November 26, 2006

ロシアとお稲荷さんとウオッカ

 ロシアとかアメリカとか中国とか、領土の途方もなく大きな多民族国家は、我々のような一市民にはなかなか全貌が見えてこない。新聞にも、ネット上のBlogにも、これらの国についてさまざまなことが書いてあるが、それらはごく一部のエピソードである。

 今、ロシアに大きな疑惑が持ち上がっている。
 英国に亡命中のロシア連邦保安局(FSB)の元中佐リトビネンコ氏の「毒殺」疑惑に世界の注目が集まっている。ロシアのプーチン政権批判の急先鋒である同氏の尿から検出されたのは放射性物質ポロニウム210。いつ、どこで放射性物質を摂取したのか。本人周辺が主張する「ロシア情報機関による暗殺」なのか…。ロンドン警視庁はこれまでに、ロンドン北部のリトビネンコ氏の自宅、体調を崩した今月1日に同氏が立ち寄ったホテル、日本食レストランの3カ所から微量の放射線を検出したと発表しているから、毒殺は間違いないと思われる。真相の解明をロンドン警視庁の敏腕刑事に期待したい。
※ポロニウム=1898年にキュリー夫妻が発見した放射性物質で、夫人の母国ポーランドにちなんで命名された。最も有毒な元素の一つとされ、放射能はウランの約300倍。致死量の特定は困難だが、微量でも人体に中毒や体内被ばくの症状が出るとされ、金属としての健康影響もある。


 これまでにも、プーチン政権は相当強引な権力の行使をすることがわかっている。最近、日本が関係する事件だけでも、漁船が銃撃されたり拿捕されたりしているし、一旦許可されたサハリンの天然ガス開発認可の取り消しをされている。ロシアは融通が利かず冷酷な国という印象を拭うことはむずかしい。

 ところが、下のような個人的話を聞くと、日本人よりもロシア人の桁違いの大らかさを感じて、翔年は好きになる。

 作新学院大学の小林和男教授が「文芸春秋」に書いておられる随筆によれば、ロシアの駐日大使の鎌倉の別荘にはお稲荷さんが祀られているそうだ。要するに、日本式に大使が祠を台座に据付け、野菜や果物に鯛に米にお酒二本を供えて、坊さんを呼んで読経してもらって魂まで入れたという。
 教授が「国の代表が国費で異教の祠をつくり、おまけに僧侶を呼んで魂まで入れるのはまずいではないか?」と聞くと、なんとこんな答えが返ってきたそうだ。

「イスラムのアフガニスタンにも勤務したが、私は地球を治めるのは一つの神様ではないように思う。キリストもアラーの神も仏も信じていいところがあるように感じる。ある日本の宗教指導者に信仰について話したとき、そんな気持ちを説明して、私はどちらかと言えば無神論者ですと言ったら、「大使こそ仏教徒だ!」といわれたよ。あっはっは。」

 翔年はこの大使の宗教観に大賛成。日本の仏教関係者は自信を持って、もっともっと積極的に世界に向かって、発言して欲しいと思う。21世紀の宗教は仏教だと。


米原万里著「ロシアは今日も荒れ模様」
ロシアは今日も荒れ模様

 もう一つ、これはロシアの小咄。
『酔っぱらいの亭主を見かねた妻が詰め寄った。
「あんた! ウォトカをとるの、私をとるの? ハッキリしてちょうだい」
その場合のウォトカは何本かね?」』



 という訳で、翔年はロシア政府は嫌いだが、ロシア人は嫌いでない。
 同じ理由で、中国政府は大嫌いだけど、好きな中国人は大勢いる。



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