March 13, 2006

夢を語る −キング牧師の名演説−

 昨日は雨のため早朝テニスは中止、そうなると何時もより時間的余裕が生まれる。ひさしぶりに"moondial" さんのBlog「Night rain, in winter...」を訪れたら、今日はMartin Luther King, Jr (マーティン・ルーサー・キング牧師)の有名な演説"I have a dream."が下のように紹介されていた。

『(前略)MLK のこの有名な演説(のおそらく全篇か? 未確認。音源の尺は16分28秒)を、ウェブ上で探していて昨年12月ごろにみつけた。「政治的に意義深い音声素材の検索可能なアーカイヴ」と謳うウェブサイト History and Politics Out Loud 内、「Rev. Martin Luther King, Jr. delivers his most famous address, "I have a dream"」(MLK 師の最も世に知られた演説 "I have a dream" の実況録音)から聴くことができる。要 Real Player。字幕が音声と同時進行で出るのがひじょうに便利。(後略)』

 あちこちで引用された名演説だけど、実況録音だと言うし、字幕も出るとあるので、早速、指定のサイトへ飛んだ。翔年は耳で聞き取ることは全然無理、字幕もサッとわかると言うわけにはいかなかったけれど、同ページにあったテープ起こしの原稿を辞書を引きながら午前中かかって読んだ。(例えば"Five score years ago,.. "とあっても、これが100年前と分かるためには、辞書がいるのですから、悲惨です。)


演説中のキング牧師  photo by wiqipedia
キング牧師2


 moondialさんが「最も印象深く、心を揺さぶられた」演説とおっしゃっているとおり、久しぶりに感動した演説でした。訳した後で、2回繰返して聞いて、やっとこさの感動ではありましたけれど・・・。

 1863年にリンカーンが署名した奴隷解放宣言で、黒人は自由の身になったはずでした。しかし、実際には1960年代は、まだ州によっては実質的な選挙権を奪われ、バスでは白人に席を譲ることが要求され、白人専用のレストランに入ることを法的(州法)にも拒否されていたのです。
 奴隷解放宣言から丁度100年後、理想主義のケネディ大統領がやっと人種隔離と差別の撤廃を図る公民権法案を提出することになり、キング牧師はこの運動を全米に広げるためにその先頭に立っていた時の演説です。

 moondialさんは「文字を追って読むのではなく、語られて耳を通じて届く言葉のもつ(恐るべき)力を、改めて実感できる好適な例ではないだろうか。」と述べておられる。つまり「以前は希望が約束されたかに思えた(過去)。しかし、少しもよくなっていない(現在)。しかし、私には夢がある(未来)」と時系列展開するストーリィは分かりやすいし、また何度も繰り返される同じ構文のリフレインなどは、耳のある人には心地よく響くというわけだ。加えて、キング牧師の人格から発する声の調子が、聴衆のパッションに強く訴えかけるのでしょうか。

 文字人間の翔年は、演説の中味の「普遍性」に大変魅力を感じました。キング牧師はリンカーン記念堂の前に集まった20万人の聴衆(黒人や虐げられた人々が多い)に向って語りかけていますが、実はその会場にいない全てのアメリカ国民にメッセージを発している。「アメリカンドリーム」という言葉によって。
 経済的成功を指して、アメリカンドリームと人は言うが、キング牧師は"We hold these truths to be self-evident,that all men are created equal."(私たちは次の真理を自明のものと見なす。即ち人は生まれながらにして平等である。)といって、この普遍的理念の実現がアメリカンドリームだと全国民に訴えている。

 こういう演説はいいですね。我国だと、理想主義は死にかかっているし、政治家が普遍的な価値を強調したら、青くさいと言われてお終い、共感を示す人がたいへんすくない。原因は政治家の人格にあるのか、我々の側にあるのか、おそらく両方にあるのでしょうね。そもそも政治の原点は普遍的な価値の実現運動であるべきと固く信じているのですが、現状はかなり寒い。

 もう一箇所、いいところをどうぞ。
「私には夢があります。いつの日にか、私の4人の子供たちが、肌の色でなく、人格の中身によって評価されるような国に生きるという夢なのです。今日、私はその夢を見ています。」(I have a dream that my four children will one day live in a nation where they will not be judged the color of ther skin but by the content of their character. I have a dream today!)

 翔年は「肌の色でなく」の後につづけて「人格の中身によって評価されるような」と、虐げられている黒人たちにむかって、白人を恨むことなく、彼ら自身の中身の向上をごく自然に促しているところが好きですね。このように、恨みや憎しみを運動の原動力にしない、キング牧師の清い理想主義が随所にみられて気持ちがいいです。真のリーダーと信じます。

 演説の最後の部分(英文)はmoondialさんのBlogにあるので、是非見ていただきたいと思います。

今日は、当時よく歌われた公民権運動の懐かしい歌をみんなで歌って終りにしましょう。


We shall overcome,
We shall overcome,
we shall overcome,
Someday,
Oh deep in my heart,
I do believe, that
We shall overcome
Someday.

moondialさん、ありがとう。みなさんありがとう。

キング牧師のことは、読者おなじみの「人セム」で調べられますし、Wiqipediaのここならもっと豊富な情報があり、さらに演説の全文が読めます。


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この記事へのコメント
マーティン・ルーサー・キング牧師の演説は私が高校2年のときの英語の教科書に載っておりました。(確かReaderだったと思う)英語は苦手で嫌いな科目でいつも居眠りをしていたのですが、この単元の授業はいやに先生に熱が入っており、時代背景なども説明され、先生の気持ちの入った「I have a dream・・」の声を未だに覚えております。当時は若く、未熟だったため特別何も感じなかったのですが、後々TVなどで演説を見たときにその授業を思い出します。若いときに身に付ついたことは未だに覚えているもので、もっとしっかり勉強をしていればと反省しきり・・怖かった英語の先生にも少し感謝をしております。
Posted by 名無し草 at March 13, 2006 11:31
名無し草 さま

いいお話を聞かせてもらいました。
何年たっても、「I have a dream・・・」の声を生徒の耳に残すなんて、素晴らしい先生ですね。
小生は中学2年の時、ピーター・ラビットのお話を丸暗記させられたのですが、今思いかえすと、こういう英語の教え方は大変良かったのではないかと思っています。(喜んだ生徒は一人もおりませんでしたけど)

Posted by ユリウス at March 13, 2006 20:56
翔年さま

もう20数年も前のこと、We shall overcome. を書いたエッセイの思い出話が懐かしく思い出された。当時、表面をなぞっていたのが、本日、深層部に触れて、感慨深いものがあります。(長文故、エッセイを分割して投稿します)

           「太陽と二人ぽっち」

 ある夜のこと、ちょっとした相談ごとで福崎の碁会所に助友勝氏を尋ねた。
 打ったり、飲んだり、また打ったりして、しまいには飲んだり、寝たりすることになった。
 寝たりしている内に、夜中にふと、「高野さん{太陽と二人ぽっち}っていいだろう」と言われるのです。
 「うーん、太陽と二人ぽっちネ」
 「うん、この近くに七種山というのがあって、桜の頃、そこで僕は太陽と二人ぽっちが大好きなんだよ」
Posted by 高野圭介 at March 13, 2006 21:09
このすばらしい詩人は自家発電所を造ったりしてロマンに生き、大いに囲碁界の世話をされ、こよなく酒を愛されていたが突然急逝された。
 私の心の中にポカッと穴が空いたものだった。

 緑の回廊囲碁大会のとき、私の開会挨拶の思い出がありありと目前に浮かぶ。
 「本日の大会に{大会があるから来た}という人と{自分が来たから大会がある}と思う人とがあると思いますが{自分が来たから}と言う人は手を挙げて下さい」と尋ねたら、百二十人の中でサッと三つ手が挙がった。その一人が助友勝さんであった。
Posted by 高野圭介 at March 13, 2006 21:09
英語で Overcome は Come over と違って、あるイベントに自分が行かないと始まらないから、積極的に参加するためにやってくること、という。
 一九六五年ジョンソン大統領の時、平和ノーベル賞を受賞したキング牧師が新公民のレジスタンスのために「 We shall overcome 」(我らうち勝たん)と歌い、呼びかけて黒人の投票権を獲得したのだ。

  We shall overcome. We shall overcome
  We shall overcome some day
   Oh、 Deep in my heart, I do believe
   We shall overcome some day
  We are not afraid to them. <ref.>
  We are not afraid some day
   Oh、 Deep in my heart, I do believe
   We shall overcome some day
Posted by 高野圭介 at March 13, 2006 21:14
ほとんど“音声ファイルへの単なるリンク”にしかなっておらず実にお寒い拙稿をご紹介いただき、大変恐縮しております。たしかあれを書いてからあまり日を置かず、キング牧師未亡人が亡くなった旨の外電報道を目にして、不思議な暗合めいた感じを抱きました。(なお、私事にて再び恐縮ですが、1月下旬の転居その他により従来とは生活が大幅に変わり、慣れるのに大わらわで、ご紹介いただいた拙稿以降すっかり更新が滞っております)

あの拙稿で書きたかったのは(と、こちらへお邪魔して申すのも失礼なのですが)、キング演説がもつ一種の宗教的な昂揚感、そしてそれが何度聴き返しても聴いているこちら側の心情を捲き込み、聴き手に伝播していく力強さについて、でした。しかし毎度のことで、これらの点について十分に言葉にできていません。

(文字数オーバーにて、分割させていただきます)
Posted by moondial at March 13, 2006 21:29
(承前)飜って、自分の母語たる日本語による演説で胸を打たれた経験を(少なくとも私自身は)もたないのは、日本語という言語の特性によるのか、あるいは演説者に人材を得ないせいなのでしょうか。

稿を改められて後日また、常々ことばをめぐって大変興味深い考察を重ねておられるユリウスさんのご見解を伺えればと思っております。
Posted by moondial at March 13, 2006 21:29
moondial さま

わざわざ、お出ましくださり、コメントをいただき、こちらこそ恐縮です。

moondialさんがおっしゃっていることは、残念ながら英語耳を持たない小生には、多分、完全に理解できていないものと思われます。スミマセン。
しかし、名無し草様や高野圭介様の記憶を呼び覚ますなど、キング牧師の演説や公民権運動の影響力は凄いなとあらためて感じました。

耳で聞いたのではありませんが、日本語の演説原稿で感銘を受けたのならあります。2004/2/8のエントリー「孤高の政治家・斎藤隆夫」のところに少し書いております。読んでいただければうれしいです。小生は斎藤隆夫のような政治家が現れてくれることを、念願しております。

Posted by ユリウス at March 13, 2006 23:10
2004年2月の御記事は記憶に残っておりました。今回改めて拝読して、斎藤隆夫の著書『回顧七十年』については失念していたことに気づき、ぜひ一度読んでみようと思っています。

ご教示ありがとうございました。
Posted by moondial at March 14, 2006 20:53
moondialさま

斎藤隆夫の演説を読んでいただけるとのこと、いつかご感想などお聞かせいただけるとうれしいです。楽しみにしております。

小生はユリウスカエサルの演説、ヒトラーの演説、ケネディの演説、毛沢東の演説、サッチャーの演説、吉田茂の演説を普遍性、ロゴスとパトス、使われているレトリックなどの項目で比較検討したら、さぞ、面白いだろうと思っていますが、どんなもんでしょうか?
だれか、大学の卒論でやってくれないかなぁ。
Posted by ユリウス at March 15, 2006 00:39
おひさしぶりですが覚えておいででしょうか。
この春、無事高校を卒業した孫子です。
I have a dream...で始まるキング牧師の演説、及びその前後の活動を、
高校一年の頃の英語気龍飢塀颪琶拔したことを思い出しました。
転勤のために、一年次にしかいなかった先生ですが、
「感情をこめて、訴えかけるように」などと、読み方まで感染していただいた、特徴ある先生でした。
まだ外国語の文章の行間まで読めるほどの能力には達していませんが、
おそらく名文なのだろうと思います。
Posted by 孫子 at March 18, 2006 16:50
孫子 さま

覚えておりますとも。
若い方はみなさん、キング牧師の演説を教科書で習っておられるのですね。
みなさん、それを記憶に留めていらっしゃる。素晴らしいことですね。
国語でも、内容が高邁で、日本語の格調ある、演説を習いましたか?

高校ご卒業、おめでとうございます。
次なるステージはあなたの人生にとって、一番大きなターニングポイントになるかも知れませんね。
また、たまにはこちらにおいでください。
コメント、ありがとうございました。
Posted by ユリウス at March 25, 2006 01:31
孫子様、キング牧師の演説はI have a dreamでは始まりません。
Posted by babo at October 20, 2006 22:58