October 22, 2006

なんだ、これは!  -立花隆氏−

立花隆の「メディア ソシオ-ポリティクス」、第86回 安倍外交“神話”の試金石 北朝鮮の「核」と「拉致」 (2006/10/13)の中に、「なんだ、これは」と言いたいような言説があったので、もの申したい。

 立花氏の文章の一部をそのまま引用します。
『今回の北朝鮮の核実験は、安倍首相のソウル入りに合わせてなされた(時間差が30分しかなかった)と考えられるところから、拉致問題で北朝鮮に煮え湯を飲ませたことに対する「意趣返し」という説も出ている(週刊新潮10月19日号「安倍訪韓日に決行は『拉致の意趣返し』」。
ということになると、安倍首相が音頭を取った拉致問題強硬外交が、金正日の『狂気』に火を点けてしまったという可能性も考えられるわけで、ここまでくると、安倍が本当のところ、北朝鮮側との裏交渉で、どのようなやり取りをしてきたのか、言を左右にして逃げてばかりいないで、明らかにする責務が生じているといえるのではないか。』

 週刊誌が政治課題を、いろんな角度から、あるときは面白おかしく、あると時はあることないことを書くのを、翔年はあまり本気に信じない。総じて低次元。重要そうに書いてある記事でも、よく読んでみると、記者の偏見で書かれていたり、記者の卑しい筆使いが感じられて、ばかばかしくなることが多い。
 もし、週刊誌が報じるような事情があるのなら、北朝鮮はわが国にもっと難題を吹きかけて来るだろう。だが、事実は違う。北はアメリカとの直接の交渉を望んでいるのであって、わが国などではない。なぜなら、米国は生殺与奪の力を持っているから。交渉相手は米国と定めているのです。

 ところが、どうだろう、立花隆ともあろう論客が週刊新潮の記事を信用し、低次元の解釈をそのまま述べているのには、氏の今までの評論を知る者としては唖然とする。
 一番ひどい解釈は「安倍総理の北強行外交が、金正日の『狂気』に火を点けた」という下りである。国際社会の圧力で北が「狂気の暴発」をする可能性があるのは否定できない事実であるが、それをわが国の対北強行外交のせいにするのは、ちょっと次元が低すぎる。特に安倍首相が訪韓日に決行したのは「意趣返し」という説は何とも低次元の解釈で、「核実験」という北の外交カードをこんなに矮小化してしまっては、将来大きな判断ミスを犯し、国益を損なう心配すらあると思う。


 誤解を恐れずに言えば、立花氏は金正日を「女の腐ったような男とみているのか?」と問いたい。複雑で難しい事物の解釈には、はからずも解釈をする側の人物が垣間見えることがあるが、これはそんな事例の一つか。



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