January 23, 2006

『おはなし ホリエモン』

 この間、ごくごくつまらん昔話を書いたら、けっこう、みなさん(男性ばかりでしたが)に喜んでいただいた。味をしめた翔年は、今度の話は全然面白くないと思っていますが、二匹目のどじょうを狙っています。

 小さな古い地方都市に最近起こった事件です。古い街の例にもれず、今までは、古老やお歴々が市長をはじめ街の主要なポストを占めて、昔ながらのしきたりで街をおさめておりました。

 ところが最近、この街にも資本主義の最先端を行くアメリカ流のビジネスが入ってきました。新しい物が好きな人たちはすぐに飛びつきましたが、今までのやり方に慣れきっている「フルイモン」達はなかなかそのやり方に馴染むことができません。ですから、新しい道具で上手にお金儲けをやっている人たちを、羨ましく思いながら、蔭ではそういう人たちのことを「アタラシモン」と揶揄しておりました。

 その「アタラシモン」の最も行動的な若者に「ホリエモン」という男がいました。もともと「ムイチモン」だったこの若者は頭がよくて「キレモン」、「アカモン」を中退して会社を起こし、目先がすごくきくので、今では街の儲け頭でした。そして、「オダテモン」や「オツイショウモン」や「バカモン」達にとりまかれてヤンヤの喝采を浴びておりました。どれぐらい人気化していたかというと、街の広報誌や放送局にも取り上げられるようになり、そのうち、「アタラシモン」好きの市長や市長の廻りの「オツイショウモン」に推薦されて、街の議会選挙にもでたりしたのです。でも、なにせ古い街のこと、当選する所まで票を伸ばすことはできませんでした。

 さて、この街を走る道路には、道路交通法にもとずく「速度制限」が儲けられておりました。日本の法律では一般道路は時速60Km/hなのですが、街の警察がスピードを出さなければ交通事故は減るとして、街の幹線道路は50Km/h、生活道路は25〜30Km/hの時速制限をしておりました。
 しかし、今まで、この制限速度をキチンと守っていた街人は誰もいませんし、警察に捕まった者も一人もいません。みんな好き勝手に自由な速度で車を運転しておりました。

 はで好き「ホリエモン」の車はアメリカ製のスポーツカーです。街の住民が60Kmで走るところは、優に70Kmは越えていますし、生活道路でもハンドル捌きさえうまくやれば50Kmぐらいは楽に出せます。けれど、街の人たちの中に、自分たちとは性能の違う車で、颯爽と疾駆する「ホリエモン」を苦々しげに思っている古老やそういう人たちの陰口を直に信じてしまう「バカモン」たちもいましたし、また、本当に「ホりリエモン」に危うく轢かれそうになった人もいました。その人たちが密かに警察署長に何とかならないかと相談したのです。
 でも「ホリエモン」は「オオモン」です。そんな人たちの妬み心や弱い人たちの気持を忖度することはまずありませんので、そういう裏事情はまったく知りませんでした。

 ある日の朝、「ホリエモン」は警察に生活道路の30Km/h制限を20Km/hオーバーで、街の「ヨウメイモン」付近で現行犯逮捕されました。20Km/hオーバーは悪質だと言うのです。今まで、誰一人速度制限オーバーで警察は捕まえなかったのですから、「ホリエモン」は捕まったのが不思議と思っているのではないでしょうか?

 「ホリエモン」ほどのスピードは出していなかったにせよ、みんな道路交通法のスピード制限違反をおかしていたのに、そんなことはすっかり忘れて、今は街のほとんどの人が「ホリエモン」は怪しからんと言い始めています。
 街の人達のほとんどは、「ホリエモン」が極刑にされるのを期待して待っています。


 翔年は法律の「センモン」でありません。ですからこのお話には「ギモン」がたくさんあります。
最低、次の二つの「シツモン」は誰かに教えていただいて、自分なりに納得したいと思っています。

1 「全ての人が法のもとでは平等でなければいけなと思うのですが、法律ではどうなってますか?」

2 「法律の運用をきわめてルーズにしておき、街のお歴々がすかん男を何とかできないかと言えば、その言葉でその男を捕まえようと動く警察は、本当に街のための警察なのだろうか? お歴々の私兵になっていませんか? そもそも、これでも法治国家と呼べるのですか?」


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この記事へのコメント
カール さま

>人の心はお金で手に入る
そんなことハッキリ言われたらだれでもビックリします。
カールさまが子供さんへの悪影響をご心配されたことも、ホッとされた気持もよくわかります。

だけども、この言葉はホリエモンの思想、そんな大げさなもんで無いとしても、底の浅い「ホリエモンの考え」なんですね。
誰であろうと、法に触れることをした市民は罰せられるのは当然ですが、心に思っていることがケシカランからと言って罰することはできませんし、しようとしてはなりません。そこの所をごっちゃにしたマスコミ主導の議論はしたくないと小生は思っています。

あえて嫌なことを付け加えますと、最近の若い女性は「結婚はするなら金持ちと」と堂々とTVでいったり、本に書いたりしていますが、こういう底の浅い考え方が常識になってることを憂えております。

また、コメントをいただければうれしいです。
Posted by ユリウス at January 25, 2006 12:57
古い街ですが、子育て中の母親も住んでいます。
その母親は書店で「ホリエモン」の著書を立ち読みし、

人の心はお金で手に入る。
ボランティアでできる人のつながりはうわべだけのもの。

などと書かれているのを見てビックリしました。
こんな考えの若者が子供たちの憧れの人になったら
どうしようかと心配しました。
このお話の結末は理不尽かもしれないけれど、
母親はホッとしました。
Posted by カール at January 25, 2006 08:58