February 07, 2012

ブレア元英首相に学ぶ(2)  −官邸主導、最初の百日

 ブレア元英首相の「私の履歴書」から引用して学ぶことを続けます。
TonyBlair元英首相
 国家を効率的に機能させる能力は、20世紀半ばに必要とされたものとは違う。それは実行とプロジェクト管理を扱う民間部門のものに似ている。(中略)
 政策の意思決定、戦略の策定は圧倒的な速さで進めなければならない。

→ 迷走し(鳩)、プロジェクト管理ができず(管)、意思決定が圧倒的に遅い(鳩、管、どじょう)政権が続いています。一体改革を唱えていても、未だにその長期の全体像も、根拠も示せないのでは、物事を前に進めることはできません。


 官僚制度の問題は、物事を妨害することではなく惰性で続けることだ。官僚は既得権益に屈服し、現状維持か、物事を管理するのに一番安全な方法に逃げ込む傾向があった。(中略)
 大きな課題に対し小さな思考しかできず、組織が跳躍を求められているときに、少しづつしか動かなかった。(中略)
 首相は大企業の最高経営責任者や会長のようになった。政策方針を固め、それに役所が従っているかを見極める裏付けデータを入手し、結果を測定しなければならないのである。

→ 農水省、厚労省、経産省などが目に浮かんできませんか? そうならないための政治主導であったはずなのですが、民主党の政治家にその力が無かったということなのでしょうか。
民主党だけでなく、自民党にも言えることですが、わが国の政治家には政策を遂行した後、結果の測定をし、それを次の政策につないでいくという知恵が決定的に欠けていますね。


 政権発足後の最初の百日は、驚くほど生産的だった。我々は声明に次ぐ声明を発表した。

→ ブレア政権の最初にやった仕事は時代にマッチしており素晴らしかったと思います。
1 私立校への国の補助金廃止 ← みさかいなく増やしたのが民主党
2 イングランド銀行の政府からの独立  ← 正しい選択
3 欧州社会憲章に参加 ← 孤立はありえない
4 ロンドンに市長を置く ← これ、翔年には正邪の判断はできませんが、恐らく改革なのでしょう。
 このような政策は従来の労働党の政策とは違いますね。バラマキではなく、自立を促す、機会を与える代わりにそれに伴う責任も求める、という政治哲学に基づいた政策でした。


 その後、宗教と領土紛争が交じった憎悪の歴史が綴られてきた北アイルランド問題をブレアは10年かけて解決したのです。これはいくら賞賛してもしすぎることは無い夢のような成果だと言わねばなりません。

 この問題に対するブレアの原則
 「北アイルランド住民の多数が望めば南との統合はあり得る。だがそれまでは北アイルランドは英国の一部にとどまる。北アイルランドに全住民を代表する政府ができれば、カトリック系過激組織アイルランド共和軍(IRA)は戦闘をやめる」
 私は交渉をすべて自分で取り仕切ろうと決心した。(中略)
 解決までさらに9年を要した。その1年1年が苦難に満ち失敗を認めざるを得ないところまでたびたびいった。だが我々は進み続けた。
 歴史的な日は私の首相退任直前の2007年5月8日にやってきた。北アイルランドに新たな行政府ができた。首相はプロテスタント系、副首相はカトリック系。(中略)
 夢ではないかと思った。互いを殺したがっていた者同士が、今やともに働きたいと思っていたのだ。

→ ブレアがいたからこそ遂げられた和平協定だったと思います。これによって血塗られた紛争は一応治まったのでした。
(続く)


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この記事へのコメント
奈良・東京のO様

ストレステストのご見解、全くその通りと思います。
判断の基礎は今回の事故原因を追求して、そこから学んで、対策を講じることから始めなければなりません。
未だ、それがなされていません。
ストレステストはコンピュータによるシミュレーションで、気休めに過ぎません。気休めが言い過ぎというなら、参考データに過ぎず、最終的な判断の根拠にはなりえません。
判断できないリーダーが時間稼ぎしているようなものですね。

Posted by ユリウス at February 10, 2012 22:44
翔年 様

「首相は大企業の最高経営責任者や会長のようになった。政策方針を固め、それに役所が従っているかを見極める裏付けデータを入手し、結果を測定しなければならないのである。」→一例で申しわけありません.ある原発の
保安院はストレステスト云々で合格証を出しています(推進派).否定はしません.個人的見解ではストレステストなんか具体性が無く、今回の被害原因は他にあるように思っています.上記の論理から始めから外れている.菅さんは正確な方向性を示さなかった.まさに無駄なことに周りは精を出しているような気がして、本当のことを示せば、ずうっと、受給両者もっと楽な早道と思っています.


Posted by 奈良・東京のO at February 10, 2012 19:46
もっとも困難な政治課題に、ブレア自らが取り組んで、IRAの戦闘行為を止めさせただけでも大きな成果だと思います。
小泉元首相が北朝鮮の金正日と渉りあったことがちょっと似ていますね。
二人とも勇気あるリーダーでした。
Posted by ユリウス at February 08, 2012 09:45
翔年 様

感想の一部です.[官僚制度の問題は、物事を妨害することではなく惰性で続けることだ.官僚は既得権益に屈服し、現状維持か・・」→一般公務員は,正に身近に報酬の一部で娯楽にいそしむ.民間人にはそんな余裕がないように感じます.北アイルランドの「首相はプロテスタント系、副首相はカトリック系.」→宗教心の混在の中で,禁欲説と非禁欲説とに無駄は避けるのと金銭流転の景気回復の両面が活かされると思います.
 個人が納得できる幸せな人生に,とくに金銭俗物思考をバラマク政治主導は見苦しい.今始まったことではなく,負の遺産,幸福の錯覚に国民が認識しないとますます国は破滅方向に加速するように思えます.
 ブレア元英首相はロシアのPさんとはえらい違いや!
Posted by 奈良・東京のO at February 08, 2012 07:39