June 04, 2007

過密社会から超過密社会へ −ある実験

 カール・セーガン、アン・ドルーヤン著「はるかなる記憶」に、こんなネズミの実験について述べた箇所がある。

はるかなる記憶

 心理学者ジョン・B・カルホーンの実験では、ネズミを一定の大きさの檻に入れ、それが一杯になるまで繁殖させた。個体の密度は極めて高くなるが、食物は全個体に十分いきわたるようにしてあった。

 何が起こったと思いますか? 下の引用部分を慎重に読んでいただきたい。

「個体数が増えると、異常な行動が目立ってきた。授乳中の母ネズミが子ネズミを拒絶したり、捨てたりするようになった。子ネズミは痩せ衰えて死んでしまう。食事は普通に与えられているのに、子ネズミの死体はよってたかってガツガツ貪られる。一匹のメスに兆した興奮や衝動は非情にも、他のメスから集団内のオスへと広がっていく。異常出産が増加し、多くのメスが出産時や、その直後の併発症で死ぬ。さらに込み合ってくると、自分や子供たちのために上手に巣をつくる習性や能力が失われる。風変わりな巣は素人の作品としか思えず、もはや役に立つはずもない。」

 また、心理学者はオスにこんな兆候を認めている。(四つのパターンがある)
1 攻撃的で優位なオス、「最も正常な状態」を保っているが、時に「凶暴」さを示す。
2 同性愛の傾向を強めるオス、性的関心を成獣のオスや雌雄の幼獣に向ける。第一のオスから執拗な攻撃を受ける。
3 ほとんど攻撃性を示さないオス。完全に社会性を失って、「夢遊病者にでもなったかのように集団内をうろつく」。
4 「探針」と呼ばれるオス。極めて活動的で性的関心が強く、両性愛や子供食いの傾向もある。


 ネズミとヒトは違うのを承知の上で、ヒトを都会に詰め込めばどういうことになるか予想してみよう。カール・セーガンの予想です。

「街中での喧騒や家庭内暴力児童虐待や遺棄、母子の死亡率の急上昇、強姦精神異常同性愛や過剰性欲、同性愛者への迫害、疎外、生きる目標や基盤の喪失・・・・。その中で、本来なら簡単にできるはずの作業が、だんだん出来なくなっていく。こうしたことは、確かに十分ありそうだ。」

 この本は10年前に翻訳出版されたもので、翔年の愛読書の一つですが、今読みかえしても、この箇所は十分衝撃的です。漠然とではありますが、都市の過密状態は問題だと思っていても、わが国は効果的な手を打っていません。それどころか、土地の高度利用などと言って、過密化を推し進める政策さえ採用している。満員電車の異常さは解消される見込みはない。

 もう少し経ったら「ネズミとヒトは違う」と胸を張って言える人はいなくなるのではないでしょうか?


 そして、都市だけでなく、地球そのものが人口過剰になったら?
 予兆はあちこちに見えています。人類はこの傾向を食い止めることができるのでしょうか。それとも、16世紀の政治哲学者ホッブスの予想を受け入れざるを得ないのでしょうか?

「全世界が過剰な住民をもった場合は、
全ての中での最後の救済は戦争であって、
それは各人の勝利か死を与える。」



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