March 22, 2010

染めいだす人はなけれど…

染めいだす人はなけれど春来れば花は紅柳は緑
→ この歌の作者は知らない。でも春になるといつも思い出す。単純にうれしいという気分ではない。自然の変わらぬ営みを思う。


嵐にあう前の枝垂れ梅(21日) By iphone
枝垂れ梅と水仙_1

 昨日の「いきいき塾」の朝、枝垂れ梅はまだ咲いていたのに、昨夜来の嵐でほとんどの花が吹き飛ばされて今日は見るも無残な姿に変わっていた。「花に嵐の例えもあるぞ」という如し。自然の掟は厳しい。

梅一枝つらぬく闇に雨はげし    水原秋櫻子

君ならで誰にか見せむ梅の花色をも香をもしる人ぞしる   紀友則
→ やっぱり花には香があるのがいい。微(カス)かなのをよしとする。



 ところが梅の木の下や柿木の下やら、駐車場の隅など、庭のいたるところに野生化して生えている水仙は今を盛りと咲き誇っている。昨夜の嵐でも一本も倒れることなくしゃんとしていたのにはびっくりした。


庭のあちこちに咲く水仙
柿の木下の水仙IMG_90水仙_1
→ 野生化しており、手入れをしなくてもこの程度には咲く。



黄水仙みな横向くはよそよそし 長谷川照子
→ 水仙はなよなよしたところがなく、しゃんとしたところ、凛としたところががいい。厳しい寒さにも耐えて雪の中でも咲く花。別名を「雪中華」というもむべなるかな。

水仙は白妙ごろもよそほへど恋人持たず香のみを焚く  与謝野晶子
→ 塾に来ていた義姉や娘も水仙を切花にして持って帰ったが、車に入れた途端、芳香が車内に満ちたという。

持ち帰った水仙
居間の水仙


楽しみは庭にうゑたる春秋の花のさかりにあへる時々   橘曙覧


「花に嵐のたとえもあるぞ」の出所がわかりました。関心のある方はどうぞ!



追記(3月22日)

「花に嵐のたとえもあるぞ」の作者は井伏鱒二でした。

この杯を受けてくれ
どうぞなみなみ注がしておくれ
花に嵐のたとえもあるぞ
さよならだけが人生だ

ネットで調べたら、これは中国の五言絶句の意訳らしい。


勘酒(酒を勧む) 于 武陵(う ぶりょう)作

勧君金屈巵 (君に勧む金屈巵<きんくつし>)
満酌不須辞 (満酌辞するを須<もち>いず)
花發多風雨 (花發<ひら>けば風雨多く)
人生足別離 (人生別離足る)


この記事へのトラックバックURL