May 31, 2008

P氏(アメリカ人)の見た日本

 2年前の「US碁コングレス」の実行委員長だったP氏が、仲間数人とノースキャロライナ州から突然ニッポンにやってきた。突然と言っても、サクラメントに在住のS氏(日本人)から、来日直前に打診があって、囲碁普及に貢献してくれている人だから二つ返事で引き受けたのだけど。

ピーター
 それで彼は仲間とわかれて、単身、25日から29日まで塾に泊まって、朝早くから、京都、奈良、大阪に出かけてはニッポンの風俗や文化財や風景を写真に収めていた。塾に4日も宿泊しておりながら、翔年とは3局しか対局しなかったちょっと変わったお客さんだった。実は彼は写真家でHPはここ

 初めて訪日したP氏は、見るもの聞くものがめずらしいらしく、彼のレンズを通してみたニッポンやチョッとした質問にも、彼の驚きが感じられて面白かった。鋭い観察もあったので、忘れないうちに彼の語録として記しておきたい。

1 「カベ? カベは? 壁がない!」(朝、目を覚ました時の第一声) 
 これは若干の説明を要する。
 P氏は25日の夜遅くに塾についた。そのときは外は真っ暗、当然、濡れ縁の外側の雨戸は閉まっている状態。かれは母屋の濡れ縁を廊下と思って歩いて離れに行き、そこで夢を結んだと思う。つまり、かれは家の内側だけを見て眠りについたという訳。
 翌朝、翔年はP氏より少し早起きして、雨戸は勿論、玄関の門等もすべて開け放って、初夏の風が室内に流れこむようにしておいた。勿論、目覚めて離れから母屋へ渡ってくる彼が庭の新緑で心地よく眼を覚ましてくれることも期待して。
 驚かすつもりはなくても、人は驚くことがある。
”Wall …、Wall…”。最初何を言っているのか分からなかったが、彼は雨戸をカベと思いそう呼んでいたのだった。それはそうだろう。一夜のうちに壁がなくなれば誰だって驚く。
 日本人は自然(外)と人間の住まい(内)とをセパレイトしない。伝統的な家屋では人間と自然が一体なんだと説明しておいた。


2 「スタートレックの世界みたい」
 東京ではどこもかしこも自動ドアなのに驚いたという。それから回転寿司も。体験して”Star Trek”(宇宙大作戦)見たいに感じたそうだ。

3 「モダーンと伝統の融合」
 撮ってきた凄い数の写真を見せてもらったら、彼の興味は「モダーンと伝統の融合」にあるらしかった。これはよくわかる。京都の表通りと裏通りの表情の違い等を、彼のカメラアイが色々な角度からとらえていた。
ピーター2

4 ドリンク・コーナーの写真
 大阪城公園で何の変哲もない自動販売機のコーナーの写真を熱心に撮っていたので不思議に思った。近寄って尋ねると、彼の指差す先には "DORINK CORNER" とあった。正しくは”DRINK CORNER"のはず。日本人は「ドゥリンク」ではなく、「ドリンク」と「オ」の母音を入れて発音するんだと翔年が言い訳するはめになった。

5 「OUT INは何故英語で表示するの?」
 車に乗せて、何回か駐車場に入った。路面に「OUT IN」と書いてあるのを見て、「日本人の駐車場なのに、何故英語をつかうのか」と質問された。「知らん」と答えるしかなかった。翔年の嫌いな日本文化の薄っぺらな一端を鋭く指摘された。
 明治以来、我々日本人は外国の文物を必死になって取り込んできた。その過程で外国の物なら何でも良しとする、いわば外国崇拝のような薄っぺらな文化も作ってしまった。その名残りが「入り口、出口」と書けばいいところにIN OUTと書き、自販機の飲料水売り場に英語もどきの表現を格好良いとして使う。そして今でも、そういう考え方が無意識のうちにジャパニーズ・イングリッシュとしてはびこり、それを我々は恥ずかしげもなく使っている。

6 「チャーム(お守り)?」
 電車内で大抵の女性がバッグや携帯電話に小さな飾りをつけているのを見て、「お守りか?」といぶかって質問した。「お守りもあるが、多分飾りだろう」と説明しておいたが、果たして彼は日本女性は信心深いととったか、あるいは子供っぽいととったか。

ピーターと食事 

7 「日本料理はクラシック」
 日本料理はどうかと聞くと「日本食は繊細で美しくておいしくてクラシック、アメリカのはジャズ?」と言ったようだった。ジャズとはっきり言った訳でなく、ジャズの中の何かの種類を言ったんだと思うがよく聞き取れなかった。


8 自分の写った写真は撮らない
 大阪城公園で翔年は2,3枚P氏に写真を撮ってもらった。お返しに彼にとってあげるといっても、決して自分は被写体にならなかった。彼はカメラマン、プロは自分のカメラのレンズを向けられることはしないということなのだろうか。
 翔年のカメラのスナップには気さくに納まったのに・・・。

9 「日本は平和で安全」
 いきいき塾は田舎なので戸締りは厳重でない。翔年の留守中も自由に出入りできるように、裏口の小さな南京錠のキーを渡した。南京錠はペンチで引きちぎれるようなしろもの、木でできた雨戸だって、ガラス障子だって、叩き壊そうと思えば簡単。彼はそんな田舎屋に一人で夜を過ごし、平和と安全を実感したのだろう。「ここは田舎だからで、日本国中そうではない」といいたくなかったが、よけいな説明を加えてしまった。

10 「シャワーは朝」
着いた夜にシャワーをすすめたところ、「アメリカ人は朝、ヨーロッパ人は夜」と言って、旅装を解いた夜もシャワーには入らなかった。風呂で疲れをとる我々とは違う。

11「電車は正確無比」、「電車内が静か」「ニコンは素晴らしいカメラ」、「日本人は礼儀正しく親切」などなど。
これは大抵の外人が日本の印象として言う。

 P氏はBlogに日本滞在記を書きつつある。ここです。
 ひょっとして、翔年も彼の観察の対象になっているかもしれない。その前に急いでこれをアップしておこう。
先手必勝!



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この記事へのコメント
Shigeru Takehara 様

Pさんをご存知だったのですね。
彼は初来日でしたが、「何でも見てやろう」精神で、いろいろと楽しんだみたいです。
サクラメントさんも今日本にきています。2週間ぐらい滞在されるみたいです。
あなたもちょっと里心を刺激されたのではありませんか?

Posted by ユリウス at June 01, 2008 18:55
ユリウス様、

Pさんとはあの方だったのですか。Guo Juan先生の講習には、いらっしゃいませんでしたが、ランキャスターでは、いらっしゃいましたね。お話をしたことはありませんが、覚えておりました。彼のHPにいって、ユリウス様が観察の対象かどうか見てみました。素直に、ユリウス様に感謝されてましたね。
Posted by Shigeru Takehara at June 01, 2008 04:19
サクラメントさま

あんまり褒められると困ります。

これは個人と言うより、囲碁という遊びに他にない「コミュニケーション力」が備わっているからではないでしょうか?

囲碁を知らなければ、「ワン・ワード・カンバセーション」の英語でアメリカへ行こうとは思いませんし、行かなければ今回のP氏との出会いも生まれなかったと思います。勿論、サクラメントさんの遠隔サポートがあったから実現したことですが、あなたとの出会いも、さかのぼればUS碁コングレスの取り持つ縁ですもの。
囲碁にはそういう力が確かにありますね。

いよいよ京都にいらっしゃったのですね。
ご連絡をお待ちします。




Posted by ユリウス at May 31, 2008 23:35
お世話様でした。
貴殿の日米友好への貢献度は誰にも勝るとも劣らないと思います。
彼も普通の訪日旅行では体験できない経験をしたと思います。
親日のアメリカ人がまた一人増えました。
小生も貴殿のメールを見ているうちに京都のとりこになってしまいました。
今週にもお会いできるのでは…、楽しみにしています。
Posted by サクラメント at May 31, 2008 21:51