自宅近くの喫茶店の窓際に、桃の花よりもっと濃艶な花が飾られていた。ボケの花だという。ママにこんな美しい花が何で「ボケ」なんて呼ばれなければならないの、せめて「認知症花」と呼びたいと冗談口をたたいて、ボケと呼ばれる理由を聞いたが分からない。客の若い女性も知らないという。
緋木瓜 photo by 青木繁伸氏
早速、木瓜を調べてみました。翔年が見たのは緋色の花だったので、これは緋木瓜と呼ぶらしい。
他に淡紅色の香篆木瓜(コウテンボケ)、花が大輪で枝が横に伸びる淀木瓜、純白の白木瓜など、園芸用に品種も多いそうだ。
ボケの実が瓜に似ていることをご存知の方は、漢字の木瓜には異論はないでしょう。
木瓜の実 photo by 青木繁伸氏
ボケは漢名の木瓜(ボクカ)から転じたという説と「毛介(モケ)」、または「母計」がなまったものという説があって、翔年はどっちが正しいのか分かりませんでしたが、最後に杉本つとむ著「語源海」にあたって、納得の説明に出会いました。
それによると木瓜(モックヮ)がモッカウからさらになまって、モケmoke →ボケboke(m→bの子音交替)となったそうだ。さすが、杉本先生、納得致しました。
美しい花を前にすれば、いい句ができるらしい、たくさんあります。
ある街の木瓜の肉色頭を去らず 三谷 昭
赤い木瓜ゆれをはり我ゆれゐたり 加藤楸邨
木瓜咲くや漱石拙を守るべく 夏目漱石
口ごたえすまじと思ふ木瓜の花 星野立子