February 18, 2008

世界と日本の囲碁界

 「囲碁データベース」さんが、昨年世界戦で活躍した棋士のランキングを作ってくださいました。それを見ながら世界の囲碁界と日本の囲碁界を考えてみたい。

 まず、ランキング表をご覧ください。(一部加筆しました)各国からそれぞれ選ばれて、昨年世界戦に出場し、3勝以上を上げたトップランクの棋士21名です。
 トップの1位〜3位までは韓国棋士、それに中国棋士が続いています。


2007年世界戦勝ち星ランキング(1月1日〜12月31日、対象:3勝以上の棋士)
順位   棋士名     成績    勝率    記録
1位  李世石九段(韓)   14勝3敗  .824  第3回トヨタ&デンソー杯優勝、第19回TVアジア杯優勝

2位  朴永訓九段(韓)  12勝4敗  .750  第20回富士通杯優勝
3位  李昌鎬九段(韓)  10勝5敗  .667  第11回三星火災杯準優勝、第3回中環杯優勝
4位  胡耀宇八段(中)  9勝6敗   .600  第11回LG杯準優勝
5位  古力九段(中)   7勝5敗   .583  第6回春蘭杯優勝

6位  韓尚勲初段(韓)  6勝1敗   .857
6位  常昊九段(中)   6勝5敗   .545  第11回三星火災杯優勝、第6回春蘭杯準優勝
6位  張栩九段(日)   6勝6敗   .500  第3回トヨタ&デンソー杯準優勝 → 日本棋院(台湾出身)

9位  李文真五段(韓)  5勝0敗   1.000
9位  朴魂枯暫(韓)  5勝2敗   .714
9位  朴正祥九段(韓)  5勝3敗   .625
9位  王檄九段(中)   5勝3敗   .625

13位  依田紀基九段(日) 4勝3敗   .571 →日本棋院
13位  睦鎮碩九段(韓)  4勝3敗   .571

15位  内迺偉九段(韓)   3勝0敗    1.000 → 世界最強の女性です
15位  温昭珍三段(韓)   3勝1敗    .750
15位  鄭岩二段(中)    3勝2敗   .600
15位  黄奕中六段(中)   3勝2敗   .600
15位  周俊勲九段(台湾)  3勝4敗   .429  第11回LG杯優勝
15位  河野臨九段(日)   3勝4敗 .429  → 日本棋院
15位  趙漢乗九段(韓)   3勝6敗 .333


 上のリストから棋士を国別に見て見ましょう。(同一国のはずなのに、中国と台湾は囲碁の世界では分けて扱われているのでそれに従っています)
韓国  11(52.4%)名
中国   6(28.6%)
日本   3(14.3%)
台湾   1(4,8%)

 一見して、韓国の大優勢、二位は中国で、わが国は3位に甘んじています。一昔前は世界をリードしていた囲碁大国でしたが、最近の現状はこのリストの通りです。日頃NHKTV対局や新聞等でお目にかかる棋士は世界戦ではほとんど勝てない存在のプロなのです。この傾向はここ数年変わりません。しいて言えば中国の若い人が勢いを増したくらい。

知的格闘技(写真はAMERICAN GO E-JOURNAL(Volume 9, #8)より借用)
熊と狐の対局

 我が国の囲碁をこのように衰退させた原因は何か? 色々な議論はあり、文化や社会構造や育成方法や国民性をもって論じる方もいますが、これは結果から見ての後付講釈であったり、不毛の水掛け論になったり、百家争鳴状態で、まだ結論は得られていません。
 そういう議論はやめて、ここでは上位三国の囲碁の制度を単純に比較してみたいと思います。


1 強さの基準(プロの場合)
囲碁は勝敗を争うゲームですから、強いものが勝ち、弱いものが負けるのですから、ランキングは簡単に作ることができます。囲碁ファンはどの棋士が一番強いのか、とか若手で上位に迫る勢いのある棋士は誰かなど、一目で分かるランキングを望んでいます。(テニスでも、ゴルフでも、相撲でも、ファン真理は同じと思います)

韓国:ランキング制をとっている。毎月末日に発表される韓国等級ランキングが現在の棋士の実力を正しく表していると考えられます。世界戦にはこのランキング上位者が出場権を与えられるよう最近なりました。

中国:ランキング制度は韓国よりも歴史は古い。以前から、このランキングの上位者が世界戦に出場できると定めていたので、どこよりも透明性は高い。

日本:段位制をとっているが、最高段位の九段が一番強いわけではないから、段は強さの基準とはいえない。では強い棋士は誰かと言えばタイトルフォルダーになろうが、タイトルは複数の棋士が分散して獲得しており、現在一番強い棋士は誰か、誰にも分からない。
 要するに、ファンは誰が強いか知りたいが、巧妙に分からない仕掛けになっている。これは戦後、新生日本棋院が発足してから、ほとんど改革らしい改革もなしに今日まで来ていることに起因する。また、国際戦に出場する棋士の選抜も、国内棋戦の方を優先しているので、ファンにとって、選抜方法は訳の分からないやり方ないなっている。


2 わが国のプロ組織
 制度の不備は統合したランキング制度がないことを示せば十分なのですが、これ以外に、わが国のプロ集団はいまだに一本化されていないという欠陥を持つ。
 日本棋院と関西棋院という二つの専門家集団があり、二つの棋院では棋士の昇段基準も違えば、対局数も、対戦相手も違い、勝数や勝率でさえ、所属が違えば比較することすらできない状態ですから、話にもなりません。

 一つの国に、プロ棋士を統括する組織もないありさまでは、不都合が多すぎる。外国から見たら何とも変な国に見える。時々、日本人からも「関西棋院とは何か?」という素朴な質問を受けることがあります。インターネット時代になっても、内部から改革の声は上らず、10年一日、沈滞したままであります。囲碁の仲良し倶楽部と呼びたいほどのぬるま湯プロ集団に見えます。
 当然のことではありますが、韓国、中国、台湾はいうに及ばず、ヨーロッパやアメリカなどプロ棋士制度があるなしに拘わらず、囲碁界を統括する組織を持っています。


3 アマチュアの強さの基準、尺度
 わが国は免状による段級制をとっているが、現実に5段より弱い6段がいるので強さの基準たり得ない。ハッキリいえば無茶苦茶、基準はあってないようなものです。(免状発行は棋院の資金源)

 韓国、中国、台湾も段級で強さを表示していますが、尺度としての精確度については詳しくはしりません。強さの基準としては曖昧さはあるように感じてます。

 そこへ行くとヨーロッパとアメリカはアマチュアも、ポイント制というキチンとした強さの基準が出来ています。ヨーロッパ全体、アメリカ全土にこのポイントは有効ですから、各地を旅してもすぐ好敵手が見つかります。極めて合理的なシステムで、すべてコンピューターで管理されているので信頼できます。
 ちなみに、小生はAGA(アメリカ囲碁協会)では4.9ポイントですから、強い四段という判定です。このため、「いきいき塾」に初対面の外国人を迎えた時、このランキングを参考にして、直ぐに正しいハンディキャップの下で、碁を楽しめます。


 何事にせよ、
1 シッカリした枠組みをつくって
2 キチンとしたルールの下で
3 正々堂々と競争できる
オープンで透明性の高い制度のあるところに、発展があると信じるものです。





この記事へのトラックバックURL

http://trackback.blogsys.jp/livedoor/mtmt0414/51408012
この記事へのコメント
 ユリウスさま
 
 これは驚いた。まさか・・・・・と言ったか感じである。
 Ned とは1977年に、3子局を2局打った棋譜が残っています。その内、1局は「宍粟の碁」に記載しています。
 それから3年後、彼は強くなって、アメリカのチャンピオンになった。

 再会が私の記憶が1年違っていたのかも知れません。
 それにしましても、私は Rating:6.56(六段)とは今まで知りませんでした。
 有り難うございました。
 
 高野圭介 
Posted by 高野圭介 at March 02, 2008 19:52
高野圭介さま

彼らのレイティングシステムは信頼できます。あなたの記録は今もチャンとありますから、よかったらAGAのHPでお確かめ下さい。
ID NO.:8181
name:kono,keisuke
Rating:6.56(六段)
記録された日付けは1996年8月28日となっています。

AGAの記録がどれほどキチンとしているかの好例だと思いましたので、公開情報のみ書かせていただきました。
ちなみに、小生のIDは7353です。

Posted by ユリウス at March 01, 2008 11:23
  アメリカ・アマ碁会のレイティング・システム

 アメリカの1981年度アマ・チャンピオン・Ned Phipps は1977以来の、私の親しい良き碁友である。
 1995年に、US碁コングレスに私が参加した時、彼に再会した。
 懐かしさいっぱいで、一局手合いに及んだ。
 彼は、この碁はレイテイングの碁だと言う。結局2局打って一勝一敗。その記録を彼のレイテイング票に私はサインした。
 私はAGA(アメリカ・碁・アソシエーション)の会員ではないが、会員並みの扱いであった。

                   高野圭介
Posted by 高野 at February 29, 2008 12:03
高野圭介さま

同感です。
アマチュアの場合はいろんな楽しみ方があると思います。
「打たないけれど見るだけ」という人もいて、何の問題もありませんもの。(スポーツファンはそういう人のほうが多いかも)
けれど、勝負を争うゲームですから、強さを表すキチンとした尺度はアマ界といえども、求めたら得られるようにすべきだと思っています。

どんな種類のスポーツやゲームであれ、勝負を争うプロの世界で、強さの尺度をもたないのは日本の囲碁界だけではないでしょうか?
Posted by ユリウス at February 29, 2008 10:18
さて、中国棋院のホームページにはプロ棋士全員のレイティングが表示されていて、ある一定の期間に、改訂されている。
 一方、日本のプロはそういった洗礼は受けないことになっている。
「武士道とは死ぬことと覚えたり」つまり、「棋士たるもの、盤上を戦場と覚えたり」かと思っていたら、全く違っていた。
「プロ棋士」と言えば、アマが畏れを成す免罪符なのか?あるいは・・・今さら言及しないが。
 要は、プロ界が碁吉会的親睦というぬるま湯から脱却しない限り盤上戦場は絵空事であろう。
                       高野圭介
 
Posted by 高野圭介 at February 29, 2008 05:30
          
レイティング・システム

 春日井市で囲碁のお世話をされている重見健一会長からの進言があった。
「一度、碁吉会でスイス方式の碁会をやりませんか?」と。
 私は、かねがねから碁吉会の在り方を融和第一と決めていたから、このような全員のランキングを決めるやり方は無理と、「すべてに序列を決めないで、碁に親しむ会たるべし」とテーゼを設けていた。
したがって、遂に折角の重見案は陽の目を見なかった。

                    高野圭介
Posted by 高野圭介 at February 29, 2008 05:28