March 25, 2006

志賀原発運転差し止め判決に疑問?

 24日夕刊各紙の報道によると、北陸電力2号機(改良型沸騰水型軽水炉=ABWR、1,358,000KW)は耐震性に問題があるとして、住民ら135人が北陸電力に運転差し止めを求めていた訴訟の判決で、金沢地裁の井戸謙一裁判長は24日、運転差し止め請求を認める判決をくだした。
(以下は日経夕刊の記事を参考にまとめます。)

 裁判長はこんな論理を述べている。
1 「宮城県沖地震では、東北電力女川原発で想定した揺れを上回った」とし、設計の計算手法は実際の観測結果と整合しておらず、妥当性は認めがたい」
 → 翔年は地質や地震の専門家ではないので、ほんとうにそうですかというしかありません。

2 「(被告は)邑知潟断層帯による地震を考慮していない。
→ これは本当らしい。

3 「想定を超えた地震によって周辺住民が許容限度を超える放射線を被爆する具体的危険があると推認すべきだ」
→ 原子力発電所という巨大なシステムは、放射性物質が外部へ漏出しないよう、二重、三重の防護がなされているのですが、裁判長は大地震がきたら、システムは全て破壊されると思っているみたい。結論はなんとも荒っぽいので、それこそ結論の「妥当性」が翔年にはさっぱりわからない
 これに不満を感じて、ネットのアチコチを探し回ったが、判決文を見つけ出すことができず残念。新聞記事程度の文章は山ほど見たが、これらからは、「放射線を被爆する具体的危険がある」とする、判決の根拠が示されているものは見当たりませんでした。

4 「放射性物質が放出された場合、周辺住民の人格権侵害の具体的危険は受忍限度を越えている」
→ 放射性物質が放出されたら、放出のされ方如何にもよりますが、裁判長の結論に至るでしょう。しかし、それにはどうしても、M7.6の地震が発生した時、原発の構造物は如何なる被害を受け、肝心の格納容器はどのようななり、システム全体はどのような事態におちいるのか、少なくとも何ケースかのシュミレーションは示されるべきと考える。そのような推論を示すこともせず、「放射線を被爆する具体的危険がある」と結論づけるのは、乱暴すぎると思う。

5 もう一つ、付け加えたい。この裁判の原告は原子炉から700KMも離れた熊本県人も含むそうだが、通常、放出された放射性物質は偏西風にのって東へ(東京方面へ)流れていく。裁判長は東風が吹いている場合を仮定して考えているのかな?
 さらに、普通の裁判では資格がない原告は排除されますが、やさしい裁判長はそういうことをなさらないらしい。こういう細部もキチンと説明していただきたいと思う。


 人間の生活に必要なエネルギーを生み出すとともに、人間にとって取り扱いの極めて難しい放射性物質を生成する原子力発電所は、一つ間違えば大変な悲劇を生み出す恐れのある、まことにやっかいな構築物であることは間違いありません。

 ただし、翔年は「わけが分からないから、ただただ恐い、キライだ」という立場はとりません。また、政治的立場から、立地に賛成したり、反対したりするべきでないと考えています。(政争の具としてはなりません。人類のエネルギー問題として論じるのはかまわない)

 今回の裁判を契機として、
1 国の耐震設計審査指針を最新の知見を入れて見直すこと(学者によって諸説があり、まとめるのは大変そうですが、やってもらわねばなりません)

2 裁判所はどのような状況のもとで「放射線を被爆する具体的危険がある」と状態に至ると結論つけたのか、是非国民の前に明らかにしてほしい。(被告側はシッカリしなさい)

3 この裁判の行方は、各所の原子力発電所の問題に大きく絡んでくるかもしれない。翔年は、国の耐震設計指針の見直しや電力会社の市民への安全性の説明がどのように行われるのか今後注視していきたい。


3/26 追記
1 まだ、判決文は手に入りません。もし、どなたかネット上にあるところをご存知の方がいらっしゃれば、教えてください。お願いします。

2 今回の判決の決め手になるのは、法律や法律の運用ではなくて、地震に関する知見と技術であることは明らかである。それを裁判所にお伺いを立てて、安全かどうかを、裁判官に判定してもらうというのは、いくら法治国家であるといっても、最適行動とは思えません。
 特に地震学の学者の間でも、異論があってまとめきれない問題を、裁判所に持ち込んで白黒をつけようという考え方そのものに、翔年は首をかしげます。
 皆さんはどう思われますか?





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