November 06, 2011

福島第一原発で今一番知りたいこと、肝心なこと −事実と原因分析

 翔年は原子力平和利用(発電を含む)賛成派である。今回のエントリーではその理由と原子力平和利用のシンボルともいえる原子力発電所が悔やみきれない大事故を起した原因を知るために、今なお伏せられている一番知りたいことについて書く。なぜなら、ここが政府から明らかにされない限り、原発を推進するにしろ、脱原発を目指すにしろ、科学的な根拠をもたない判断になるからである。


「原子力平和利用推進に賛成する根拠」
 振り返ってみると翔年の人生は原子力平和利用の歩みとほぼ重なっている。
1 1945年: 第二次世界大戦敗北後、我が国は連合国から原子力に関する研究が全面的に禁止された。
→ 敗戦国の悲哀、エネルギー資源の無い国故、将来展望が描けない辛さ。

2 1952年4月: 連合国と我が国との平和条約 (サンフランシスコ講和条約) が発効したため、原子力研究は解禁された。
→ 資源の無い小国にやっと光が差し込んできた。

3 1955年: 原子力基本法が成立。その心は、機密をなくしてすべての情報を「公開」すること、軍事機密が日本に入るのを防ぐため外国人に依存しない「自主」を貫くこと、政府や産業界などの独占的選考を防ぐ「民主」的であること、この三原則だった。
→ 今でもこの三原則は大事であると信じる。守られていない現状が問題である。

4 1956年: 世界初の商用原子力発電所、イギリスのコルダーホール発電所が運転開始。
→ 新しいエネルギー時代の到来であった。

5 1956年6月: 日本原子力研究所(現・独立行政法人日本原子力研究開発機構)が特殊法人として設立され、研究所が茨城県東海村に設置された。
→ 大学は原子力工学がもてはやされ、電力業界では原子力の人材育成がはじまる。

6 1963年10月26日: 我が国で最初の原子力発電が行われた。東海村に建設された実験炉であるJPDRが初発電を行う。
→ これを記念して毎年10月26日は原子力の日となっている。

7 1970年: 9電力のトップをきって関西電力の美浜発電所一号機が運転開始。発電した電気は大阪の万博会場へ送られた。
→ 当時「原子の火」が点ると称された。我が国の輝かしい未来を約束すると国民は希望を抱いた。


 発電に限定して原子力平和利用の歴史を振り返ると我が国は着実に原子力の技術力を高めてきたことがわかる。ただし、物には二面がある例え通り、平和利用とはいえ、原子力利用には負の部分が必ずあり、国内では絶えず推進派と反対派の対立があった。当時、政党左派の反対派はイデオロギー闘争をしかけ、お世辞にも科学的な理論闘争とはいえない戦いであった。翔年と同世代の方は感慨深いものがあるに違いない。

 上に概観した平和利用の膨大な技術とノウハウを、事故の原因も分析しないうちに、全て捨てようとしたのが元総理の菅直人だった。翔年は判断をするには徹底的な原因究明が先であるべきと信じるが故に、現在のところ、脱原発の風潮に真っ向から反対する。


「今一番知りたいこと」
 11月1日に東電は2号機の格納容器内から半減期の短いキセノン133と135が微量に検出されたと発表した。これは燃料が再臨海にに至ったのではないかとの疑念を抱かせる事態である。
ところが、3日、検出されたキセノンが極微量なことなどから、東電は核分裂反応が連鎖的に進む臨界は起きていないと結論づけた。
 原子炉内では、運転時に生成した放射性物質キュリウムが自然に核分裂する「自発核分裂」が散発的に起きており、極微量のキセノンはキュリウムの分裂で説明できると発表した。一方、経済産業省原子力安全・保安院は「局所的な臨界の可能性は否定できない」との見方を変えておらず、東電から分析結果の報告を受け、改めて評価するらしい。
→ よく事実を吟味して、正しい判断を発表して欲もらいたい。判断が覆ってはならないし、両者の見解が一致することがより望ましい。

 翔年はメルトダウンした燃料について次のようなことをもっともっと知りたい。
1 メルトダウンした燃料は現在何処にあるのか? 格納容器の底なのか? 底が抜けているとしたら、何処にとどまっているのか? 原子炉建屋内にとどまっている保証はあるのか?

2 メルトダウンした燃料はドロドロに溶けたものが、水で冷やされ塊になっていると思われるが、大きさはどのぐらいか?
 
3 塊が大きいとすれば、外部から水で冷却しても中心部にはその効果が十分及ばないはず。計算では中心部の温度はどの程度と推定しているのか?

4 もし、塊が相当大きいのならホウ酸の注入など、単なる気休めに過ぎないのではないか?(中性子の減速に何の効果も生まないはず)

5 今後これ以上放射性物質が空気中や地下水や海水中に漏れ出すおそれはないのか? あるならどの程度か? その対策は打っているのか?
→ これは国際的にも大きな関心事である。

6 キュリウムが自然に核分裂する「自発核分裂」が散発的に置きているというが、その根拠を詳しく説明すべき。
→ 翔年はこれは東電に随分都合のよい理屈に見える。

7 原子力建屋の中へは現在人間は何処まで入れる状態なのか? 近づくことの出来ない場所は発電所内のどこに存在するのか。建屋内と敷地内の放射線量を等高線のように平面上に示して明らかにし、公開されたい。

8 東京電力と政府の発表はメルトダウンにしろ、高濃度放射性区域の存在にしろ、今回のキセノン133と135の発表にしろ、情報が小出しで全体を見通した発表がなされない。意図的か意図的でないかは分らないが、もっと原子力発電所の全体的状況の把握ができるような発表の仕方にすべき。
→ 現状は原子力基本法の「公開」の原則に反しているといわざるを得ない。

9 過去においても、今回の大地震によっても、全ての原発が一旦は正常に停止(スクラムダウン)している。その後の津波による被害によって事故に差が生じたと思われるが、我が国の発電所別、号機別に全てのサイトの状況が知りたい。
→ 技術力のレベルが把握できる。立地条件や号機の原子炉タイプの差異から、学ぶべきことがらがあるはずである。

10 東電はBWR(沸騰水型原子炉)のマーク機▲沺璽供△修硫良型等の差異、さらに政府はBWR(加圧水型原子炉)とPWR型の差異(優劣)について、技術的にキチンと評価して国民の前に示すべきである。
→ 十把ひとからげに「脱原発」を唱えるほど馬鹿げたことはない。冷静な考察と評価は最低限必要であろう。それを怠って短絡的な判断を下すとしたら、必ずや後世に禍根を残す。



 現状で福島原発の状況を技術的に説明してくれる資料は大前研一氏のグループがまとめた「福島第一原子力発電所事故から何を学ぶか」(全186ページの報告書PDFファイル)に優るものはない。翔年は必ずしも、この見解に全て同意するものではないが、関心のあるかたは是非お読み下さい。 多くの疑問が解消できることを請け負います。

 上に述べたような技術的考察を全て終えてから、政府は初めて将来の基本的なエネルギー政策を出すべきであろう。地震国の我が国は世界に先駆けてこれらの作業を冷静沈着におこない、真摯な反省を込めた報告書を提出すれば、原発に対する世界中の不安を和らげ、将来に対するエネルギー政策の正しい方向性を導き出す手掛かりを提供できることは間違いない。それはとりもなおさず、我が国の技術力と社会の民度の高さを、改めて世界に知らしめることになるだろう。

 このエントリーの続きは全ての原発に対する事実が包括的に発表された後に、書きたいと思う。それは当然、我が国のエネルギー政策の中に原子力発電を如何に位置づけるかを検討し、冷静に結論を引き出す試みになるはずである。


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この記事へのコメント
奈良・東京のOさま

原子力の技術は学べば学ぶほど難しく、話しを聞けば聞くほど恐い話がいくらでも出てきます。
もっと恐ろしいのは、現在核保有国は9カ国(イランは含まない)、彼らは敵対国に照準を合わせた核弾頭を合計で23,375個(推定)持っています。
このような敵国の破壊目的の核兵器の危険の実態は知ろうともしないで、平和利用を目的とした原子力発電所を無くすことだけに大声をあげ、恐い恐いと叫んでいる人たちが急に増えていますね。思考に歪がありますね。
翔年は危険なものが好きな訳ではありませんが、できるだけ思考には整合性を持たせたいと常々思っています。

小型水力発電所、いいですね。設計図が見たいですね。是非実現させてください。
小生は9.984kWの太陽光発電所をいきいき塾に造ろうとしています。国の補助金が第3時補正予算の国会通過待ちでストップしているので、今着工が出来ない状態にあります。(これも政治が経済活動の足をひっぱっている例です)
補正予算の関連財源法案が成立すれば直ぐにかかれる状態で待機していますので、新年早々には発電開始ができるでしょう。楽しみです。
Posted by ユリウス at November 10, 2011 22:06
推進・反対の選択の難しさ.超専門家の冷遇なのか,原子力所のこの集団は
教授にはなれない助教の高齢者,反対論の正論は学術論文に採用されないように思えます.学識者の閥は現体制をなんら批判できない.これに変わる新エネルギーは電力会社の一部は取り組んでいるようですが.のんきな非専門家の小生は,来月長野県の水車発電の家内工業の方にお会いしに行く予定です.小型水車(直径5cm)の製造を依頼しています.今大手家電が山の渓流から水を引く発電機を販売していますが場所が限られ,蓄電量も少ない.
地下水の流れのタイムラグを考慮して,豆電球の明かりから始めたいと思っています.
Posted by 奈良・東京のO at November 10, 2011 10:14