清水市代女流王将敗れる! −あから2010の圧勝
そうとうな盛り上がりをみせた「清水市代女流王将vsあから2010」の歴史的な対戦は
後手番のあから2010が86手で勝ちました。
翔年は終局図を見ましたが、後手の美濃囲いは手つかずで、コンピュータの圧勝は歴然としてました。棋譜と途中の形勢判断など詳しいことは、翔年には荷が重過ぎますので、坂田大吉氏の『将棋のブログ(棋書とアマの本音)』
http://shogikisho.blog54.fc2.com/blog-entry-401.html の解説にゆだねたいと思います。
情報処理学会と日本将棋連盟の最初の約束ではコンピュータが勝てば次はもっと棋力の上の男性棋士が対戦相手に選ばれることになっていた。
なのに将棋連盟の米長会長は「彼女(清水市代)のリベンジがフェアだと思う。清水さん、いまは熱くなっている。機会があれば、研鑽を積んで。でも時間があれば・・・」と言ったらしい。これは聞きようによっては男らしくない嫌な響きを持つ発言だ。
それにこの発言は米長会長がコンピュータの学習能力の高さを理解されていないこをさらけ出している。清水さんが研鑽を積んで今より技量を向上させている間も、コンピュータは着々と情報を収集し、将棋理論を学習し続け、驚異的な棋力アップを図るに違いありません。清水女流王将にコンピュータと再戦させようとすることはおやめになった方がいいと申し上げたい。それよりも、コンピュータの棋力をよく分析されて、次は将棋連盟として勝てる棋士をぶつけられることを強く希望する。あわせて将棋連盟が次回の対局をネットでライブ中継することもお願いしたい。
情報処理学会の「トッププロ棋士に勝つためのコンピュータ将棋プロジェクト」が相手不足で頓挫させられないことを切に祈る。
今までの
将棋ソフトと人間の対戦記録をまとめておきます。
1997年 NHKの番組にて 〇 島朗八段 vs × 柿木将棋(ソフト)
1997年 レーティング大会B級(持ち時間30分、秒読み30秒)にコンピュータ将棋が出場
結果:「金沢将棋」は3戦全勝、「YSS」は4勝1敗(アマチュア二段は十分あると評価された)
2005年 第18回アマ竜王戦に「激指」が出場
結果: ベスト16(アマのトップに近づいた)
2008年 あるプロ棋士は将棋ソフトはアマトップと遜色ない実力を認めた。
2010年 〇 あから2010 vs × 清水市代女流王将
ここでどうしても言っておきたいことがある。翔年は重量挙げの選手が起重機と対戦して負けても、マラソン選手が車と競争して負けても、ソロバンや暗算の名手が高級電卓にたとえ負けようとも、残念には思わない。
知的でかつ創造的な思考だからと言って、人間がいつも優れているとは限らない。
今後人間がマシーンに勝てない分野がますます増えてくるだろうと確信している。
Posted by mtmt0414 at 23:15│
Comments(8)│
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STakehara様
面白いサイトのご紹介、ありがとうございました。
将棋に興味をお持ちの方は訪問されたら、得られるものは多いと思いました。
翔年は表現として、「あから2010の人間らしさ、コンピューターらしさ」という表現にちょっとひっかかりましたけど。
なぜなら、盤上の指し手は「よい手」か「悪い手」で判断されるべきと考えるからです。
先日亡くなられた囲碁界最強の棋士、故坂田栄男九段には妙手、奇手、鬼手と呼ばれる着手が多くあります。彼は普通の人間には及びも着かない発想の手を打ったから、強かったのだと思います。
同じように、コンピューターには人間が思いつかないような素晴らしい着手を発見してもらいたいと念願します。
ユリウスさま、
この勝負の解説しているサイトがありました。 http://trendy.nikkeibp.co.jp/article/pickup/20101019/1033388/
ちょっと興味深いですよ。
阪田大吉 さま
悪意があるなんて、そんなことは露思っていません。
小生は思ったことは直言する主義なので、お気に障ったならあやまります。論点を明快に書くときつく感じとられるようですね。
ごめんなさい。
ネット上にはいろんな方がいて、いろんなソフトがあるのは囲碁も将棋界とほぼ同じです。ですけど、ゲームはいろんな愉しみ方があるので、小生はそれでよしとしています。
ただ、お言葉ですが、プロより強いソフトがでてくることは「快挙」とは思いますが、「弊害」とはどうしても考えられません。
AI(人工知能)の進歩に水をさす考え方を小生はとりません。
科学や技術進歩に対する考え方、感じ方も人それぞれなんでしょうね、きっと。
このサイトは特別のジャンルは決めておりません。ですから将棋ファンと関係ない場所ではありませんし、発言が不適切なんてことは絶対ありません。
お詫びはご無用にねがいます。
善意で書いたつもりだったのですが・・。
上に書いたのゴミみたいな文章でも、実は何時間も考えて書きました。
そこに悪意なんてあるはずもありません。
負けた側に立った時、初めてわかる真実もあると思います。
清水さんの件も、そんな単純なことではないのですが、説明しても、また誤解を生みそうですのでやめておきます。負けるとわかっていても、立たざるを得ない辛い立場もあるようです。
ネット将棋におきましては、もう何年も前から、たくさんの熱心な将棋ファンが、簡単に無料でダウンロードできる将棋ソフトのおかげでどえらい迷惑を被っています。
もし、ユリウスさんが「熱心な」囲碁ファンならば、ぼくの言っている言葉の意味が10年か15年先にわかるかもしれません。
嫌味とかではなく、囲碁ソフトの方がプロよりも強くならなければ、そこに出て来る弊害はわかることはできないようです。そういえば私も、ディープブルーが登場した時、チェスファンの心理を理解することは出来ていませんでした。
将棋ファンとは関係のない場所で、私の発言が不適切だったことをお詫び致します。
阪田大吉 さま
「コンピュータシステムと戦う」という意味を十分理解していれば、「くせの研究をしようがない」とか「スタッフ達大勢でたった一人の女性棋士に…」とか、戦いが終わってからでるはずのない議論だと思います。
そんなことは最初から分っていたことで、それを全て承知の上で清水さんは挑戦を受けられたものと小生は理解しています。だから偉い、男気がある、と世間から賞賛されたのでした。
将棋だけを見ている視野では「人間の頭では絶対に理解できないような指し手を作り出す代物が、人間に嫌がらせをする以外、なんの役に立つのか…」というような議論になるのですね。このご意見には正直驚きました。反対に小生はそういう指し手を着想できたソフトに、そういうシステムを作り上げたチームに拍手をおくりたいと思っています。
いずれ、AI(人工知能)の技術向上に、このようなプロジェクトは貢献することを疑いません。科学技術とはそういうものではないでしょうか?
ある物理学者(R.Feynman)はこう言っています。
Science is a lot like sex.(科学はセックスによく似ている)
Sometimes something useful comes of it,(時に、それから有益なものが生まれる)
but that's not the reason we're doing it.(が、われわれはそのためにしているのではない)
将棋を楽しまれている方にはきつい言い方になっているのは重々承知の上で、それでも言わざるを得ません。
歴史的な戦いが終わった後で、後味の悪い後ろ向きの議論はしたくないと。
ユリウスさま
ブログまで紹介して頂き、ありがとうございます^^
リベンジはもう一回怪我するだけですね。
リベンジすることがフェアかどうかは疑問ですが、今回の対局は冷静に考えるとアンフェアだったとは思っています。
清水さんの情報(棋譜など)はほとんど全部漏れているのに対し、コンピュータ側のクセを研究しようがないからです。(1つの思考ルーチンならば、少しは研究のやりようがあったかもしれない。)
4手目△4四角なんていうのが合議制で選ばれたというのは、清水さん対策をチーム全体で事前に準備していた証です。
また、報道では、コンピュータが清水さんに勝ったことになっていますが、実際は、コンピュータの開発スタッフ達大勢で、たった一人の女性棋士に勝った、それが真相だと思っています。
それから、対局をネットでライブ中継すべき件も、ユリウスさんが指摘されている通りです。第1局に清水さんをもってきたのは、女流棋界の宣伝の意味があったはずなのに(推測)、宣伝を有料などと言って閉鎖的にやったのもなかなかトンマな話です。
最後に余談ですが、チェスの世界チャンピョンが機械に負けた時は、局面数の数が桁違いであることを理由に、将棋界ではプロ棋士に勝てる日なんて永久に来ないみたいな勢いで楽観視されていました^^(慌ててもどうしようもないことではありますが^^;)将棋の名人が負ける日が来たら、次はまちがいなく(将棋よりも局面数が桁違いに多い)囲碁がターゲットになると思います。しかし、この先、名人より遥かに強いコンピュータが出来上がったとして、人間の頭では絶対に理解できないような指し手を作り出す代物が、人間に嫌がらせをする以外、なんの役に立つのかとも思ったりしている次第です。
長文、失礼いたしました。
STakeharaさま
はい、凄いレヴェルにきてますね。
コンピュータは学習能力も凄いので、小生は清水さんに再戦させることは止めた方がいいと思っています。
それよりも、勝てる棋士を対戦させることの方が重要でしょう。そうでないと、コンピュータの棋力が向上しませんから。
ランチ、ありがとうございます。
サンタバーバラでお会いできるのを楽しみにしています。
ユリウス様、
将棋界のソフトウェアは、すごいところまで、来ているのですね。全然知りませんでした。このレヴェルにきているなら、やはり、5番か7番勝負で、もう一度の対戦をしていただきたいです。
では、来年の夏は、お好きなものをどうぞ。