責任をとることになります。
(4)公益企業といえども、JALと同様の手順を踏むのが公平ではないでしょうか。JALの飛行機は飛びつづけたように、電力供給は今までと同様に続けられます。
(5)バランスシートの債務超過分は最終的には国民負担となるのはやむをえません。
(6)この手順を踏んで再手続きがうまくいけば、新東電ができるでしょう。
 このようなスキームを早くつくって実行に移さないと補償が進みません。補償が進まないと復興が滞ります。

 発送電分離論とか電力の独占体制をなくし競争原理を導入するとかの案は国民の前でジックリ議論を尽くすべきだと思います。わが国のエネルギー政策全般を見据えた本格的な議論を望みます。翔年はその場合、とにかく原子力が怖い、嫌いという人や東電憎しのスタンスを持つ人の意見はあまり重視したくありません。これからは冷静に公正に、国家の政策として正論を堂々と戦わせる必要を強く感じています。

 最後に、事故以来今日まで原発敷地内にとどまり、身を危険にさらしながら涙ぐましい努力を続けらている発電所員、協力会社員、さらに事故当初に支援の危険な作業をされた自衛隊員や消防署員の方々に感謝の気持ちをささげたいと思います。

(参考)
原子力安全委員会:(Wqipediaより)
1978年(昭和53年)に原子力の安全確保の充実強化を図るため、原子力基本法の一部を改正し、原子力委員会から分離、発足。Nuclear Safety Commissionと訳し略称はNSC。国家行政組織法上の第8条審議会と同等の機能を有する(ただし、国家行政組織法第1条の規定に基づき、内閣府は国家行政組織法の適用から除外されているため、中央省庁再編以降は内閣府設置法第37条に審議会等としての根拠を有する)。
原子力安全委員会の職務は原子力の研究、開発および利用に関する事項のうち、安全の確保に関する事項について企画し、審議し、および決定することである。
具体的な役割については下記の通り。
以下の事項について企画し、審議し、及び決定する。
1 原子力利用に関する政策のうち、安全の確保のための規制に関する政策に関すること
2 核燃料物質及び原子炉に関する規制のうち、安全の確保のための規制に関すること
3 原子力利用に伴う障害防止の基本に関すること
4 放射性降下物による障害の防止に関する対策の基本に関すること
5 第一号から第三号までに掲げるもののほか、原子力利用に関する重要事項のうち、安全の確保のための規制に係るものに関すること。
「特定放射性廃棄物の最終処分に関する基本方針」について経済産業大臣に意見を述べること
核燃料物質の関連事業を行おうとする者の指定や許可について担当大臣に意見を述べること
原子力緊急事態宣言の解除について内閣総理大臣に意見を述べること
原子力緊急事態宣言の技術的事項について原子力災害対策本部長に助言すること
原子力防災管理者通報義務や原子力緊急事態宣言の政令の制定や改廃について主務大臣に意見を述べること
定期報告を受け、災害防止のために必要な措置を講ずるために担当大臣に意見を述べること
定期報告に関して原子力事業者等の調査をすること
しかし、業者を直接規制することはできない。


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この記事へのコメント
翔年 様
いつも、ありがとうございます.お三方は萱の外で全く官僚からの情報はなく、あやつり人形と勝手な思いです.持論ですみませんが、世界混乱期は確かで、未だ弱肉強食の思想をほのめかすTPP(今後に注目重視)、小さいながら東電も同じ流れと察せられ、残り2基の原発はウソとこれまた勝手ながらの思いです.時間稼ぎと思え、到底脱原発は無理と判断せざるを得ません.あと数カ月の夏までに原発再開は見えています.世界から笑い者にされない理由ができたら、再開ほかはありません.ほんまに原発嫌なら、どこか捜して海外へ行くしかありません.国内どこでも事故あれば被災地区で逃げようがありません.推進派でなくても覚悟しております.暑い夏や寒い冬は耐えられない!というより死者が急増することは間違いありません.
Posted by 奈良・東京のO at February 21, 2012 20:42
奈良・東京のO さま

コメント、何時もありがとうございます。
関連ニュースです。
民主党の管元総理が「新エネルギー」部門を担当し、直接輿石幹事長に意見具申することが決まったそうです。同じように鳩山元総理は「外交」担当だそうです。
どちらもミスキャストではないでしょうか?
Posted by ユリウス at February 19, 2012 10:01
翔年 様

原発施設で古くなれば別ですが,今回の事故は施設の機能・品質・性能・状態の内,状態のみの瑕疵と思っています.
トータル的には他のコメンテーターさんを引用させていただきますと,法令の欠陥で記載内容はほぼ正解と思います.
Posted by 奈良・東京のO at February 18, 2012 10:39
高木 順 様

おっしゃるとおりと思います。
ご意見、ありがとうございました。

日本昔話(明治初期):
○ 明治の初期に電話が導入された時、電柱に架設された電話線を見てこうウワサした。
「あれは処女の生き血を吸うらしい」

○ 鉄道が導入された時、駅を街中に(人の住む近くに)造るのに大反対した。
「火の粉で街が火事になる」 → 実際汽車が原因の火事はあった。
「あれが来たら牛が乳を出さんようになる」
「鶏は卵産まんようになる。

未知のものや目に見えない物への恐怖心は人間の奥深くにビルトインされているらしい。技術は感情ではなく知性で受け止め、判断を下すべきものでしょうね。

Posted by ユリウス at February 18, 2012 09:35
一筆啓上。福島5,6号機はこの巨大地震でも、3m敷地レベルが高く冷却電源が確保されたため、津波被害はなく無事冷温停止している。また福島1〜4号機は津波が来るまでは5〜6号機と同じように冷温停止状態のプロセスに入っていたと大前研一氏の事故報告書にある。すなわち少なくとも…吐搬从ができており、⊇淑な長時間の電源が確保されておれば、この惨事は防ぐことができた。 特に企業で諸設備を考えてきたときに△鮃佑┐覆ても良いと言う法令は明らかに、その法令の欠陥である。 
この欠陥はもちろん修正必須だが、この際言っておきたいのは、欠陥のある法律でも部長職となった役人は法律を守ることに専念し、その上位概念、すなわち今回の例で言えば安全で経済的な持続可能な安定電力を供給することへの行動をしない、させない体制で保身に走りがちであり、この際これも刷新すべきです。
横道にそれたが本題に戻すと、琵琶湖の水温上昇は過去50年で1℃もあり、25km程離れた若狭湾の水温上昇の2.5倍です。向こう30年で水素社会に移行するにしても、当面は原子力を含めたエネルギー諸策で環境に調和したバランスをとらざるをえず、天然ガスも含めた化石燃料の使いすぎで温暖化に拍車を掛けない賢明な国策が必要である。 
重力に逆らって飛んでいる飛行機も事故の度に、技術や法令も改善されている。判らないことは遠ざけるという態度ではなく、事実を真摯に究明し、知恵を出して解決策を構築する時であろう。熱きに懲りてなますを吹く事のないこと祈っている。
琵琶のプリウス    H24年2月17日
Posted by 高木 順 at February 17, 2012 23:47
奈良・東京のO様

瑕疵があったのは事実です。安全委員会の指針に
1 津波に対する十分な記載がなかった。→ 東電はその指針に基づいて施設を作った。
2 全ての電源喪失も長時間考えなくてもよいとあった。 → 東電はその指針に従って設備を作った。

これに不安を感じる必要はないはずです。何故ならこの二つの瑕疵がなかったら、今回のような事故は起こらないということなのですから。
政治家や国民は事故から学ぶことが必要と思います。学ぶ気持ちがない人は先端技術や原子力のような巨大技術を理解できないが故に、不必要な不安に陥るきらいがあります。
Posted by ユリウス at February 17, 2012 21:28
翔年 様

「いろんな意味で瑕疵があったことは、はっきり認めざるをえない。・・」→僭越ながら,小生は瑕疵ではないように信じています(津波が・・と思うからです).この発言は国民に原発そのものに大きな不安を与えると思います.施設のイージーミスを何故公表しないのか?そうすれば、脱原発の動きは極力減るように思えてなりません(小生は推進派ではありませんが).
「公的資金が投入されたら、東電は国の管理下(経営権は国)に置かれて当然です。」→賛成です!!
Posted by 奈良・東京のO at February 17, 2012 20:08