October 19, 2010

語源の快楽(25) −ginkgo nut(銀杏=ギンナン)

ginkgo001銀杏2


 このあいだ、新御堂筋の曽根崎東交差点付近を歩いている時、たくさんの銀杏(ギンナン)が落ちているのを見つけた。臭い臭いのせいか、道行く人たちは誰も拾うとしない。焼いて茶碗蒸しに入れたら旨いんだけど……。

 さて、その銀杏。雌雄の別のある銀杏(イチョウ)の木の雌株になる実であることは広く知られているが、翔年は最近この英語名(ginkgo)がある間違いからつけられたことを知った。

 ことの起こりはドイツ人博物学者のケンペルにまで遡らねばならない。1712年、彼の著書に"Ginkjo,Itsujo"と書いたものが、誤植されてGinkgoとなった。それを植物分類学者のリンネが誤植に気づかずにそののままGinkgoを引用して、属名をGinkgoとしてしまったのだという。本来なら、誤植などは訂正すべきだと思うが、一般に広まってしまったので、そのままになっているらしい。その後、ゲーテが「西東詩集」でGinkgoの名を使っているというから、いったん間違いが広まると取り返しがつかないのは、何も銀杏だけにかぎらない。

 日本語では銀杏(イチョウ)も銀杏(ギンナン)も漢字で書くと同じなのも、ややこしくて叶わない。翔年はイチョウのもう一つの漢字「公孫樹」の方が、イチョウの大きな木がイメージできて好きだ。


もうすこし、公孫樹にちなむあれこれ。

1 イチョウ(銀杏、公孫樹、学名: Ginkgo biloba)は、裸子植物の一種。裸子植物門イチョウ綱の中で唯一の現存している種である。

2 公孫樹の実は「ぎんなん」と呼ばれるが、これは「銀杏」の唐音読み「ぎん・あん」が転訛したもの。

3 種子植物であるイチョウに精子があることを世界で初めて発見したのは、日本人の平瀬作五郎(東京大学)で、1896年のことである。
「人セム」http://art-random.main.jp/samescale/068-2.html#h-sakugoroに詳しい記述あり。

4 イチョウにはさまざまな有効性があるらしい。認知症の改善、記憶改善、脳機能障害の改善、末梢循環障害の改善等。
 逆にアレルギー反応などの副作用の事例も多く報告されているからご注意あれ。

5 フランク永井の歌の一節、「公園の手品師、老いたピエロ」は懐かしい。

6 銀杏の俳句

銀杏の落ちるを待ちて拾ひけり   菊池まさを

ぎんなん墜つ深夜仁王の吠えおらん   塩野谷仁



※日本の鳥にも同じような名前の間違いがある。これにはオランダ人のテミングと日本にいたシーボルトの間で間違いが起こった。コマドリとアカヒゲの学名は今も間違ったままであるという。

コマドリ= Erithacus akahige
アカヒゲ= Erithacus komadori
コマドリ姉妹をアカヒゲ姉妹と呼んだら、もうおしまい。
荒俣宏著「想像力の地球旅行」によれば、この間違いはシーボルトが日本から送った標本のラベルが入れ違っていたために起こったという。オランダのライデン博物館の初代館長は日本に来たこともないし、本物を見たこともない書斎人だったから無理もなかった。

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