June 12, 2005

ママコノシリヌグイ

 最近、親しく交友していただいているKさんは、氏の碁吉会のHPに碁の話題や棋譜だけでなく、たのしいエッセイをたくさんアップしておられる。碁吉会ホームページ


 最近アップされたエッセイ、「前を抱えて右往左往」に触発されて、翔年は後ろの話題を提供したい。 前の話題にしても、後の話題にしても、なんせ尾篭な話題には違いないので、そんな話が大好きな方と翔年のBlogoは何が何でも、少しぐらいの尾篭は我慢してでも読みたいという方のみ「続きを読む」をクリックしてください。

 そうでない方は「尾篭(ビロウ)」の簡単な語源紹介だけでお終いにしましょう。
びろう=尾篭、下がかること、不潔なこと、無作法なこと。本来この言葉は海神の末裔という応神天皇が龍尾を持ち、その尾を障子をたてて隠したときに、「尾龍なり」と仰せられたことに始るそうだ。
近松物にこんな事例があります。
『若い女が男の帯といてさうして後で紙で拭けとはびろう至極・・・。』

 では・・・。

 
金田一晴彦著「ことばの博物誌」には「蕗の葉」の語源は「拭きの葉」からと知ったとこんな実例が書いてあったと記憶する。
 昔、先生が田舎のある集落の豪家にご厄介になられた時、便所を借りられたそうです。前にうずたかく新しいフキの葉がおいてあり、下をのぞくと使用済みのフキの葉が捨ててあった。話のタネにと一枚使われたところまでは我々と同じ行動ですが、さすが言語学者先生、これをもとに「拭きの葉語源説」を打ち立てられたのです。

 翔年の子供の頃は勿論ティッシュというような高級なものはなかったから、自宅の便所には新聞紙が小さく切って積んであった。「よく手の平で揉んで柔かくして使え」と母親から教わった。親の言うことはあんまり聞かなかったけれど、新聞紙はゴワゴワしていて痛くて使用に耐えない、腕白坊主もこの意見に素直に従いましたね。

 さて、子供の頃の思い出のとして、野山に出かけて緊急事態に至った時、草の葉っぱを使った経験をお持ちの読者もおいでになると思う。これから先も、そういうことがないとは限らない。翔年のウンちくを傾けた成果をご披露します。
 一つはアジサイの葉です。ある地方ではアジサイの葉を「クソシバ」と呼んでいるそうですから、多分使えるでしょう。
 もう一つ、高級拭きの葉はキク科のオヤマボクチ(雄山火口)という葉っぱです。かんの邦夫著「花の名前にご用心!」にこう記されています。「この葉の裏には、柔かい白い綿毛が拭きここち満点の役目をする」。

 ところで読者の皆さんは「ママコノシリヌグイ(継子の尻拭い)」という草花をご存じだろうか。蔓にも三角の葉の裏にも鋭い棘があるタデ科の蔓草です。学名:Polygonum senticosum。何時もお世話になっている青木繁伸氏の「植物園」にはありました。植物園へようこそ!


継子の尻拭い  photo by 青木繁伸氏
ママコノシリヌグイ
 
 翔年は暗澹たる気持ちに襲われる。継母に対してではありません。継子いじめにこの葉っぱを用いることを想像し、それをこの植物名にした誰かに対してです。恐ろしい発想と言わざるを得ません。



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