February 12, 2004

一票の格差是正は喫緊の課題

エジャさんと「政治論」をやっていて、現政権を支えているからくりの一つ、「一票の格差」にふれましたので、改めてこの問題について翔年の積年の思いを語りたい。

三見優一(サンミユウイチ)さんという方がいらっしゃる。
昭和37年に日本で初めて議員定数配分の違憲訴訟をたった一人で起され、以後40年以上にわたって「一票の価値」の重みを最高裁判所に訴えつづけてこられた方だ。著書に「最高裁を信じて四十年」、2000/10 飛翔社刊がある。
読めば誰でも感銘を受けるはずだ。一人で時間かけ、お金を投じてこの問題に取組んでこられた三見氏には本当に頭が下がる。

一票の重み

「点滴、巌をも穿つ」というが、ようやく硬い巌に穴が開こうとしている。最近は一票の格差是正問題に取組む団体や集いがあちこちに生まれ活動を始めているし、最高裁判所の姿勢も大分いい方向に変化していることが確認できる。もう一息の所まできているように思えるが、最高裁判所の壁はとてつもなく厚くて固いから油断がならない。翔年はこの課題に取組んでいる三見さんをはじめ、全ての人を応援をしたい気持で一杯である。

ここで参議院議員の一人当たりの有権者数より、「現状の一票の格差」がどのくらいあるのか確認しておこう

東京都選挙区:1,216,607人
島根県選挙区 : 242,448人
一票の格差= 5.02倍 !
程度の差こそあれ、同じような違憲状態が多くの選挙区である。

これだけの格差が生じていても、憲法14条一項に『すべての国民は、法の下に平等であって、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、又は社会的関係において、差別されない』と書いてあっても、最高裁判所の判断は合憲なのである。
法衣を着て、神妙な顔つきで、おごそかに
 『1=5 である。』
と告げられたら、純真な小学生は「おっちゃん、アホちゃうか」と即座に返すことだろう。

この違憲状態を知りながら、何ら改善の手を打つことなく、次の参議院議員選挙は行われようとしている。

衆議院はどうかというと、平成8年に選挙制度が改正されたにもかかわらず、1=2 を温存したのです。この差は拡大する傾向にある。翔年に言わせれば最高裁判所が正しい判断をしないから、立法府の議員たちがこのような成立の当初から違憲である法律を成立させる事態に至るのです。5年に一回の国勢調査は何のためにあるのかと言いたい。

三見さんの著書で教わったのだがアメリカ合衆国の憲法ではこのように明記されている。
『下院議員の数及び直接税の徴収額は、この連邦に加わる各州に、それぞれ人口に応じて割当られる。』

そして明記している事項を厳密に実行しているから、見上げたものです。
米国の人口調査局の資料によると理論値である理想有権者と実際の有権者との差が全選挙区のうち二区を除く423区で1%以下に収めているのです。残りの二区も差は上下1.2%以内というから驚です。実際に人口移動の激しい時期には例えばフロリダは15議席が一挙に19議席に増えたり、ニューヨーク州では39議席が34議席になったことがあるそうですから、憲法に書かれたことが忠実に行われていると見ていいでしょう。


この記事へのトラックバックURL

この記事へのトラックバック
本日の読売新聞朝刊に 『熱意欠く定数是正 参院「一票の格差」』の見出しの7段組のかなり大きな記事がのった。 記事は翔年が2月12日に書いたのと同じ趣旨で書かれている。だが、各党参院代表らによる「定数格差問題協議会」の初会合の実情は、自民党が「夏の参院選挙.
熱意欠く定数是正 参院「一票の格差」【もの言う翔年】at February 19, 2004 23:05
この記事へのコメント
>エジャさんと「政治論」をやっていて、

こんな言葉をかけていただいて、とても嬉しいです♪
Posted by エジャ at February 12, 2004 22:37
Yam さん、具体的な数字、ありがとうございました。
議席増はちょっとね。
過去に安易に議席を増やしてきた経緯があります。
ですからここは減らしたいですね。
減らすことは今の国会に期待できませんから困ったものです。
自らの身を切る厳しい英断こそ、リーダーに求められる資質なのに、
1=5を放置したままですから、なにをかいわんです。
Posted by ユリウス at February 12, 2004 21:55
Yam さん、こんばんは!
すみません。誰がどうやって決めているのか知りません。
調べましたが、今のところ具体的なことは分りません。
先に掲げた条文「下院議員の数及び直接税の徴収額は、この連邦に加わる各州に、それぞれ人口に応じて割当られる。」は三見氏の著書によると合衆国憲法第一条(連邦議会とその権限)第2節の三項にあるそうですから、連邦裁判所がしっかりチェックしているものと思われます。

考えたら市町村などの行政区画などを無視することは難しいでしょうし、配分の実行は困難が待ちうけているでしょうね。
できない事、困難なことを列挙するだけで、結局はウヤムヤにしてやめてしまようなことをせず、現実的に対応していくアメリカ流のプラグマチズムが健在なんでしょうね。きっと。
私は憲法に書いてあることを厳密に実行し、それをキチンとチェックする体制を作り上げているアメリカ人の態度を学びたいと思います。

もしどなたかご存じの方がいらっしゃったら教えてください。お願いします。
Posted by ユリウス at February 12, 2004 20:41
平成15年9月2日(定時登録日)現在における選挙人名簿登録者数の概要
http://www.soumu.go.jp/s-news/2003/pdf/031225_9.pdf
によると参議院選挙区の定数が146で、
議員一人あたりの選挙人が701235人になります。
これを基準に割り振ると(小数点以下は切り捨て)
東京 8 -> 14
大阪 6 -> 10
神奈川 6 -> 9
埼玉 6 -> 7
愛知 6 -> 7
1402470人未満で定数2を維持できないのは
青森、岩手、秋田、山形、富山、石川、山梨、滋賀、奈良、和歌山、山口、
香川、愛媛、長崎、大分、宮崎、沖縄
定数1を維持できないのは、
福井、鳥取、島根、徳島、高知、佐賀

一番少ない鳥取の492003人に定数1を割りふると、
62議席増の208議席が必要になりますね。
Posted by Yam at February 12, 2004 20:25
各州に割り振ったあとの選挙区の区割りは誰がどうやって決めているんですか?
Posted by Yam at February 12, 2004 19:01