May 17, 2007

達成年齢

 「達成年齢(Age of achievement)」とは心理学用語らしいが、詳しいことはしらない。知りませんが、翔年は昔から「達成年齢」に大きな関心を持っていた。

 確か湯川秀樹先生だったと思いますが、物理学の発見は若いときに限ると随筆に書いておられたことがあるし、数学の発見は早熟な天才でなくてはできないという説を唱えておられた数学者先生もおいでになったように記憶している。そして、このことは世間も認めているように見えます。

 学問の世界でなくとも、例えば将棋の世界では、名人位を取るのは谷川浩司さんや羽生さんのように、大変若い棋士が棋界の頂点を極める。世間もそれを当たり前のこととして認めている。だから、たまに年配の棋士がタイトルを取ると、中年の星などといって大きな話題になる。

 だが、よく似たゲームの囲碁においては、かつてはそう思われていなかった時期があった。
 昭和40年に若い林海峰が名人戦の挑戦者に躍り出た時、全盛期の坂田さん(栄男)はこういう意味のことをマスコミに語った。「将棋は勝敗が決するまでの手数が少ない。せいぜい100手で決まる。そこへ行くと、囲碁は息が長いゲームで、250手以上の手数で勝敗が決まることが多い。将棋は若い天才的な棋士が、新しい戦法を編み出したら天下を獲れるが、囲碁は山あり谷ありのマラソンゲームだから、技術だけの勝負ではなく、全人間的な力が要求される。」
 これは若いときから天才的なヒラメキに優れ、囲碁のワザでは第一人者であると仲間から認められておりながら、どちらかと言えばワザはそれほどではないとされ、非力の高川(秀格)と揶揄されていた人に、本因坊位9連覇をゆるしてきたのが鬼才坂田の痛恨事だったのでしょう。
 苦節10年、ようやく自らの力で本因坊位をもぎ取った坂田が、その実績を引っさげて、自らの体験による自信が言わせた言葉と翔年は感じた。「人間的な器の大きさで、若い挑戦者などに負けるはずがない」と。
 
 ところが意外なことに、大方の見方や坂田の自信に反して、23歳の若武者、林海峰が坂田から名人位を奪取したのです。これには世間もびっくりした。

 それ以後、日本の碁界も世界の碁界も、10代、20代の天才棋士が天下を獲っていることが多いので、坂田の言もちょっと色褪せてしまったし、世間も今では将棋も碁も、同じように若い天才棋士達の天下だと認識している。


 このように、若い天才が活躍しやすい分野もあれば、かなり人生の経験を積まないと大した業績を上げられないような分野もあるから、人生は面白い。

俳句的

 外山慈比古著「俳句的」という随筆集にこんなことが書いてあります。
「達成年齢とは最高の業績を上げるのは大体何歳かというのに着目した研究結果である。」

数学:20代終わりから30代前半がピーク。
物理学:数学とほぼ同じ見当。
経済学:40代、50代にならないとその人の最高の業績は生まれにくい。
哲学:50代以後に達成年齢が来る。
抒情詩:25歳前後。(キーツが26歳で亡くなって、文学史上屈指の詩人)
小説:30代から40代
俳句:何歳か分からないが、抒情詩の詩人とは明らかに違う。達成年齢は相当高いと思われる。

 皆さんはどんな感想をお持ちでしょう?

 達成年齢の高低はスポーツの種類にもありますね。競泳や女子体操などは達成年齢が低いようですし、マラソンや野球やゴルフはやや高いように思います。



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この記事へのコメント
kompf さま

音楽界のコメント、ありがとうございます。
作曲家にしろ、演奏家にしろ、天才のゴロゴロいる世界なので、考える材料には事欠きませんね。

>演奏家は、10代のうちに才能が開花しないと難しい世界ですけど、本領を発揮するのは、人生経験を経て表現力を獲得してからでしょうね。
同感です。クラシックに限らず、ジャズやシャンソン歌手なども人生を表現するには人生経験がどうしても必要なんでしょうね。

演奏家、舞台俳優、俳人、画家などの表現者達は達成年齢が高いように見えます。
もしくは、達成したその高みを長く維持できているいるように思えます。







Posted by ユリウス at May 18, 2007 10:18
達成年齢、興味深いですね。
クラシック作曲家の場合はどうだろう?と考えてみたのですが、夭折の天才も多いので……。
強いて挙げると、30代から40代で代表作を書くパターンが一番多い気がします。
ある程度自分のスタイルを確立して、創作意欲が一番盛んな時期なのでしょう。そして時代を切り拓く力もある。
もちろんこれ以降も旺盛に創作する作曲家も多数ですし、良い作品も沢山ありますが、「脂が乗ってる」感があるのはこの時期ではないかと思います。

演奏家は、10代のうちに才能が開花しないと難しい世界ですけど、本領を発揮するのは、人生経験を経て表現力を獲得してからでしょうね。
アスリート的な要素と、哲学者の要素の両面があるという気がします。
Posted by kompf at May 18, 2007 04:27