July 11, 2006

指あるいは手の考察

 アジアの軍事的緊張について書くつもりでしたが、中国が北朝鮮核問題を巡る6か国協議の議長役、武大偉・外務次官らを10日から北朝鮮に派遣し、ミサイル発射凍結や6か国協議即時復帰などの説得にあたっているので、その結果を注視するしかありません。訪朝は15日までの予定で、中国政府が中朝協議の結果が出るまで安保理決議の採決を見合わせるよう要請しているので、大した期待は持てないが、結果を待つより手はありません。

 「快楽原則」のKompfさんが、ピアニストの指の動きの美しさについて、書いておられる。
『このDVDは、ゴルトベルクを弾くグールドの、素晴らしく美しい指の動きを見るためのもの。私にとっては、フェティッシュなものだ。』と。

 映画でもTVでもピアニストの姿は印象的で絵になるので、演奏シーンはよく使われる。とりわけ、アップで映される指の、あるときは優雅に、繊細に、あるときはピアノを叩き潰さんばかりに激しく、早く、動く様は、音楽の理解を超えて、見る者を惹きつけてやみません。
 当然、曲によって指の動きは異なるわけで、Kompfさんによれば、バッハを弾く指が特にきれいだそうですから、バッハやグレン・グールドが好きな方は、是非「快楽原則」の7月11日のエントリーをお読みください。

 翔年はKompfさんの「フェティッシュ」なる言葉に反応して、指とか手について、例によって、連想が広がる。女性は小さくてよい匂いがして髪の毛が長くて・・・という言葉は男の憧れを示す言葉だけれど、あまりにも漠然としすぎているきらいがある。そこへゆくと、指、手、脚、尻となるとぐっとビビッドで、対象は明確かつ具体的、フェチの対象となりうる。

 「指」については、確か竹内久美子さんの本に、発生学的に手指は最後の段階でできるので、手の美しい男はよくもてる。これは生物学的に見て正しいという見解が述べられていたが、今その本が手元にないので書名が確かめられない。生物学的な根拠があるのだから、男だけでなく、これは女にも適用できるはずの理論だ信じる。

 東西の文学作品でも「手」や「指」は男女関係のキーワードになっている。

「あなたの手こそ、一番魅力ある特徴ですね。実に華奢で、実に優美だ。あなたがお手をお使いになる時の、いいようのない品のよさには、いつも目を瞠っていますね。生まれつきにしろ、あるいは技巧であるにしろ、あなたが手振りひとつすれば、きっとそれは美しいものになっているんですからね。」    −サマセット・モームー

「秋霞の手足、殊に手の指は踊りのときの冴えばかりでなく、美しかった。手の甲がちいさくほどほどにつまっていて、ふっくり厚みがあり、指は先細りに長く、爪の先に弾力があって、自然のうす紅をさしている一本一本は可憐にも艶冶にも見えた」    −円地文子−

「手よ 隠せ 汝が過去(コシカタ)を なが爪と指(オヨビ)との秘密なる襞の間に」   −グールモン−

 ちょっと観点が違うが、男と女のこんな場面もよく使われるので思い出した。暗闇の中で落とした鍵か何かを探していると、男と女の手が触れて「冷たい手!」と男が言う。暗がりだから、手や指の美しさで女性心理の表現のしようがない。それで手の温度を使っているのだ。女の胸がときめいてドキドキし始めると、手に発汗作用が生じ、それが冷却効果になっているという、動物心理学のおくの手を作者が使いたいのでしょう。見え見えの手だけど、真実ではあります。

 一般論で言えば、男の手は頼もしさの象徴として、女の手は美しさの極地として描かれるが、そうでもない例も結構多い。次の文章はこのBlogの基準ではR-18指定なのですが、川端先生の名作を翔年ごときがR指定にする訳にもいかず、そのまま引用することをお許し願います。

「島村は退屈まぎれに左手の人指し指をいろいろにうごかしてながめては、結局、この指だけが、これから会いに行く女をなまなましくおぼえている・・・・」   −川端康成−


 次はお待ちかねの江戸川柳。

門口で医者と親子が待っている    江戸川柳

 このバレ句は凡人の理解を超えています。頭がよくて、人生経験も豊富という自信溢れた方でも、手が出ないのではないでしょうか。この謎解きはR-18指定にします。興味のある大人の方のみ、「続きを読む」をクリックして、先へお進みください。

門口で医者と親子が待っている    江戸川柳

門口:お察しのとおり、女性の大事なところを指しています。
医者:これは「薬指」のことらしい。
親子:これは誰でもわかりますね。親指と小指だと。

あるお屋敷前で、医者と親子は門内に入らず、外でおとなしく待っている風景を描いている。(ウソ)


※塩田丸男著「人体表現読本」を参考にしました。

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この記事へのコメント
Kompf さま

こちらこそ、音楽の専門的なことは何も理解できませんが、いろいろと周辺を楽しませてもらっております。

>私の周囲にも「男性の手が好き」という女性が多いのですが、生物学的な根拠があったのですね。

おたまじゃくしは、最後に手と足がでてきますが、それと同じように、人間の胎児も、最後に手が完成するそうです。ということは、卵から身体が出来上がるまでの間、成長プロセスを司っている微妙なプログラムは正常に動作したということであり、きれいな手はその完璧さの証明でもあります。
男も女も、子孫のために、完璧な動作をするDNAを求めてさ迷うわけですが、その判定法の一つが「手」であるというのが、竹内久美子説だったと思います。
楽しい説で、小生、疑いたくはありません。

Posted by ユリウス at July 12, 2006 09:53
ブログを読んでいただき、有難うございます。

私の周囲にも「男性の手が好き」という女性が多いのですが、生物学的な根拠があったのですね。

私は意外性のある手が好きみたいです。
この人って、こんな手の持ち主だったのか…と思うような。
グールド氏の手は正しくそれで、演奏終盤には3割増ほど男前に見えてきました(笑)。

それにしても…
江戸川柳、恐るべしです。
参りました。
Posted by kompf at July 12, 2006 01:14
>たまさん

門外漢ゆえ、詳しくは存じませんが、たいてい、ついているようです。
事情通の話では、配線不良でたまにベルがならんのもあるそうですが・・・。
Posted by ユリウス at July 11, 2006 23:05
ユリウスさん

いつも楽しませてくれてありがとうございます。

ずいぶんと、広くて立派なお屋敷ですね。
植栽もよく手入れがなされているようです。
門口には、呼び鈴なんぞはついとるんですか?
Posted by たま at July 11, 2006 18:37