June 02, 2007

「充たされざる者」 −中断す

 絶版になっていたカズオ・イシグロの小説「充たされざる者」が5月25日に文庫本になって出た。発刊前から予約して楽しみにしていた小説だったのですが、100ページ読まないうちに読み続けることが出来なくなって、放り出してしまった。

充たされざる者
 本の帯には『イシグロがカフカを超える。』とありましたし、裏表紙には『世界的ピアニストのライダーは、あるヨーロッパの町に降り立った。「木曜の夕べ」という催しで演奏する予定のようだが、日程や演目さえ彼には定かでない。ただ、演奏会は町の「危機」を乗り越えるための最後の望みのようで、一部市民の期待は限りなく高い。ライダーはそれとなく詳細を探るが、奇妙な相談を持ちかける市民達が次々と邪魔に入り・・・。実験的手法を駆使し、悪夢のような不条理を紡ぐブッカー賞作家の問題作」と賛辞が書いてあったのに、読み進むうちに、訳が分からなくなって、やむなく中断しました。

 小説好きが途中で投げ出すなんて事は、今までほとんどないことです。何故だか分かりませんが、この小説は言葉の明晰さと論理が欠けているので、残念ながら読み続けることは出来ませんでした。
 読了できなかったので、部分引用もコメントもしません。(もし、お読みになった方がいらっしゃれば、読後感など教えていただけませんか。お願いします)
 

 カズオ・イシグロの小説を好きな順番に並べてお終いにします。
1 日の名残り(ブッカー賞)
2 浮世の画家(ウィットブレッド賞)
3 私を離さないで(世界的ベストセラー)
4 私たちが孤児だったころ
5 遠い山なみの光(または、「女達の遠い夏」)(王立文学協会賞)



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この記事へのコメント
KITA さま

はじめまして。
あなたのSNS上のブログ、読ませていただきました。
同じように小生もイシグロ氏を高く評価しております。
今回の作品も大きな期待をもって読み始めたのですが、小生は読み続けることが出来ませんでした。

もし、「充たされざる者」をお読みになりましたら、是非、ブログで書評をお願いします。
Posted by ユリウス at June 08, 2007 00:04
こんばんわ。はじめて訪問させて頂きます。

 偶然、カズオ・イシグロに言及されているこのブログを発見いたしました。私も、イシグロ作品に一目ぼれし、ユリウス様が放棄されたかの作品を除き、その全作品を読破いたしました。イシグロこそ、現代日本文学が見失った、優れたストーリーテラーであり、完璧な小説世界を構築しうる人物でしょう。大江健三郎、夏目漱石、高橋和巳を継承しうる文学者と評価致します。巷では、村上春樹がよく売れるようですが、同じように、静かで、落ち着いた語り口であっても、本質的な違いを感ぜざるを得ません。

 イシグロ作品に関して、地域SNS上でブログを書いておりますので、ご笑覧下さい。
Posted by KITA at June 07, 2007 19:53