October 21, 2005

ブルーレイ方式の勝利か? -次世代DVD−

 昨年の11月30日に「次世代DVD戦争」について、「HD DVD」陣営と「ブルーレイ・ディスク」陣営ががっぷり四っつと書きました。ところが、今日の日経の夕刊に「ブルーレイ方式の勝利」というこんな記事が出ました。

『米有力民間調査会社のフォレスター・リサーチは19日、次世代DVD(デジタル多用途ディスク)規格争いは、ソニーなどが提唱する「ブルーレイ・ディスク(BD)」方式が、東芝などが推す「HD DVD」方式に「勝利する」との調査結果を公表
した。
 フォ社はBD方式が米映画界やIT(情報技術)、家電業界などからより多くの支持を得ている点を強調。「BDが勝つのは明らか」と述べ、近い将来、規格がBD方式に一本化するとの見通しを示した。
 フォ社は同時に、東芝陣営があきらめずにHD方式でのDVDプレーヤーの販売に踏み切れば、決着がつくのは2年後になると予想。その場合、勝者を決めるのは店頭で商品を選択する消費者になるとしている。(ロサンゼルス=猪瀬聖)』

 確かにここ2,3ヶ月の情報はソニーなどが提唱する「ブルーレイ・ディスク」方式が優勢になことを伝えている。それらを時系列で並べて検証してみましょう。


(1)9/14
アプリックスがブルーレイディスク陣営に参加
 携帯電話やデジタル家電向けソフト開発のアプリックスは14日、ソニーなどが推進する次世代DVD規格の「ブルーレイ・ディスク・アソシエイション」に加盟すると発表した。
 ↑ブルーレイディスク陣営は既にインターネットとの連携など双方向のアプリケーションの実装のため「Java」の採用を決めているが、どうやらこれがキーだったようです。

(2)10/3
松下、ブルーレイの製造コストを現行のDVD並みに
 松下電器産業は次世代記録媒体のブルーレイ・ディスクの製造費を大幅に引き下げる新技術を確立した。コスト高の要因であるディスク表面の保護膜形成で樹脂加工の新手法を開発。米国拠点の試作ラインでノウハウを蓄積し、1年後には現行のDVDディスクと同程度の費用で量産が可能になる見通し。
 ↑ブルーレイは対立する東芝陣営のHD―DVDに比べ生産コストが高いとされていたが、これでコスト差はほぼなくなる。

(3)10/4
「米パラマウント、次世代DVDの両方式で映画ソフト売り出し」
 米映画会社大手のパラマウント・ピクチャーズは2日、次世代DVD規格でソニーや松下電器産業が提唱する「ブルーレイ・ディスク」方式を支持すると発表した。
↑ソニー陣営が来春出す次世代ゲーム機がブルーレイ方式に対応する点を重視し、支持表明に踏み切ったようだ。
 これで規格争いの行方を左右するといわれる米映画大手6社中、ユニバーサル・ピクチャーズを除く5社がブルーレイ方式によるソフトを発売することになった。

(4)10/20
エントリーの冒頭のBDの勝ちを予想する記事です。

(5)10/20
「米ヒューレット・パッカードが互換性確保の新提案」
米ヒューレット・パッカードは19日、次世代DVDの規格問題に関し、自社が支持する「ブルーレイ・ディスク」方式に、対立する「HD DVD」方式の一部機能を盛り込む独自案を打ち出した。HPは「互換性確保が消費者の利益になる」と説明している。」
↑具体的には、高画質映像を合法的に複製する機能と、DVDに双方向性を持たせる「iHD」と呼ぶ機能を、ブルーレイ方式に盛り込むよう提案している。この両機能は東芝などが提唱するHD DVD方式に組み込まれているものです。
 何のことか分かり難いでしょうが、ブルーレイ方式は高画質映像を複製する際、コピーワンス機能といって一回しか複製できないようになっている。著作権上、多少問題があっても、この機能を相手陣営並に緩めようとするものだと思われます。
ここまで言うのだから、事実上の勝利宣言ととっていいのかもしれません。


 というような訳で、ブルーレイ・ディスク方式が優位に立ったようです。
即ち
1)技術的にはJavaの採用によって、双方向アプリケーションや家電や携帯電話への応用など発展性が出てきたこと。
(2)従来、コスト高がアキレス腱だったが、技術でこれを克服したこと。
(3)ハリウッドの映画会社の6社中、5社まで陣営に引き込んだこと。
が、ブルーレイ陣営優位と判断する理由
です。

よって昨年11月の勢力図はこのように変更します。

両陣営の勢力図

HD DVD 陣営(現行の4倍の記憶容量)
機器メーカー  東芝、NEC、三洋電機
IT       マイクロソフト、IBM
映画      (タイム・ワーナー↓)、ユニバーサル・ピクチャーズ、(パラマウント↓)
光ディスク   メモリーテック

ブルーレイ・ディスク陣営(現行の5〜6倍の記憶容量、Javaの採用)
機器メーカー  ソニー、松下電器、シャープ、サムスン電子、フィリップス
IT       ヒューレット・パッカード、デル
映画      20世紀フォックス、ソニー・ピクチャーズエンタテインメント、タイム・ワーナー、パラマウント
光ディスク   TDK


 とはいっても、映画会社のような過去のコンテンツをたくさん持っている会社は、今後の情勢により、陣営の乗り換えも機器メーカーよりは簡単にできるので、エサに釣られて裏切会社がでないとも限りませんね。
 そこへいくと機器メーカーは研究開発費の負担や技術の継承もあって簡単に陣営を離脱ことは出来ません。特にソニーはこの開発に膨大な資源を投入してきていますので、この戦争で負けたら大変です。AV業界をリードしてきた会社が消えることさえありうるのではないでしょうか。

 2,3年もしないで趨勢が明らかになるような気がしてきました。後は市場がどう判定するか?



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この記事へのコメント
孫子 さま

30年前、ビデオ戦争ではソニーは負けました。今度はどちらの陣営が勝つのか?
2方式が市場に出てきて、勝敗を市場原理にゆだねた場合、どちらかのユーザーは痛い目に合います。それも全世界でそういう不幸な人々が出るのを避けられない。
技術革新は加速の度を増していくでしょうね。
Posted by ユリウス at October 21, 2005 22:51
以前のビデオの時は失敗したと、祖父が言っていました。だから今度は最後まで見届けてから買おうと思っているようです。しかしPCがさらに発達したらHDD等よりもさらに上のものができるような…技術革新の周期が短くなっていくように思います。
Posted by 孫子 at October 21, 2005 19:01