November 06, 2005

外交カード −靖国参拝に関して−

 何にせよ、交渉というものは相手のあるものでありますから、大変に骨の折れる仕事であります。その中でもとりわけ難しいのが、国家と国家が威信をかけて対する外交交渉でしょう。交渉はお互いの妥協によって合意が成り立てば、まずは成功といえますが、そこにいたる過程で相手の主張に対抗するために色々な交渉カードを切っていきます。

 そういうカードの一つに中国や韓国がいつも使う「正しい歴史認識」という言葉とセットになっている「靖国カード」があります。

 この「靖国カード」には我国は悩まされ続けてきましたが、まず何故このカードが強いのでしょうか。翔年はこう考えています。

1 中国政府は靖国神社に参拝することは、正しい歴史認識ができていない証拠である。日本が先の大戦の反省をしていないということを目に見える形で示すのは、大きな迷惑を被った中国や韓国としては黙過できない、といいます。

(翔年の考え)
 このカードは威力がある。そもそも、論理の大本が日本人が過去に犯した大戦の責任と反省を求めているから、日本人はたじろぐ。何故、たじろぐのか? それは自らがキチンと反省していないからです。これはハッキリしています。
 靖国に合祀されているA級戦犯は戦勝国が裁いた戦争責任者に過ぎません。無条件降伏をしたわが国はそれを受け入れざるをえませんでしたが、戦後、日本人自らが先の大戦を総括し、責任者は誰であると裁き、その人に責任をとらせる、或は責任のあった人が自ら責任をとるというようなキチンとした反省とケジメをつけていないからです。
 では日本国民は何をしたか。過去を「水に流した」だけです。悪かったけど、もう忘れようと。指導者も悪かったけど、抵抗しなかった国民もだらしなかったと・・・。

 これでは何年たっても被害を受けた他国は納得しません。「靖国カード」を外交交渉に使う中国と韓国だけがそう思っているのではありません。イギリスにもオランダにもフィリピンにも、日本人が反省していないと思っている人は世界中にたくさんいることを忘れてはならないと思います。

2 中韓に対して我国政府は、相手カードが強いものだから大変苦慮しつつ、「参拝を止める」、「お詫び」、「経済援助」というカードを嫌々きっては、なんとか済ましてきました。
 今回、初めて小泉首相は「理解」を求めはしましたが、この「靖国カード」に屈しない行動をとったのです。

(翔年の考え)
 相手国が個人の内面(心と精神)の問題を取りあげて、それが見える形で表れたのが靖国参拝であると外交問題にし、何らかの貢物を期待してくるとき、我国には二つのとりうる道がある。
 一つはまぁまぁと言ってなだめつつその期待に応えてやること。もう一つは毅然とした態度で、心の問題なのだから信念の説明だけして、相手の言いなりにならないことである。更に言えば、共産党の依って立つ思想は唯物史観なのだから、本来宗教は認めないハズ、心の問題に言及して内政干渉までするとは見当違いもはなはだしいと心の中で思っていればいいのです。

 小泉総理は後者を選択してある程度成功したと見ていいのではないでしょうか。そして、このところあの強力だった「靖国カード」が変質する兆しが見えてきました

a【北京=飯野克彦】のニュースです。中国の唐家セン国務委員(前外相)は3日、太田房江大阪府知事らとの会談で、中曽根内閣の後藤田正晴官房長官が「中国人民の感情を考慮して首相と官房長官、外相は靖国参拝しない」との約束を中国にしていたと説明した。
↑ なんと弱々しい抗議であることか。これは「靖国カード」が効かなくなってきたことを示している。なかんずく、中国政府が国内で靖国問題を問題視すれば、日本のマスコミがそれを大きく伝えて騒ぎを大きくするし、中国国民は弱腰の政府に代わって大騒ぎを演じるのです。それが政府に対する不満にすりかわって現政権に向ってくるのです。
中国政府はこの構図を望んでいません。オリンピックやら何やらかやら、国際的な行事を控えているし、経済の拡大が続かなければハイテクを外国に依存している中国経済の脆弱性は分かっているからです。

b 中国共産党機関紙「人民日報」は3日、党内序列4位の賈慶林・人民政治協商会議全国委員会(全国政協)主席が北京で前日、日中友好協会の平山郁夫会長らの代表団、カンボジアのシハモニ国王とそれぞれ会談したと報じた記事の中で、日中友協代表団との会談を先に伝えた。外国の国家元首との会談より民間交流団体との会談を先に伝えるのは異例で、対日関係重視の姿勢がにじみ出た形。「現在の情勢では、両国の民間各界が友好交流を強化しなくてはならない」と指摘し、日本との民間レベルの交流を重視する姿勢を鮮明にした。(北京=飯野克彦)
↑ ここにも靖国問題を早く納めて経済を活性化させたい、という中国政府の意図を感じますね。

c 「韓国が第三次小泉改造内閣との間合いを計りかねている。小泉純一郎首相の靖国神社参拝を是とする麻生太郎氏や安倍晋三氏が要職を占め、「靖国議員は冷遇する」と突き放してばかりもいられないためだ。中国の動向などもにらみながら、硬軟両様での対応となりそうだ。」という報道もされている。
↑ マスコミなどは、中韓一つにまとめて靖国問題を扱うが、我国政府はこの二国はキチンと分けて対応すべきだ。共産党政権と資本主義を是とする政権の国とを同じような対応するわけにはいかない。

 上に見てきたように、政治的には「靖国参拝カード」がその強力なパワーを失いつつあるように見えます。ですが、翔年は日本人の負っている戦争責任論は未解決のまま次の世代に引き継がれていくのが辛いです。犯した罪は償わねば成らないのです。賠償責任を果たせば済んだとする訳にはいかない。この解決なくして、世界中から尊敬される国にはなりにくいと思っています。



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 公明党の神崎代表は5日の党全国代表者会議で、小泉首相の靖国神社参拝に関連し、「政権の中枢にある首相、官房長官、外相は自粛すべきだ」と述べ、安倍官房長官や麻生外相も含め、在職中は靖国神社を参拝しないよう厳しくクギを刺した。(中略) 神崎代表は代表者会議での...
公明代表「首相、官房長官、外相は参拝自粛を」(靖国問題とはなにか)【日本、アジアを見てみよう】at November 06, 2005 12:35
この記事へのコメント
磯田昇(桂木俊介) さま

日本にはいい意味の貴族趣味というのでしょうか、そういう高いレベルの品位とか態度とかをよしとする思想がないですね。いつの世でも、毅然とした態度はうつくしい人格の反映なのに・・・。
TVなどを見ていますと「悪貨が良貨を駆逐する」という諺を地でいっているように思います。

ご指摘の心配はあります。注目してみています。リーダーが人材の抜擢と活用を図るときには、人を見る眼が一番大事なのですから。

コメント、ありがとうございました。


Posted by ユリウス at November 07, 2005 09:46
 翔年 さま
そうですね、海外に居ますと日本に(霞ヶ関や大手企業なども含め)品位とか品格があるのだろうかと思わず疑いたくなることが多いですね・・             
小泉首相は数ある議員の中で少なくとも中国など相手側の顔色を見て判断していないのは良いことで自信を持ち続けることが、事実やそして史実になり時間がかかっても品位・品格などに繋がることになるのではないでしょうか・・  
利権集団から政策集団国家へ変えたことと併せこのベースを作ったのも得点に加算しても良いかと思いますが如何でしょうか・・

とは言え今回の防災担当大臣(名前は忘れました?)とか人気取りの為か「大蔵出身の片山さつき」とか言う実績0の新米議員を政務官に任ずるのは汚点かな??    磯田昇 (桂木俊介)
Posted by 磯田昇(桂木俊介) at November 07, 2005 00:47