January 24, 2007

ソニーの復活はあるか?

 「文芸春秋」2月号に、ソニーの中鉢社長と評論家の立花隆の対談が「ソニー神話を壊したのは誰だ」というタイトルででている。

文芸春秋3

 何時も思うことだけれど、マスコミはこういうタイトルが大変好きだ。翔年は壊した人物は誰でもいい。どんな人事、どんな評価基準、どんな組織運営をしたから、神話はどのようにして壊れていったのか? そしてソニー神話といわれたような奇跡はもう蘇ることはないのか? それが知りたい。 
 ソニーという会社も製品も昔からの長い付き合いなので、興味津々で記事を読んだ。

 最近のソニーのトラブルは眼を覆いたくなる。ブランドに傷がついたから、損失額は金額で計れない。最近のトラブルはこんなにある。
1 パソコン用リチウムイオン電池の発火事件 − 損失は512億円に上った。
2 ゲーム機プレイステーション3は部品の供給不足から、発売延期や極度の品薄状態を引き起こした。
3 デジタルカメラの基幹部品のCCDの不具合があった。
4 ウォークマンのソフトの不具合があったらしい。(翔年は知らない)
5 携帯電話のソフトでも何回か不具合を起こした。


 これだけあれば業績の足を引っ張るには十分だ。翔年は対談のはじめから、中鉢社長の言葉使いや考え方に違和感を覚えた。対談から少し抜きます。

1 社長について
中鉢:「それにしても、社長というのは、選択の自由がないという意味で、職業じゃありませんね。自分でなりたいとか、何時辞めたいとか、まるっきり決めることができない。逆に言うと、引き受けろと言われたら、断りきれないものでもありました。」
→ 皆さんは、この発言に共感できますか? 
 揚げ足をとるつもりはありませんが、この人は「社長」は職業だと思っている。普通の言葉使いでは、「社長」は会社の役職名であって、職業ではありません。だからこそ、人事権のある人から、社長になれと命じられるのじゃなかったのかな? 
通常の会社では、社長に権限が集中しているのだけれど、ソニーではもっと上に決定権があるということ? 会社組織において、リーダーの力の源泉の一つは人事権だと思いますがね。

2 プレイスレーション3の認識について
立花:「私はゲームはやりませんが、実物を見て映像の美しさには感心しんました」
中鉢:「ゲームができるのはもちろんのこと、DVD約5枚分の情報をもつブルーレイディスクは再生できる、インターネットなどパソコンでできるサービスも受けられるという一台三役の機械で、これだけの充実度を期待していた人はどれくらいいるのだろうかと。」
→ 社長は単純にパンフレットの説明に終始している。

立花:「僕は全く別の見方をしているんです。プレイステーション3は、ゲーム機というより、スーパーコンピュータです。プレステ3が百万台単位で大量生産され、それが一般の家庭にまで入り込んでくるという事態は、スーパーコンピューターが社会のどこにも入り込んできて、誰でも使える時代になったということです。その意味は測り知れないほど大きい。」
→ 立花氏はプレステ3の技術的凄さを理解し、それについて文明論的に論じようとするが、それに対する中鉢社長の反応が鈍い。次を見てください。

中鉢:「スーパーコンピュータというと、三年前まで、世界一だった日本の『地球シュミレータ』を想定されていますか。」
立花:「そうです。ただし、『地球シュミレータ』は、巨大なロッカーぐらいの大きさのスーパーコンピュータを大きな雨天体操場のようなところにズラリと五百台以上もならべて作ったウルトラ・コンピュータなのです。その一つ一つのマシーンの計算速度が64ギガフロップスです。
プレイステ3は『Cell』と呼ばれる演算装置を使っていますが、これは一チップで258ギガフロップスの能力を持っている。『地球シュミレータ』に使われた巨大ロッカー型スーパーコンピュータ四台分の能力を持っているということです。『地球シミュレータ』を作るのに5百億かかっており、巨大なロッカー型スーパーコンピュータ一つ作るのに、数千万円かかっていた。それがいまや、数万円でできちゃうわけです。日本はプレステ3の大ブレイクによって、世界に比類のないスーパーコンピュータ王国になったということなんです。しばらくすると、プレイステーション3を3台連結して、デスクトップの地球シミュレーターを作ったり、様々な応用の試みが行われるでしょう。」
中鉢:「スーパーコンピュータのビジネスはしていないので・・・」
→ がっかりです。対談相手がプレステの中身の技術を勉強してきて、その凄さを一般の人に分かる言葉でしゃべってくれているのに対して、それに水をかけるような対応をしている。社長なら、ビジネスをしておろうとしていなかろうと、自社の技術の素晴らしさについて、もっともっと話を盛り上げたらどうだ。絶好のPRの機会を逃す社長が信じられません。
※1ギガフロップス=10の9乗フロップス。
※2フロップス(FLOPS)は、Floating point number Operations Per Secondの略で、コンピュータの性能指標の一つ。1秒間に浮動小数点数演算が何回できるかを表す。科学技術計算やシミュレーションを行うスーパーコンピュータ等の性能を表す際に用いられることが多い。


立花:「いまは科学技術も軍事技術も、最先端はすべてコンピュータによるシミュレーションによって行われています。どれだけ高性能のスーパーコンピュータを持っているかで、企業や国の競争力が左右されるんです。プレステ3が失敗したらソニーがひっくり返るとか書いている証券アナリストが一杯いるでしょ。」
中鉢:「ええ、そういう見方があります。」
立花:「全然違います。もし、ソニーがつぶれることがあったら、このプロジェクトだけは国家が乗り出して保護すべきだというくらい、すごいことなんです。要するに、ソニーはスーパーコンピュータの大量生産技術を身につけたということで、これから時代のリーディングカンパニーになりますよ。」
中鉢:「証券アナリストからは、「どうやって投資を回収するんですか」とよく聞かれます。私はそれに対しては、まずゲームで回収すると言っています。『Cell』の活用としては、一つはコンシューマー・エレクトロニクス、つまりテレビなどのAV家電に使う方法。もう一つはシミュレータなどの業務用に使っていく方法。しかし、前者だと用途に応じて性能や価格、消費電力などを下げて汎用性を持たせる必要がある。後者の場合は、個数が出ない。スパコンは何台も必要ありませんからね。」
→ このコメントは何だ。社長が自社の高性能セルを限定的な言辞で用途否定をしている。社長がこれほどの縮み思考では先が思いやられる。開発部門に同情を禁じえない。

立花:「いや、そんなことはありません。あらゆる企業がデスクトップのワークステーション代わりに使うようになりますよ。東大の生産技術研究所はシミュレーション技術開発の中心的存在ですから、あそこの人間に預けたら、たちまちすごい使い方を見つけると思います。とにかく、口が利けないくらいのポテンシャルですよ。」
→ 立花氏の認識、発想の仕方こそ、ソニーのリーダーに必要だ。

故井深大 photo by 人生のセームスケール
井深大
 これ以上の引用は止めておきます。対談を読んで、翔年はがっかりの連続でした。この社長ではソニーらしい「あっ」といわせる製品が出てくることは期待しにくいと思いました。故井深大が会社の設立趣意書に書いた「自由闊達ニシテ愉快ナル理想工場ノ建設」とはかなり違った会社になっているのかもしれません。凄い技術力を持った会社なのに、まだしばらく迷走するかも。





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この記事へのコメント
an 様

いったいあなたは何をいいたいの?
寝ぼけていないのなら、シッカリ論点を整理した上で、コメントしてください。
うまく書けないのなら、箇条書きでもいいですよ。

Posted by ユリウス at July 19, 2007 22:45
何を寝ぼけた事を言ってるんですか
呆れるのはしょうもないセールストークを真に受けていてコンピュータの事なんて何も知らない立花さんのほうでしょう
中鉢さんはせめて一応言論界では「知の巨人」として扱われているために「せめてもうちょっと勉強しなさい」なんてことは言えずにこうやってあしらっているんですよ

そもそもPS3は子会社のSCEが勝手にやってる事なので本社としては迷惑この上ないでしょう
第一コンピューターの世界で本当に重要なのはハードではなくソフトであって、ハードさえ作ってしまえば業界をリード出来るなどという考えはとっくに時代遅れの考えです

そこまでPSの成功があったとはいえSCEの暴走を許した責任は親会社のソニーにはありますが、その頃の中鉢さんは社長でもなかったし
Posted by an at July 19, 2007 15:15
YN 様

>技術は一流、経営二流ということでしょうか。
どうもそのようです。
残念でなりません。

北朝鮮は多分たくさんのプレステ2を買っていったのではないでしょうか?
大いにありうると考えます。
何故なら、かの国の「対戦型囲碁ソフト」は現在世界一の強さを誇っています。(日本や欧米のソフトを凌駕しています)
ということは、天才的なプログラマーが存在し、その開発を支える組織と土壌があるということですね。



Posted by ユリウス at February 18, 2007 20:55
こんにちわ。

ソニーの「転落」について、いろいろな特集を読んでも今ひとつピンと来ていなかったのですが、今回まさにずばりの指摘で、なるほどと思いました。

>>日本はプレステ3の大ブレイクによって、世界に比類のないスーパーコンピュータ王国になったということなんです。しばらくすると、プレイステーション3を3台連結して、デスクトップの地球シミュレーターを作ったり、様々な応用の試みが行われるでしょう。」
中鉢:「スーパーコンピュータのビジネスはしていないので・・・」<<

対談相手の立花氏も呆れたことでしょう。こういうトップの下ではソニーの持てる技術の可能性を活かしきれない。「転落」もむべなるかなと思います。技術は一流、経営二流ということでしょうか。技術という日本の貴重な「資源」が十分活かされないなんて、本当に残念です。
Posted by YN at February 17, 2007 13:09